憧れのハンモック泊!寒さの残る時期に決行
先日キャンプ場に行った際、ブッシュクラフト的なハンモック泊をしている人がいて、そのスタイルに思わず「かっこいい……」と見とれてしまいました。
この話を聞いていた先輩が「思い立ったが吉日」とばかりにハンモック泊上級者に速攻でアポを取り、憧れのハンモック泊に挑戦することが急遽決まったのでした。
本当はもう少し温かく、気候のいい時期が良かった……という私の思いは、そっと胸にしまいこんで。
今回、初心者の私にハンモック泊を教えてくれたのは株式会社ブッシュクラフトの代表、相馬拓也さん。ブッシュクラフトの入門書を出されているほど経験豊富な方で、ハンモック泊はお手の物というすごい人なんです。
今回使用する基本アイテム
①主役のハンモック
この日相馬さんからお借りしたのは、eno(イーノ)のカモネストハンモック。
カモ柄で非常に軽量。ご覧のとおり収納時は手のひらサイズというコンパクトさ。ハンモック泊はアイテムがかさばらないのも非常にいいですね。
イーノ カモネスト ハンモック
②木に固定するストラップ
そしてハンモックに欠かせないのが木に固定するストラップ。同じくenoのアトラスサスペンションというストラップを使います。
ハンモックを設営するにはロープワークの深い知識とスキルが必要なのだと思い込んでいましたが、こちらのストラップを使えばロープワークは一切不要!
私のようなロープワークの度にググってしまうビギナーにはマストなアイテム。詳細は後ほどご説明します。
イーノ ハンモックストラップ アトラスサスペンション
③寝袋とマット
このほか、就寝用アイテムとして寝袋とマットを持ち込みました。まだ冬の寒さの残るハンモック泊挑戦ということで、こちらは先輩に-6℃対応の寝袋をお借りしてきました。
ご覧のように、今回は完全に周りの方々の善意におんぶにだっこというかたちで進めさせていただきます!(きっぱりと)
驚きの簡単ハンモック設営!
ではハンモック設営を始めていきます。まずハンモックを設営するのに適度な距離感の木を2本見つけたら、ストラップをかける部分にタオルや手ぬぐいを巻きます。
木には人間一人分の負荷がかかるため、ダメージを軽減するため必ず行うようにしましょう。
ここですかさず質問。ストラップをかける位置はどのあたりがいいんですか?
だいたい頭の上くらいの位置がいいですね。ハンモックに乗ると想像よりもかなり沈むので、高めにしておくのが無難です。具体的に言うと、乗った状態でハンモックが120~130度くらいになる角度ですね。
と相馬さん。フムフムなるほど勉強になります。慣れている人がスムーズに決めてやっているのは、もう自分のベストな位置を理解しているからなんですね。
手ぬぐいの上からストラップを巻いていきます。端がループ状になっているので、反対側の端をループに通してしっかりと締め付けます。
なんと木への接続はこれだけ! 難しいロープワークは皆無。もう一方の木にも同様に行います。
そうしたらあとはハンモックを接続するだけ。ストラップには何カ所もループがついており、接続位置を変えるだけでハンモックの高さを調整できちゃいます。
接続の仕方もハンモックに付属しているカラビナをひっかけるだけなのでとても簡単。なんとこれだけでもうハンモック設営完了です! テントより全然楽すぎる……。
ハンモックの正しい座り方&寝方
ハンモックが完成したので試しに座ってみます。なかなかいい感じゃないですか?
すっかり浮かれている私に「若干、片側が高くなっていますね」と相馬さん。さすが鋭い……。
ハンモックを固定しているカラビナの左右の高さがなるべく平行になっているほうが、快適に横になれますよ。
それと、ハンモックに座るときはなるべく背中側の生地を掴んで伸ばして、頭にかぶせながら座るといいです。そうするとひっくり返る心配がありません。
これはさすがのテクニック! 確かに安心感と安定感が全然違います。
ズレがあった高さを調整して、いよいよハンモックの醍醐味といえる全身横たわり。すっぽり包まれる感じが気持ちいい! こんなに簡単に設営ができてこの快適さ、いや~ハンモックって最高ですね!
皆さん、そうやってまっすぐ寝ちゃいますよね。実際それで一晩寝てみればわかるのですが、まっすぐ寝ると腰が曲がった状態が続くのでけっこうきついんです。
ハンモックはまっすぐではなく斜めに寝るのがセオリー。設営のとき推奨した角度がしっかりできていれば、斜めでもちゃんと体が伸ばせるはずですよ。
なるほど……たしかに斜めに寝ることで体が真っすぐになります。明らかに寝心地は良いです。ただ、包まれ感がなくなったため、寝返りをうったら落っこちそう……。
でもこれで大丈夫なんだとか。
ハンモックの生地はしっかり幅があるので心配いりませんよ。
ほんとだ! 半信半疑で、落ちるの覚悟でわざと寝返りをうっても落ちません! 基本さえしっかりできていれば素人の浅い心配など無用なんですね。
ハンモックでの安眠テク&防寒対策!
ハンモックの基本を学んだところで、いよいよ宿泊のためのベッドメイキングに移ります!
日が傾きだして、寒さが増して怯えていたら、サーマレストのZライトソルを相馬さんが追加で貸してくださいました。もう感謝のしようがありません。
①マットは寝袋の中に入れてしまう
マットは寝袋の中に入れちゃいましょう。ずれたりしないのでこっちのほうが快適です。
と相馬さん。なるほど。マットを中に入れてもそれほど狭さも感じません。
②アンダーキルトで下からの冷気をカバー
ハンモックって、どうしても下からの冷気で寒さを感じてしまうんです。そこで対策アイテムとしてアンダーキルトが役立ちます。ハンモックよりもかさばってしまうのが玉にキズなんですけどね。
なんと。ハンモックを包み込むように下側が完全に覆われました。ハンモックがまるで船のよう。
こちらの設置方法も簡単。ハンモックを吊っている左右のカラビナに、アンダーキルトのループをひっかけるだけです。
地べたに寝ないハンモックだからこそ、下側の防寒対策を強化するわけですが、サーマレストに寝袋インのマットに加え、このアンダーキルトまであったら、普通のテント泊より防寒充実してますよねコレ。俄然安眠できる気がしてきました。
③横からの冷気もこれで防ぐ!
さらに相馬さんのテクが炸裂。
まだまだあります。ホムセンで売っている銀マットなんかでもいいんですが、こんな風にカットしたマットを2枚用意します。
これを寝袋の中に入れて、両腕の外側にセットします。ハンモックは構造上左右の生地とくっついた状態になるので、寝袋がつぶれて寒さを感じやすい部分なんです。なのでこれで防寒します。
通常のテント泊では両腕の部分がつぶれることはないので、まさにハンモックならではの対策です。これで下側からも左右からも寒さを感じにくくなるわけですね。
④足元にはゆとりを。顔まわりはキツキツに
足の部分がパンパンに張った状態になっちゃってますよね。これもまた寝袋の機能が生かしきれず、寒さを感じやすい場所になります。
言われてみれば確かに。意識しないと見落としがちなところですね。
こうやって少しゆとりを持たせるようにするといいですよ。
ハンモックに不慣れで身動きができない筆者を、相馬さんがひとつひとつ丁寧にレクチャー。なんか至れり尽くせりですいません……。
あとは寝袋のフードをしっかりと被ることです。窮屈さを感じるかもしれませんが、ここまで絞り込むことで寝袋の性能をフルに生かせますよ。
完全防備にしていただきました。正直、顔に若干食い込んでる感じはありますが、これはかなり温かい……。ちょっと入っていただけで汗ばんできました。これなら確実に眠れそうです。
⑤これでも心配な人はカイロでダメ押し
左右が寒くなる対策は施し済みですが、さらに腕にカイロを貼ることでも対策できるそう。これはテントで寝るときも同じ考え方ができますね。
要は腰とか肩とか、最も体重がかかる場所ほど寝袋が潰れて寒さを感じる要因になるので、そういった部分にカイロで対策するのがポイントです。
足裏にもさらにカイロを貼ることでダメ押し。
⑥タープで雨風対策
完全防寒を果たしましたが、雨に振られたら即終了な状態。なのでenoのタープを張ることで上方向の対策をします。
このタープもハンモックと同じで、左右のループに引っ掛けるだけで設営できちゃいます。ハンモックとの高さ調整が楽にできるので、かなり便利ですよ。
ハンモック上に設置できたら、あとは四隅をペグダウンしていくだけです。簡単でしょっ!
幕に近いほうに自在がついているので、トートラインヒッチ(自在結び)のような難しいロープワークは不要なんです。
と相馬さん。これなら初心者でも余裕で設営できちゃいますね。
片面を巻き上げておくことで出入りもスムーズに。下側がないだけでタープというかほぼテントですね。
日中は片面のロープをペグから外してめくっておけば、イス代わりにも使えます。
⑦止水対策も忘れずに
そして、雨対策として大事なのがこちら。ハンモックはロープをつたって雨水が中に染み込んできてしまうため、相馬さんはカラビナ部分にカー用品をDIYしたものを使って水をシャットアウト。
ご覧のように2段構えの対策ですが、1段目でしっかり水が下に落ちています。これで雨が降ってもバッチリ。
相馬さんバージョンのハンモック
相馬さんも別で設営をされていたので、こちらも見せていただきました。タープを地面まで下ろして張ってあり、ハンモックの下には毛布のようなものが?
相馬さんが明かしてくれます。
アンダーキルトの代わりに、こうやって毛布を束ねて括り付けても防寒対策ができますよ。アンダーキルトより用途も増えますし、こちらの方がよりブッシュクラフト感はでますね。
タープは地面まで下ろして張ってあるため、私のよりも密室感がありコンパクトですね。難易度は上がりそうだけどこちらも挑戦してみたいスタイルです。
いよいよハンモック泊実行!
今までの相馬さんからの教えをすべて実装し就寝。翌朝、結論から言うとばっちり眠れました。むしろテントより寝れたかもしれません。心配していた寒さも、徹底した防寒対策で何ら問題ナシ。
私はテントだと、マットを敷いていてもよく体が痺れてしまい起きることがあるのですが、ハンモックの場合それは皆無。地面の傾斜の影響も受けないのでほんとにストレスがありませんでした。
ただ、ちょっと困った点も……
夜、トイレで目が覚めたときは、相当面倒くさくてしばらく格闘しました。徹底した防寒対策+ハンモックの上なので、身動きが取りづらかったです。
ハンモックに戻り、防寒対策を再構築するのもひと苦労。寝袋に入りながら良い感じの斜め位置に調節したり、体の横にマットを詰め直したり……。正直、眠気のある状態で同じように復元するのは無理で、途中で力尽きました。
私も最初のころは結構ガサゴソやってましたが、慣れてしまえばサクっと理想のポジションを取れるようになりますよ!
と相馬さん。そんなレベルに達したい……。
やってみて見えてきたこと
やってみるまでは、冬にハンモックで寝るなんて絶対に無理だと思っていました。これはもう腹をくくるしかないなと。でもこんなにも防寒対策ができるなんて本当に予想外。
なかでもアンダーキルトは存在さえ知らなくて、その効果もバツグンだったので強烈な印象を与えてくれました。私の個人的な意見だけで言えば、寝心地ならテントより断然ハンモック。そんな固定概念が覆るほどな経験でした。
本気のブッシュクラフトキャンプではハンモックがベスト
相馬さんがハンモック泊を推奨する理由としては
・木さえあれば地形を選ばない
・軽量コンパクト
・寝心地がいい
・設営が数分なのでちょっとした休憩にも使える
・普通のキャンプでも絶好の遊び道具になる
などがあるそう。
平たく乾いた地面を探す必要がなく、木さえ生えていればどこでも寝ることができる。本気でブッシュクラフトキャンプをするにはうってつけなんです。
魅力いっぱいのハンモック泊、興味を持った人はぜひ挑戦してみてください!
執筆:髙橋敦
カモックも調子良さそう
こちらのメーカーもハンモック好きに人気。