極寒の冬キャンプ、寝袋はどう選んだら良い?
寝袋 は日中の疲れを睡眠で回復するために必要不可欠なギアのひとつです。快適な眠りを得るために高機能なモデルをしっかり選びたいところですが、冬用ともなるとお値段も高め……。
それに本当に必要なのかどうかも疑問に思う方もいるのでは? そこで詳しい方に、冬用寝袋の必要性や選び方についてじっくり聞いてみました。
教えてくれたのは“寝袋マニア”の加藤一治さん
気になった寝袋は買わずにはいられないという寝袋マニアであり知識豊富な加藤さんに、冬用寝袋の選び方とおすすめを直撃。まずは冬用寝袋にまつわる素朴な疑問からお伺いていきます!
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教えて加藤さん!冬用寝袋Q&A
冬用と3シーズン用の違いって?
ズバリ、保温力(保温材量)とフィット感です。お家で使うお布団も夏掛けと冬用では分厚さが違いますよね。それと同じように、寝袋も冬用は羽毛や綿の量が多い物を使います。
綿の量が多いほど保温力が高く、つまり冬用の寝袋になればなるほどボリュームも大きくなる。となると必然的に価格も上がってしまうというのはわかりますが、やはり高くても冬専用のシュラフ を買うべきなんでしょうか?
冬用の寝袋は、高くても買うべき?
いろいろなキャンパーさんのお話を聞いてきてよくあったのが、「冬の寒さを知り、冬キャンプをやめてしまう」という方。せっかくトライした冬キャンプもそれでは残念なので、やはり装備は万全にしておくべきと考えています。
ダウンの寝袋が高い場合はお布団でも良いと思いますが、他の装備も多く必要になるのが冬キャンプ。携行面を考えるとやはりコンパクトにおさまる寝袋が理想で、ここに予算を割くのは仕方ないところではあります。
冬キャンプの夜は、日中よりさらに冷え込みます。予算をケチったばかりに寒さに耐えられなくて眠れなかった……なんて残念な事にならないためにも、ここは出費を惜しまずしっかりした品質のものを選ぶ必要がありそうですね。
一年通してキャンプをされる方は3シーズン用の予算を抑え、その分を冬用の予算にまわしてもらったほうが効率が良いですね。
通年キャンパーであれば予算も装備も冬に比重を置くのが理想的ということですね。とは言えコストパフォーマンスを考えてしまうとどうしても手が出ないという方もいるのでは? 実際冬用シュラフの使用頻度って、一年を通してどれくらいなんでしょうか?
冬用寝袋って一年のうちどれくらい使うもの?
たとえば10月~5月に標高約800mの「ふもとっぱらキャンプ場」でキャンプをするなら、私は冬用を使います。寝袋は3シーズン・サマー・ウインターと分けることが多いですが、10〜5月の7ヶ月間冬用が使え、比較的涼しい残り6〜9月の5ヶ月間ほどは寝袋の重要性が薄れます。
登山はこれには沿いませんが、そう言った意味もあり冬用に予算をかけ、3シーズンやサマー用は価格を抑えた化繊やブランケットなどでも十分と考えています。
年末年始の年越しキャンプ場としても人気の「ふもとっぱら」は、周辺の富士宮市とはおおよそ4℃ほど気温差があるのだとか。標高にもよりますが、通年キャンプに行くという人なら春夏用シュラフはそれなりのもので賄い、意外と使用期間の長い冬用の寝袋に予算をかけるのが賢明かもれません。
とは言え、「使い方次第で3シーズン用の寝袋を“冬用”にアップデートできないものか?」という疑問も。そのあたりはどうなんでしょうか。
+αの防寒をすれば、冬でも3シーズン用の寝袋は使える?
3シーズン用を重ねて使うという手段も無くは無いですが、湯たんぽや電気毛布などの方が効果は高いですね。ただし低温火傷には注意!
ダウンのパンツ・シューズを着用して寝る方も少なくないと思いますが「無いよりは……」 程度というのが正直なところ。寝るまでに身体を冷やさないことが大事です。
そう、寝袋は暖まるまでは寒いということも忘れてはいけません。それも踏まえて「何とか3シーズン用で乗り切る!」という人は寝る前にテントを温めておいたり、湯たんぽ を使うなどの対策は必須のようです。
さあ、ここからは冬用シュラフを選ぶ際の具体的なポイントを教えていただきましょう!
冬用寝袋を選ぶ際に注目すべきポイント
冬用寝袋にオーバースペックなし!何より保温性第一で選ぼう
寝心地も大事ですが、寒くては体を休める事ができません。価格や収納サイズが許す中で、可能な限り暖かいモデルを選ぶことが第一です。
“可能な限りの温さ”は人によっても違うものですが、基準のひとつとなるものにEN 13537またはISO 23537という保温力の表示規格があります。
例えば想定最低気温-5℃のキャンプで快適温度表記-5℃の寝袋で寝られるかと言うと、寝られない方が多いと考えます。であれば極論-20℃まで使える寝袋を使い、ファスナーの開閉などで温度を調節できるからです。
ましてやextremeは6時間程度ガタガタ震えながらなんとか耐えられる程度とよく説明します。
冬キャンプでは寝袋のスペックが高すぎて暑くなってしまう分には対応できますが、その逆は困難。防寒対策が足りず寒さに凍えるなんて事にならないよう、寒くならない方の手段にとことん比重を置くことが最も重要と言えそうです。
あと男女では体感温度が違うので、女性用はワンランク暖かい物をおすすめします。
人によって体感温度も変わってくるので、自身に合わせて余剰(安心)のある温度帯を選ぶことも安心に繋がりますね。
中綿は暖かさと耐久面から、ダウンがベスト
●保温性が高く、冬の向きの素材
保温性に関わる要素のひとつが中綿の素材ですが、これは正直ダウン一択だと思います。化繊綿のシュラフでも中には例外的に冬に使えるものもありますが、多くは化繊綿で暖かく寝るにはおうちのお布団くらいの綿量が必要です。
そうなると大きく重くなり、結果使わなくなってしまうのではないでしょうか。
オートキャンプと言えど、外に持ち出す道具であれば重さや大きさは重要なポイント。おうちのお布団くらいの綿量が必要となれば、もはや自宅のお布団でも良いのでは? という話になりますが、持ち運ぶのは現実的ではないですよね。
あと、羽毛に比べて化繊綿は短命です。羽毛自体は手入れ次第では何十年と持つ素材ですが、化繊綿は使用に比例してヘタり保温能力も低下していきます。
中綿の素材は暖かさだけでなく耐久面にも関わってくるのだそう。このあたりも視野に入れて、長い目でどちらが得かを判断したいですね。
保温効率が良いのは、断然フィット感が高いマミー型
キャンプ中でも普段の睡眠と同じように眠れることが、快眠に近づくコツです。たとえば寒いときに胎児のように丸まったりしませんか? そのときにからだの周りに隙間ができると、体温を放出してしまいかねません。
羽毛は特にそれ自体が発熱するわけではないので、暖かく感じるのはご自身の体温の放出を抑えた効果といっても過言ではないのです。
フィット感は寝心地だけでなく、自身の熱の放出を抑えて寝袋内を暖かくキープしてくれるためにも重要なポイントだったんですね。
ただ寝袋の中で身体が遊んでしまうようなゆったりサイズだと暖かく寝られないので、苦にならない程度のフィット感が必要。
しっかりフィットするアイテムを選ぶには、自分の身体にあった形・使用温度という情報だけを信じず、実際寝袋に入って体感することも大事です。
封筒型は冬には不向き?
寝心地重視で封筒型を選ばれる方も多いですが、 マミー型に比べて保温力が低かったり重く大きくなってしまいます。
ゆとりがあって寝やすいのが封筒型なので必然的に身体と寝袋の間に隙間ができやすく、寒くなってしまう可能性はあります。
近頃は冬シーズンにも対応した封筒型のレイヤーシュラフ などもありますが、厳冬期でも確実に暖かく眠るには、やはりマミー型が良いようですね。
そして寝袋以外にも重要な装備があるのだとか。
冬用寝袋と良質なマットはセットと考えよう
スリーピングマットも冬用が必要です。いくら-20℃対応の寝袋でも夏と同じマットでは底冷えを起こし、寝られなくなることも。先ほどの保温力表示も冬用のマットと併用した上での“全体の温度”であることも忘れてはなりません。
マット にも保温性を数値で表す「R値」というものがあり、R値が大きいほど断熱性が高く地面からの冷気を遮断してくれます。
R値4以上か、冬以外に使っているマットを2枚以上重ねるのが良いと思います。よく皆さんが使われるパタパタマット(サーマレストのZライトなど)は、2枚重ね位は必要。なぜかというと羽毛や綿は寝ている身体を支えるほどの反発がないからです。
いくら背中に羽毛を1kg入れた所で体重で潰れて1cmにも満たず、結果地面やフロアに体温が流出してしまいます。
なるほど。寝袋にばかり目が行きがちですが、併せて使うマットもぬかりなく冬用を選んでおくことも忘れないようにしたいですね!
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意外な盲点!収納のしやすさもチェックポイント
寒さと格闘しながら撤収する冬キャンプは特に、寝袋においても収納袋にスムーズに入れられるか? が重要です。しまえずにキャンプ場から帰ってくるなんていうこともありえるので、入れずらい場合は大きめの収納袋に交換しておくのがおすすめです。
寝袋自体の選び方から関連アイテムに意外な盲点までわかりやすく教えていただいたところで、実際のおすすめ商品をチェックしていきましょう。
いずれも加藤さんご自身が実際使ったり目で見た上で厳選してくれたアイテムばかりなので、失敗しない冬用シュラフ選びの参考にしてみてくださいね!
加藤さんセレクト!冬用寝袋おすすめ10選
ナンガ シュラフ オーロラライト 750DX
ウエスタンマウンテニアリング アパッチMF
シートゥサミット アセント AcIII
カモシカスポーツオリジナルシュラフ 750 UDD
カモシカスポーツオリジナルシュラフ:750 UDD紹介ページ
ナンガ ドリーム
マウンテンイクイップメント ヘリウム800
ニーモ ソニック 0
シートゥサミット トレックTkII
イスカ アルファライト 700X
PAJAK CORE 550
ちなみに加藤さん愛用の冬用寝袋は、この2本!
カモシカオリジナルシュラフ 750SPDX(50g羽毛増量)
一番寒い時間帯でも寒さで目が覚めることがないよう、冬キャンプではオーバースペックと言われるボリュームのモデルを使います(寒くない時は広げて掛ける程度で寝ますが)。
この二本はどちらも羽毛量が700g以上あるモデルで、場所を問わずどちらかを使用しています。
ウエスタンマウンテニアリング アンテロープ
けっしてコンパクトではないですが登山と違い荷物の制限があまりないので、持っている中で一番暖かいこのモデルを迷わず選びます。
カモシカオリジナルは古いモデルを未だに使いますが、ナンガ製で修理やクリーニングができるので一生使える寝袋です!
冬用シュラフを長持ちさせるには?
保温性が命の冬用シュラフ。最後に、スペックを損なわずに長く使うためのお手入れ方法についても教えてもらいました。
保温効果を落とさない!冬用寝袋のメンテナンスのコツは?
ダウン素材を洗濯する際には、中性洗剤を使用するかダウン専用の洗剤を使用しましょう。
保管方法は?
冬用に限らず、使い終わったら日陰干しをして湿気を良く取る事が大切です。湿気は臭いの原因にもなりますので。
ダウンの場合、購入時と比べて膨らみが落ちたと感じる場合はクリーニングが必要。保管は大きめのメッシュバッグなどに入れて風通しの良い場所に置いておくと良いでしょう。
✔️お手入れについてはこちらの記事もチェック
正しい選び方で自分に合った寝袋選びをしましょう
場合によっては命の危険すら感じる冬の寒さ。冬用の寝袋と言っても種類が多すぎて何が良いのか分からないという方も多かったのではないでしょうか。
加藤さんのお話から基本は十二分に保温性能のあるアイテムであることが大前提。あとは使い勝手予算面で「何を重要視するのか?」という自分の優先ポイントとも照らし合わせてしっかり選び、冬のキャンプも快適に楽しみましょう!