アウトドアマン・写風人さんが送る“南信州の森暮らし”
長野県・駒ヶ根市に居を構える写風人さん。アウトドアと密接な日々の暮らしを綴ります。
1955年生まれ。GRIP SWANYオフィシャルカメラマン。FIRESIDE薪ストーブエッセイ著作家。2019年より南信州に移住し、薪ストーブを中心とした火のある生活を愉しんでいる。Instagramのアカウントは@syahoo_jin
快適にしてくれる暖房器具も、誤った使い方で事故にも……
キャンプで焚き火が欠かせないように、冬キャンではテント内に薪ストーブを設置する人も増えてきました。
その一方で、薪ストーブによる事故や火災も多くなっていることも事実です。
キャンプ用薪ストーブの多くは、本来屋外用であり、テント内で使用することは推奨されていないか禁止となっている場合が多いです。
それでもテント内で薪ストーブを使うことは、あくまで自己責任とされているようです。
薪ストーブをテント内で使う場合の注意点
その自己責任が前提となりますが、薪ストーブをテント内で使う場合の注意点をいくつか挙げてみました。
薪ストーブを入れてもOKという海外製のテントが増えていたり、サウナブームによって「薪ストーブ」というアイテム自体が数年前より身近な存在になってきていますが、誤った使い方で事故になる前にしっかり知識は入れておきましょう。少しでも参考になれば嬉しいです。
まずは換気の必要性をしっかり理解しよう
まず最初に理解しておきたいことは、薪の燃焼には空気(酸素)が必要であること。
閉めきったテント内で燃やせば燃やすほど多くの酸素を使い果たし、気がつくと酸欠状態に陥ります。これは薪ストーブに限らず、石油ストーブも同じです。
住宅で石油ストーブを使う場合、1時間に2回、2ヶ所の以上の窓を開けて1~2分程度換気するのが目安だとよく言われます。室内でもそれほど換気するのですから、密室のテントならなおさら換気が必要です。
せっかく暖まったテント内に冷気を送り込むのは台無しのように感じますが、酸素濃度が低下して不完全燃焼を起こし、一酸化炭素中毒を引き起こす可能性もあります。
換気だけじゃなく「薪ストーブの使い方」も重要
更に薪ストーブの場合は、焚き口を空けたまま燃やしたり、乾いていない薪を投入して不完全燃焼を起こしたりと様々な要因で一酸化中毒を引き起こすことがあります。
換気をしておけば万事OKという考え方ではなく、薪ストーブの使い方にも気をつけたいですね。このあと、「設置の仕方」や「燃やす薪の選び方」もご紹介しますよ。
子供がいる場合はなおさら気をつける
特に気を付けたいのはお子様がいる場合。子供は一酸化炭素の血中濃度が大人の半分以下で症状がでるので、大人が頭が痛いと感じたときにはすでに子供は昏睡状態に陥る危険があるのです。
テントはスキマ風が入るから大丈夫!と安心しないで、確実な換気を心掛けましょう。
一酸化炭素チェッカーは必須
また、当たり前ですが一酸化炭素中毒警報器の用意もお忘れなく。
いまや焚き火台とセットで防燃シートを持っていくのが基本となったように、ストーブを使う場合は一酸化炭素中毒警報器をマストで持っていきましょう。
薪ストーブの「設置」について
前段で薪ストーブの使い方にも注意が必要だとお伝えしましたが、本体の設置の仕方や、煙突の向きにも少しコツがあります。ここではそのコツをご紹介します。
テントは広くて難燃素材、そして煙突穴付きが理想
薪ストーブをテントに設置する場合は、余裕のあるスペースを確保したいので、テントは広くて大きめが理想です。
ビギナーの場合は、特に煙突穴付きテントや熱に強い難燃素材のものを選びましょう。
水平が保てるか、燃え移るものは近くにないか
薪ストーブは安定した地面に置き、水平もチェックし周囲に落ち葉や布など可燃物は置かないよう注意しましょう。
転倒防止に脚をペグダウンして固定することもお薦めです。
煙突は縦に真っ直ぐ。定期的にメンテもしてあげて
薪ストーブの燃焼で要となるのが煙突です。煙突からスムーズに排気させるにはドラフト(上昇気流)が必要です。煙突は横に引いたり冷えると上昇気流が起きにくく、煙が逆流することもあります。
煙突は真っ直ぐにテント内の上部まで上げ、テントから90cm以上外に出すのが理想的です。また煙突内には煤やタールが付きやすく、そのままにしていると煙道火災を引き起こします。煙突掃除用のブラシも用意し、こまめにメンテナンスを心掛けましょう。
薪ストーブの「燃焼」について
着火に紙類はNG
着火に新聞紙や紙類を使うと、煙突から火の粉がヒラヒラ舞い上がり、テントに穴が開いてしまったり、近隣サイトに迷惑がかかったりする恐れもあります。なので、着火には市販の着火材が便利です。
広葉樹は事前に準備しておくのも◎
薪は焚付け用と針葉樹・広葉樹を用意しましょう。針葉樹は燃えやすいので、最初の焚き始めや料理の強火など温度を上げたいときに使います。
広葉樹は火持ちも良く、メインの薪には最適です。ただキャンプ場には針葉樹しか用意されていない場合があるので、事前に準備できると安心です。
ガンガン燃やし「続ける」のはやめておこう
薪ストーブの場合、焚き火のようにガンガン燃やし続けると、ストーブ本体にダメージを与えるだけでなく、煙突が真っ赤になり火災の原因にも繋がります。適度な熾きを残し小休止させるような焚き方も必要です。
また、火持ちの良い広葉樹を上手く使い、チョロチョロ燃え続けるような工夫も大切です。
優れた道具は、使い手のレベルアップにもつながる
以上の点に注意すれば、薪ストーブは料理もできるとても便利なアイテム。リスク回避の嗅覚や、燃焼の効率や火加減の強弱を操れるようになれば、アウトドアマンとしてのスキルも上がるでしょう。
楽しいはずの冬キャンが悲惨な事故にならないよう、万全な備えをして楽しみましょう。