キャンプするなら知っておきたい、クマ対策
自然の中でのんびりと過ごすキャンプ。なかには、自然豊かな場所でテントを張ることもあるでしょう。しかしそこは動物たちの生息地。私たち人間がお邪魔しているという認識を忘れてはいけません。
特に怖いのがクマの被害。過去にはキャンパーがクマに襲われたケースも実際に存在しています。今回は、日本ツキノワグマ研究所監修のもと私たちが気をつけるべきクマ対策についてまとめました。
記事監修
県や環境省の委託を受け、ツキノワグマの調査・研究を長年にわたり行う。『山でクマに会う方法(山と溪谷社)』『人狩り熊 十和利山熊襲撃事件(釣り人社)』などほか著書多数。
まずは自然に暮らす野生動物を知ろう
その前に、キャンプ場で出遭う可能性のある動物にはどのような動物がいるでしょうか?
✔︎熊(クマ)
日本には、北海道にいる「ヒグマ」と本州以南にいる「ツキノワグマ」の2種類がいます。
✔︎猿(サル)
日本に主に生息するのは「ニホンザル」で、北海道と沖縄以外の地域に広く分布しています。
✔︎猪(イノシシ)
日本には「ニホンイノシシ」と「リュウキュウイノシシ」がいます、そのうち「リュウキュウイノシシ」は沖縄にしか生息していません。多くの地域で見かけるのは「ニホンイノシシ」です。
✔︎鹿(シカ)
日本に生息するのは「ニホンジカ」と呼ばれています。
✔︎狐(キツネ)
日本では、本州・九州・四国の各本島と淡路島にホンドギツネが、北海道本島と北方領土にキタキツネが生息しています。
それでは今挙げた野生動物のうち、特に危険な熊(クマ)について、遭遇しないための対策を見ていきましょう。
実は臆病で用心深い熊(クマ)
熊の特徴といえば大きな体に鋭い爪、大きな体の割に足も速く、その速さは時速50km以上。でも、実は用心深く臆病な性格で、基本的には人を見つけると逃げてしまうほど。
そんな熊(クマ)が凶暴になるのは以下の場合が挙げられます。
キャンプで熊(クマ)に遭遇しないために!事前の対策
では、実際に事前に対策すべきことはどのようなことなのでしょうか? キャンプの安全対策はキャンプへ行く前から始まります。
まずはキャンプ場選びから
キャンプ場を選ぶときの基準は立地条件や景色、料金など選ぶ基準はさまざまですが、特に気を付けたいのが周辺環境と施設。
先にも記載のとおり、熊(クマ)は臆病な性格なので普段から人の気配のするところは近寄ってこない可能性が高いです。キャンプ場を選ぶ際はサイトの整備が行き届いているか? マップに区画だけでなく周辺情報も載っており、キャンプ場周辺も整備や手が回っているか? など確認しておくと良いでしょう。
静かに過ごしたいソロキャンパーや野営の場合は?
ファミリーキャンプとは違い手の入り過ぎていないキャンプ場で自然を感じたいソロキャンパーや、野営でテント泊を楽しみたい方もいます。その場合は、事前にその場所がある地域(県・市町村)のホームページなどで熊など野生動物の目撃情報を調べておくのが良いでしょう。
熊が出没する地域では、キャンパーだけでなく住民の方も熊との遭遇をしないために、そういった地域の中で目撃情報などを公開し警戒されています。
キャンプ場での注意点
事前情報で熊の目撃情報がある場合、またその近辺では情報がなくとも過去に出没していたりと、熊に遭遇する可能性がある場合は対策を知っておきましょう。
キャンプ場スタッフや近隣住民の方の意見を参考にする
情報サイトにない情報も、近隣の方は知っている場合があります。実際に熊の出没が多い地区のキャンプ場では情報に合わせてキャンプ場がクローズしたり、キャンプ場内でより安全な区画へ移動させるなどの対応を取られています。
もし、不安がある場合はチェックイン時にスタッフの方に確認したり、周辺の商店などで情報を得ておくと良いでしょう。また、危険性がある場合はキャンプを辞める勇気も必要です。
サイトでの注意事項
● 周囲の状況がわかるようなサイトを選ぶ
周囲の状況がわからないところに設営してしまうと、当然相手からも見えないので、ばったり遭遇! なんてことも。自分から周辺が見えるということは相手からも気付いてもらえる状況だということになり、臆病な熊は近付きにくくなります。
● ゴミ、特に食料を放置しない
これは自分のサイトだけでなくキャンプ場の施設、炊事場やゴミ箱にも共通することです。臆病な熊が人の近くに寄ってくる場合、空腹で食料を探していることが多くあります。サイトでは食べた物をそのまま放置すると危険です。
クマは缶コーラ、缶ビールの中身を嗅ぎ分けられます。クマの目撃情報がある場所ではクーラーボックスやチャック袋など気密性の高い状態にして、テントから離れた場所に置くと良いでしょう。
共用施設の炊事場も同様に生ごみが落ちていたり排水口に溜まったりしていると危険です。また、ゴミ捨て場のゴミ箱も蓋があったりと、簡単に熊がゴミへ近付けない状態になっていると安心です。
▼CAMP HACKで人気の「ゴミ」に関わる記事はこちら
● 人間の存在を知らせるのも手
熊も人間を怖がっています。周囲への迷惑にならないレベルにラジオなど音を鳴らしたり、周辺の木の枝から弱にしたヘッドライトを下げておくなど、人間の存在を知らせる事で熊を近付けないというのも対策として有効です。
熊対策グッズを携帯する
もし熊に遭遇してしまった場合を考えて、対策グッズを用意しておきましょう。
熊除け鈴
クマに対して音での警戒は有効です。もっとも経済的で携帯性が良いのが熊除け鈴です。
最終的に音響対策で重要になるのは音圧と言われているため、爆竹やロケット花火も手段の1つとして持っておくと良いでしょう。
獣よけ線香
獣よけ線香
対象となる獣に直接クマとは書かれていないのですが、獣たちが集まって結果的にクマが餌場を知ることになる事例が多く、獣を寄せないことが熊除けにもつながります。
クマ撃退スプレー
熊撃退スプレー B-609
中型軽量タイプで携行に最適、日本JSDPA認定品です。このスプレーは高価であり、使用方法が難しいとされています。クマと至近距離で実際に遭遇してしまった場合の最終手段と考えましょう。
実際にクマに遭遇してしまったら?
クマと遭遇したときの対処法は、クマとの距離によって異なります。ここでは環境省のマニュアルに従い、基本的な事項をピックアップしますが、より詳しく知りたい方は環境省のマニュアルも参考に。
遠くにクマがいる場合
落ち着いて静かにその場から立ち去りましょう。急に大声をあげたり、急な動きをしたりするとクマが驚いてどのような行動をするかわからないため、注意しましょう。
近くにクマがいることに気づいた場合
まずは落ち着きましょう。時にクマが気づいて向かってくることがあります。威嚇突進(ブラフチャージ)といって、すぐ立ち止まっては引き返す行動を見せますが、落ち着いてクマとの距離をとることで、やがてクマが立ち去る場合があります。
クマは逃走する対象を追いかける傾向があるので、背中を見せて逃げ出すと攻撃性を高める場合があります。クマを見ながらゆっくり後退し落ち着いて距離をとるようにしましょう。
至近距離で突発的に遭遇した場合
クマによる直接攻撃など過激な反応が起きる可能性が高いです。攻撃を回避する完全な対処方法はありません。クマは攻撃的行動として、上腕で引っ掻く、噛み付く、などの行動をとります。顔面・頭部を攻撃されることが多いため、両腕で顔面や頭部を覆い、ただちにうつ伏せになるなどして重大な障害や致命的ダメージを最小限にとどめることが重要です。
クマ撃退スプレーを携行している場合は、クマに向かって噴射することで攻撃を回避できる可能性が高くなります。
アウトドアでは自然と共存を。動植物を守る視点も忘れずに
熊との遭遇を避けるためのキャンプ場選びやキャンプ場での注意点などを挙げましたが、もともとその自然にいたのは人間ではなく熊やその他、動植物の方です。
目撃情報などがある場合は無理に強行せずキャンプを諦めることも大事。トラブルや怪我をしてしまっては元も子もありません。
また、対策として挙げた内容もゴミの処理や施設を清潔に使おうというもの。実は危険回避に限らずキャンプ場での利用マナーとして守りたいことです。自然と共存するうえでもマナーが大切だということがわかりますね。
お互いが快適で安全に過ごせるように、事前の情報収集や対策を忘れずに自然の中でのキャンプを楽しみましょう!
監修:日本ツキノワグマ研究所
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