※記事内で石油ストーブの分解を紹介していますが、故障等のトラブルについてメーカーによる保証はありません。行う際は自己責任となりますことを、ご了承ください。
【QUESTION】ギアの色がバラバラ……これってどうにか揃えられない?
キャンプサイトで使うギアは、色数を絞ったほうがお洒落な雰囲気になります。写真は筆者のアルパカストーブと灯油携行缶。秋~春のキャンプでは常にセットで持ち運びをするだけにカラーも揃えたいのですが、やったことが無いし火器なので安全面も心配……。
そこで、セルフカスタムの達人に相談してみました。
【ANSWER】塗装しなおすことで解決できます!
その人とは、CAMP HACKでもおなじみのガレージブランド「38explore」を主宰する宮崎秀仁さん(通称:ミヤさん)。少年時代はプラモデルの塗装に没頭し、最近では愛車をもセルフペイントしてしまったのだとか。
そんなDIYの達人であるミヤさんが、キャンプギアを好みの色味に仕立て上げるセルフカスタム術を教えてくれました。
スチールギアをカラーチェンジ!
今回は、さきほどのストーブと携行缶をトレンドのサンドカラーにチェンジします。先に携行缶の仕上がり(写真左)を少しお見せすると、色が変わったことでまるで別のアイテムのよう!
ちなみに右はミヤさんが3年前に塗装したという携行缶。これはまたいい味が出ていて、オリジナルカスタムへの期待が高まりますね。
ではさっそく、必要な道具とやり方をレクチャーしていただきましょう!
【TOOLS】スチール塗装に必要な道具はこれ
今回の塗装に必要な道具が、こちら。塗料とミッチャクロン以外は100均でも揃えることができるアイテムで、ミヤさんの私物を除くと材料費は3,500円ほどです。
塗料は、ミヤさんがオススメしてくれたアメリカのラスト・オリウム社の「カモフラージュシリーズ」。自然にも調和するマット仕上げなので、キャンプギアにもピッタリです。
オリーブ系カラー全3色のうち今回採用したのはカーキ(サンドベージュ)。これを使って、さっそくアルパカストーブの色を変えていきます!
【HOW TO】ミヤさんのアドバイス付き!アルパカストーブを塗装する7つの手順
Step1:分解
アルパカストーブのパーツのうち、灯油が入っているタンク部分を塗装します。まずは灯油が空になっているかを確認して、残っているようであればポリタンクなどに移しておきましょう。
分解の作業はプラスドライバーでネジを外していくだけと、とにかく簡単。
こちらが分解したアルパカストーブの全パーツ。後から元に戻すので組み立ての順序は忘れないように、またビス類はなくさないように保管しておきましょう。
Step2:養生
まずは塗装しない部分に塗料がつかないよう、マスキングテープを使ってしっかり「養生」していきます。
塗装仕事の肝の90%は養生! アルパカストーブの場合は写真の3箇所を念入りに覆っておく必要があります。
このときマスキングテープは太さ違いで2種類あると便利。細かい部分には細いテープを使うようにしましょう。円筒部分はマスキングテープと養生シートが一体化されたマスカーを使えば、簡単に覆うことができますよ。
Step3:足付け
続いての作業が「足付け」。やすりを使って元の塗料に傷をつけていきます。こうすることで塗装面に凹凸が付き、新しい塗料がのりやすくなります。
細かい部分も完璧に塗装仕上げするため、丁寧にこすっていきましょう。
ウレタン塗装やラッカー塗装をする場合は番手の高いやすりが必要になりますが、ラスト・オリウムのスプレーを使う場合は240番で十分。インクがのりやすいので、表面に軽く傷がつく程度で大丈夫なんです。
Step4:脱脂
続いての作業が「脱脂」。塗装面に付いた脂汚れを取り除きます。
脱脂をしないと、塗料が脂に反応して剥がれやすくなってしまいます。専用のスプレーも売っていますが、今回は100均で売っているらくがき消しスプレーを使っています。
成分に「有機溶剤」が入っているので代用できるんです。ステッカーはがし液はリモネという成分が入っていて脱脂作業には適さないので、使わないようにしましょう。
細かい部分も指を使ってしっかり脱脂。万が一脱脂後に素手で表面を触ってしまった場合は、その部分を再度脱脂するようにしましょう。
Step5:下地
続いては「下地」作りです。下地材としてオススメのアイテムは、職人たちも愛用するという「ミッチャクロン」。
塗りやすいところからスプレーを吹いてしまいがちですが、見えにくい裏面などから作業するのが吉。裏面は一度塗ってしまえばそこが“足場”となるので、その後本体をひっくり返す必要もなくなります。下地材は薄く、全体にかかるくらいでOKです。
Step6:塗装
下地が乾いたら、いよいよ「塗装」です。いきなり本体にスプレーするのではなく養生部分などに軽く吹き付けて、塗料の出具合を確認すると良いとのこと。見えにくい裏面などから始めるようにしましょう。
ラスト・オリウム社製のスプレーは粘度が高いので、均一に塗れるよう吹き付ける前にしっかりと振りましょう。目安は1分弱、その際上下さかさまにすると効果的です。
本体を固定すると塗料がダマになってしまうので、左右に動かしながら軽く吹き付けていくのがポイント。屋外でやる場合は風があると塗料が周りに飛び散ってしまうので、作業スペース兼養生を兼ねる段ボールがあると便利です。
もし一部失敗してしまったら・・・
塗料が乾く前に触ってしまったり液だれが発生した場合でも、レタッチ(修正)は簡単に行なえます。
先ほどのらくがき消しスプレーを使って、修正したい部分を再び「脱脂」。
脱脂材を拭き取ると写真のように擦れてしまいますが、心配ありません。乾いたら下地を作るためにミッチャクロンをスプレーします。
下地材が乾いたらその部分に再度スプレー。ご覧のように、擦れ跡はまったく気にならなくなりました。
一度塗りが完成したら、しっかり乾燥させましょう。乾燥時間は天候にもよりますが、晴れた日なら20分もあれば十分だそう。
理想は二度塗りです。塗れば塗るほど被膜が強くなりますし、元の色が透けて見えなくなるんです。
Step7:組み立て
塗装が完全に乾いたのを確認したら、最後は「組み立て」。このとき灯油が塗装面に付着すると塗料が剥がれてしまう可能性があるので、気になる方は養生するのがオススメです。
分解から塗装までの7ステップを教えていただきましたが、次は「ストーブ以外のギアも同じ要領でできるのか?」「NG素材はある?」など、塗装にチャレンジする前に知っておくべき知識についてもチェックしておきましょう。
【TIPS①】スチール製のギアなら、塗装のやり方は基本同じ
手始めとしてアルパカストーブを例に塗装の手順を追ってみましたが、スチール素材であれば基本的な流れは一緒。ストーブは分解と組み立ての工程が必要になりますが、携行缶やストレージボックスのような箱型であれば、作業は1時間もあれば十分に終わるでしょう。
【TIPS②】高熱部分や異素材パーツは塗装NG
アルパカストーブのカバー部分はスチール素材ではないため、塗装はできません。ワイヤー部はメッキ、天板はホーローなので塗装するには専門的な知識や技術が必要になります。さらにもう一点注意事項があるのだとか。
スチール素材といっても、高熱になるパーツの塗装もNGです。たとえばランタンのボトル部分はOKでもシェード部分はNG。熱を帯びる部分への塗装は耐熱塗料が必要になるので、塗装の際は塗っても大丈夫な部分かをしっかり確認しておく必要があります。
【FINISH】約2時間で完成!サンドベージュに染めてみました
最後はミヤさんのブランド「38explore」のステッカーチューンをして完成! セット販売していてもおかしくない素敵な見た目に仕上がりました。それでいて総費用は3,500円と、初回にしてセルフカスタムのメリットを大いに実感。
スチール製ギアの塗装は予想以上に簡単なので、ぜひ参考にしてみてくださいね。