玄人キャンパーも愛用者の多いアノラックパーカ
キャンプでは定番化しつつあるアノラックパーカ。裾から被って着る手軽さと、防寒、防雨、防風性に優れアウトドアにぴったりな性能を備えていることから、玄人キャンパーからも絶大な人気があります。
アノラックパーカの原点は、アザラシの皮を加工して被るイヌイットの衣装と言われていますが、現在ではアウトドアジャンルに限らず、スポーツブランドやカジュアルブランドなど多くのメーカーが作っています。
今回は、そんな中でもアウトドアブランド「ティラック」が10年以上も販売し続けるロングセラーのアノラックパーカを紹介します。
ティラックはヒンズー教にゆかりのあるブランド
ティラックは、ドイツとスロバキアに挟まれたチェコ共和国発祥のアウトドアブランド。ブランド名は、ヒンズー教において神のお守りとされるおでこの赤い点(=ティカ)に由来し、それをサンスクリット語で表したもの。
赤い点は、同ブランドが展開するほとんどウエアのフードに刺繍しており、それにより「ティラックの服があなたを守る」という意味を込めているそうです。なんともロマンに溢れるコンセプト!
そんなコンセプトに見合うように、製造はチェコ共和国の本国で一貫して製造しており、素材から縫製まで徹底して管理しています。また、ウエアの多くがブラックやグレー、カーキなど合わせやすいカラーリングを採用し、コーディネイトのしやすさも魅力のひとつです。
今なお最高峰の素材を使用したティラックのジャケットを解説
今回紹介する「オディン ジャケット」は、2010年にリリースして以来ほぼアップデートせずに販売し続けてきたロングセラーモデル。カラーはシナモン、ブラックネイビー、オリーブ、ナチュールの4色展開で、ボクは茶色っぽいシナモンを使用しています。
シルエットは身体に沿ったレギュラーフィット。ですが、ヨーロッパ人向けのサイズのため、日本人が着るならやや大きめに感じられます。そのため、身長175cmのボクは普段マウンテンパーカだとLサイズを選びますが、こちらはMサイズを選びました。
このオディン ジャケットは、自分にとっても非常に使いやすいアノラックパーカです。その理由を4つご紹介します。
おすすめの理由1:超撥水のコットン「ベンタイル」を使用
お気に入りの理由は、第一にベンタイルを使用していること。この素材は1930年台の英国軍のパイロットスーツのために開発されたもので、逸話が残っています。
当時のパイロットが寒い地域に不時着した際、この生地を使っていたウエアを着ていたおかげで多くの軍人が生きながらえ、他の素材を使ったウエアと比べて生還率が上がったそうです。
なぜ英国軍の人たちが生きながらえたのか。それは、コットン100%なのに撥水性に富んだ特殊な生地だから。繊維の密度が非常に高く、水分を含むと繊維が膨れて水を入りにくくする撥水構造で、それ以外にコットン本来の通気性と透湿性、耐久性も兼ね備えています。
また、使うことであたりや色落ちが出て、経年変化も出てきます。冷えた季節に着るだけでなく、焚き火中に着るのも良さそうですね。
おすすめの理由2:大小異なる5つのポケット
オディン ジャケットにはフロントに3つ、左腕に1つの計4つのポケットがあります。
まずはフロント。ファスナーの真下にはフラップ付きの大きいカンガルーポケットがあり、この中に3つのインナーポケットがあります。
その上には小さいポケットを配置。片手がちょうど入るサイズなので、スマホやコインケースといった小さい貴重品を収納することができます。こちらはファスナー付きなので、動いても落ちにくいのがいいですね。
メインポケットの下には、左右がつながっているハンドポケットを配置。裏地を見るとほんのり伸びるメッシュ生地を配しており、蒸れにくくある程度小物を入れても収まるようになっています。
さらに、左腕にあるちょうど片手サイズの袖ポケット。絆創膏といった救急道具や、マッチやライターといった着火道具などの小さい道具を入れられます。
ポケットが多くあるほど、バッグを使わずにジャケット1枚で道具を持ち運べるので、身軽に動けるメリットがあります。
おすすめの理由3:環境に合わせて使える左右の大きいファスナー
左側のファスナーは脇までガバッと開けることができ、これにより脱ぎ着しやすくなっています。
ファスナーは2つ付いており、上に寄せると脚を上げても動きやすくなります。下を締めた状態で上だけ開けると、ベンチレーションにもなり、中が蒸れてきたらここから放出できます。
右側のファスナーも開けることができますが、こちらのファスナーは1つのみなので、ベンチレーションとしての機能になります。
ベンタイルで通気性があるとはいえ、運動してウエアの内側が蒸れたらすぐに乾くわけではありません。ここを開ければ、風が内部へダイレクトに入るため、蒸れをなくしたい人には便利な機能です。
おすすめの理由4:腕を動かしやすい立体構造
ひじ部分にはギャザーを入れ、腕を動かしやすい構造になっています。
腕を伸ばしてみるとわかりますが、脇からひじにかけてはゆったりしており、ひじから袖口にかけては細くなっています。
ひじを曲げても、伸縮しなくても楽に曲げ伸ばしができます。また、寒いときは中にミドルレイヤーを着ますが、ゆったりした構造なら着膨れせず、冬場も動きやすいのがいいですね。
そのほかに、フロントファスナーは止水ファスナーを採用し、前から雨が吹き込んでも中に入らないようになっています。ファスナーはあごまで伸びるので、首周りから風が入らない点も特徴です。
ティラック オディン ジャケット
シルエットはメリハリがあり、キャンプにぴったり
Mサイズを着たのがこちら。袖丈はやや長めで、伸ばすと親指が隠れてしまいます。でも、袖口のベルクロで簡単に留められるので、その点は安心。胸囲と前の裾の長さはジャストです。
後ろの裾の長さは、おしりがちょうど収まり、前と後ろとで長さが異なります。後ろが長ければ前屈みになっても、パンツのウエスト周りや背中が見えないようになるので、風による冷えや見栄え的にいいそうです。
結論として、シルエットはゆったりしたところとジャストなところとでメリハリがあり、ベンタイルというアウトドアにピッタリな素材を贅沢に使用している点から、キャンプにぜひとも着ていってほしいウエアです!
気になるところは?
使っていて気になるのは2点。1つ目は重さ。ナイロンやポリエステルといった化繊ジャケットに慣れてしまうと、コットン100%はやや重く感じます。
実際、他ブランドのナイロン100%のアノラックパーカはLサイズで350g、対して、オディン ジャケットはLサイズで640gと、倍近い重量なんです。
とは言っても、グラム単位なのでバッグほどまでズッシリと変わることはないため、そこまで気にならない人もいるでしょう。
2つ目は経年変化。シワの山部分の色が薄れるアタリが出たり、表面にじゃっかんの毛羽立ちが出たりなど、使っていくにつれて味が出てきます。
その味が玄人感を演出するわけですが、一方で味が出過ぎるあまりに生地がクタクタになると、野暮ったさが出てしまうことがあります。そうなった際に、街中で着る際は注意したほうがいいでしょう。
機能性に長けたキャンプにおすすめの一着
クラシカルでデザインと悪環境に耐えられる確かな機能を備えた、ティラックのオディン ジャケット。街中でもキャンプでも、重宝すること間違いなしのウエアをぜひお試しあれ!
ティラック オディン ジャケット
TEXT:小川迪裕