水切りの世界チャンプに学ぶ、向こう岸まで届くカッコイイ石の投げ方
キャンプの楽しみ⽅が多様化する昨今。アウトドアな空間でのんびり過ごすのもその醍醐味ではありますが、SUPやスラックラインなどのプラスαのアクティビティを楽しむ方が増加中。そこで今回は、キャンプの新定番になりうる「⽔切り」の魅力をご紹介!⽔切りの世界チャンピオンである橋本桂佑様に取材し、遠くまで飛ばす水切りのコツを教わってきました。
2023/11/15 更新
編集者
CAMP HACK編集部
月間550万人が訪れる人気No.1キャンプメディア『CAMP HACK』。累計制作記事本数は10,000本以上。環境省等の行政機関、「髙島屋」や「niko and ...」といったクライアントとの連携実績多数。また、TBSテレビ『ラヴィット!』等、各メディアで登壇機会多数の編集部員も所属。
CAMP HACK編集部のプロフィール 制作者
イトキン
ファッション誌の編集者としてキャリアをスタート。現在は、湘南に拠点を置くクリエイティブカンパニー『GOODIES GOOD,GOOD COMPANY』に所属し、紙媒体の編集はもちろん、ウェブメディアの運営やライティングにも携わる。キャンプ歴は5年と短いが、学生時代に登山をしていたこともあり、ULギアには多少うるさめ。釣り、自転車、古着、あとスポコン系のアニメが意外と好き。
イトキンのプロフィール
記事中・アイキャッチ撮影:菊池貴裕
小さい頃に没頭した「水切り」。大人になった今、どれくらい遠くに投げられるのか…!
筆者がまだ幼かった頃。実家が川沿いだったということもあり、よく石を拾っては兄2人(2歳上と4歳上)に「今日は何回跳ねられるか」と勝負を持ちかけ、夕暮れどきまで水切りをして遊んでいました。
水切りとは、小石を水面に水平方向に投げ、石が水の上をはねて飛ぶのを楽しむ遊戯(引用:コトバンク)
しかし、結果は連戦連敗。幼いながら、その年齢差かつ体格差をひがみ、「勝てるわけがないやん」といつも卑屈になっていました……。
あれから20年。大人になった今、当時感覚的に投げていた水切りを科学的かつ論理的に投げることができたらどれほど遠くまで石を跳ねさせられるのでしょうか。ましてや今、体格も筋力も増加。確実に当時より遠くに投げられるはず。
そこで今回は、⽔切りの世界チャンプである橋本桂佑さんの元を訪ね、水切りのコツを教わってきました。
取材した水切りの世界チャンピオン橋本桂佑さん
【プロフィール】
1991年、栃⽊県⼩⼭市⽣まれ。筆者同様、川沿いにご実家があったため6歳から⽔切りを始める。⼤学⽣時代、ネットで⽔切り⼤会の存在を知り、上⼿い⼈に教えてもらう想いでさまざまな⼤会に出場。今や“⽇本のハシモト”として、その名を⽔切り界に轟かせている。
【主な大会成績】
2012年 全日本石投げ選手権大会(宮城県丸森町) 優勝
2014・2017年 天塩川de水切り北海道大会(北海道中川町) 優勝
2014・2016・2018・2019年 仁淀川国際水切り大会(高知県いの町) 優勝
2015年 International Stone Skipping Championships(アメリカ、ミシガン州) 出場
2017年 World Stone Skimming Championships(スコットランド) 優勝
2018年 Rock in River Festival (アメリカ、ペンシルベニア州) 優勝
1バウンドでも遠くに投げたい!石選びのコツとは?
世界チャンピオン橋本桂佑さん(以下略:チャンプ)から⽔切りのレクチャーを受けたのは、筆者(写真右⼿前:イトキン。⽔切りは⼩学⽣低学年ぶり)と⼥性スタッフ(写真右奥:キノピ。水切り経験ゼロ)の⼆⼈。
今回は、⽔切り初挑戦の⼥性スタッフがいたということもあり、心新たに初級編から水切りを学ぶことに。
どんな石が水切りに向いてる?
まず最初に教わったのは、⽯の正しい選び⽅。
チャンプ曰く、⽯選びは投げる技術より重要度が⾼く、極端な話「良い⽯さえ使っていればそれだけで良い⽔切りができる」とのこと。では、実際にどんな⽯を選べばいいのでしょうか。
皆さんご存知だとは思いますが、まずは“平らな⽯”を選ぶことが⼤前提になります。ですが、薄すぎると⾵に煽られ、キレイに着⽔できない場合も……。程よく重量感のある⽯を選ぶのがオススメです。
確かに。軽い⽯は初速が早くてもあとで失速する感じ。
そうですね。⽯にスピードを持たせるためにはある程度の重さが必要になります。ちなみに、⽯をこうやって横から⾒ると、上⾯が湾曲していて、下⾯は真っ直ぐな形状をしていますよね
⽔切りをする際、この真っ直ぐな面を下にするとキレイに⽔⾯を跳ねてくれます。逆に、底⾯に出っ張っていたり、歪んだ部分があると跳ね⽅にバラツキが出てしまい、⽯の勢いは失速……。ですので、投球前に石の裏表もしっかり確認しましょう!
ここでクイズ!
この3つは、今お話しした“薄さ”と“程よい重み”、そして“⽚⾯が⼀直線”になった⽯。条件はすべて揃っています。ですが、①〜③の石は、形が全然違いますよね。では、どれが⽔切りに向いていると思いますか?
さて、読者の皆さんはどれが水切りに向いた石だと思いますか?
絶対③! 僕はこれまで、ずっと丸い⽯で投げてきましたし……! チャンプ、さすがにそれぐらいわかりますよ(笑)。
私も③かな。なんとなくだけど、さっきのバラツキが出ない跳ね⽅っていうことを考えると、左右対称でキレイな楕円状が水切りに向いてそう。
おそらく、ほとんどの⽅が⽔⾯との抵抗感が少なそうな③の⽯を選んだと思います。ですが、じつは①の石が⽔切りに向いているんです。
正解は、①の角張った石!
正確にいうと、①→②→③の順番で水切りに向いているという感じですかね。
ここで⼤事なのは、握ったときに指を引っ掛けられるかということです。
後ほど、⽔切りのポイントとなる⽯の握り⽅で詳しくお話ししますが、丸い③の⽯より①の⽅が⾓張っていて、指を引っ掛けやすいですよね。
ここで一旦、石の選び方をおさらい!
さて、ポイント③にある“指が引っ掛けられる”という意味は何を示唆しているのでしょうか。
スナップを効かせる?効率よく回転をかける石の握り方
さて、先ほど石に指を引っ掛けられる部分があった方がいいとお話ししましたね。というのも、
⽔切りは⽯に回転をかけることが必要になります。
この回転には、⽯の姿勢と軌道を安定させる効果があり、石の角に指を引っ掛けておくと、指から石が離れたときに自然と回転がかかってくれます。
正しい石の握り方
正しい握り⽅は、⽯の出っ張りに人差し指を引っ掛ける感じです。⼿の⼤きさに合わせてどこに指を引っ掛けるか、それは⼈それぞれで違ってきます。
ダメな石の握り方
ちなみに、この握り⽅は悪い例です。指が⽯から離れている分、投げた石に⼒が伝わりにくく、⽯にスピードを持たせづらくなります。
確かに、それだとフィット感がなく、投げにくそうな感じも。
そうですね。なので、握ったときに⼿の中で⽯をクルクルと回しながら、自分の指にフィットする場所を探すといいですね!
イメージ的に、水切りはスナップを利かせて投げるのがいいと思っているんですが、実際はどうなんですか?
手先だけで回転をかけようとするのは×
それはよくある間違えで、⼿先で回転をかけようとすると上⼿くいきません。
まずは指をしっかり石に引っ掛けること。そして、腕の振りに沿って、⼈差し指から⾃然に抜けるように⽯を離す。基本的にはこれだけです。それは、次に詳しくお話しします。
石の握り方のおさらい
最後は正しい姿勢を!教わったのは定番のフォームと、⾜場を安定させる低姿勢パターン
さて、石の選び方と握り方はコレでOK。最後は、石の投げ方です!
まずは、腕を⽔平に振ることを意識しましょう。投げる前にこうやって腕を広げると、意識的に⽔平を取れますし、体を⼤きく使うための準備にもなります。「いーち」で手を左右に広げ……
「にーい」で今度は体をひねりながら手を広げます。ここでしっかり石を持っている手を後ろに引きます。
そうですね! で、「さん!」で腰から体をひねり、その勢いを利用して石を離します。
定番フォームはコレだ!
こんな感じです。⽯が⽔に⼊っていくときの⾓度は小さいほうが跳ねやすいです。低い位置で⽯を離し、まっすぐ⽔に投げ⼊れるといったイメージで投げてください。
具体的に、⽯は⽔⾯に対して何度で⼊っていくのが理想なんですか?
あくまでも⽬安なんですが、石の入射角は20度くらいがいいです。そのためには、しっかりと腰を落として少し前かがみになって投げるといいですね。
じつは、撮影前にチャンプの⽔切り動画を拝⾒したんですが、膝をついて投げるパターンもありますよね?
そうですね。“膝付き投法”という投げ⽅で、地⾯に膝を付いて投げるパターンです。これですよね?
膝付き投法
そうです、そうです! 膝を付くメリットってあるんですか?
地面に膝を付くことで⾃然に低いリリースポイントを作ることができます。
また、重⼼を低くすることで投げる時のバランスも崩れにくくなるというメリットもあります。⼤⼈に⽐べるとお⼦さんは筋⼒が弱く体幹もまだ備わっていないので、膝付き投法がオススメです。
いざ実践!目指せ30オーバーへの道!
さて、水切りのコツを教わった我々二人。早速、実践してみることに!