水切りの世界チャンプに学ぶ、向こう岸まで届くカッコイイ石の投げ方

2020/01/30 更新

キャンプの楽しみ⽅が多様化する昨今。アウトドアな空間でのんびり過ごすのもその醍醐味ではありますが、SUPやスラックラインなどのプラスαのアクティビティを楽しむ方が増加中。そこで今回は、キャンプの新定番になりうる「⽔切り」の魅力をご紹介!⽔切りの世界チャンピオンである橋本桂佑様に取材し、遠くまで飛ばす水切りのコツを教わってきました。


記事中・アイキャッチ撮影:菊池貴裕

小さい頃に没頭した「水切り」。大人になった今、どれくらい遠くに投げられるのか…!


筆者がまだ幼かった頃。実家が川沿いだったということもあり、よく石を拾っては兄2人(2歳上と4歳上)に「今日は何回跳ねられるか」と勝負を持ちかけ、夕暮れどきまで水切りをして遊んでいました。

水切りとは、小石を水面に水平方向に投げ、石が水の上をはねて飛ぶのを楽しむ遊戯(引用:コトバンク

しかし、結果は連戦連敗。幼いながら、その年齢差かつ体格差をひがみ、「勝てるわけがないやん」といつも卑屈になっていました……。


あれから20年。大人になった今、当時感覚的に投げていた水切りを科学的かつ論理的に投げることができたらどれほど遠くまで石を跳ねさせられるのでしょうか。ましてや今、体格も筋力も増加。確実に当時より遠くに投げられるはず。

そこで今回は、⽔切りの世界チャンプである橋本桂佑さんの元を訪ね、水切りのコツを教わってきました。

取材した水切りの世界チャンピオン橋本桂佑さん

【プロフィール】
1991年、栃⽊県⼩⼭市⽣まれ。筆者同様、川沿いにご実家があったため6歳から⽔切りを始める。⼤学⽣時代、ネットで⽔切り⼤会の存在を知り、上⼿い⼈に教えてもらう想いでさまざまな⼤会に出場。今や“⽇本のハシモト”として、その名を⽔切り界に轟かせている。

【主な大会成績】
2012年 全日本石投げ選手権大会(宮城県丸森町) 優勝
2014・2017年 天塩川de水切り北海道大会(北海道中川町) 優勝
2014・2016・2018・2019年 仁淀川国際水切り大会(高知県いの町) 優勝
2015年 International Stone Skipping Championships(アメリカ、ミシガン州) 出場
2017年 World Stone Skimming Championships(スコットランド) 優勝
2018年 Rock in River Festival (アメリカ、ペンシルベニア州) 優勝


1バウンドでも遠くに投げたい!石選びのコツとは?


世界チャンピオン橋本桂佑さん(以下略:チャンプ)から⽔切りのレクチャーを受けたのは、筆者(写真右⼿前:イトキン。⽔切りは⼩学⽣低学年ぶり)と⼥性スタッフ(写真右奥:キノピ。水切り経験ゼロ)の⼆⼈。

今回は、⽔切り初挑戦の⼥性スタッフがいたということもあり、心新たに初級編から水切りを学ぶことに。

どんな石が水切りに向いてる?


まず最初に教わったのは、⽯の正しい選び⽅。チャンプ曰く、⽯選びは投げる技術より重要度が⾼く、極端な話「良い⽯さえ使っていればそれだけで良い⽔切りができる」とのこと。では、実際にどんな⽯を選べばいいのでしょうか。


チャンプ
皆さんご存知だとは思いますが、まずは“平らな⽯”を選ぶことが⼤前提になります。ですが、薄すぎると⾵に煽られ、キレイに着⽔できない場合も……。程よく重量感のある⽯を選ぶのがオススメです。



イトキン
確かに。軽い⽯は初速が早くてもあとで失速する感じ。



チャンプ
そうですね。⽯にスピードを持たせるためにはある程度の重さが必要になります。ちなみに、⽯をこうやって横から⾒ると、上⾯が湾曲していて、下⾯は真っ直ぐな形状をしていますよね



キノピ
はい……。



チャンプ
⽔切りをする際、この真っ直ぐな面を下にするとキレイに⽔⾯を跳ねてくれます。逆に、底⾯に出っ張っていたり、歪んだ部分があると跳ね⽅にバラツキが出てしまい、⽯の勢いは失速……。ですので、投球前に石の裏表もしっかり確認しましょう!




チャンプ
この3つは、今お話しした“薄さ”と“程よい重み”、そして“⽚⾯が⼀直線”になった⽯。条件はすべて揃っています。ですが、①〜③の石は、形が全然違いますよね。では、どれが⽔切りに向いていると思いますか?


さて、読者の皆さんはどれが水切りに向いた石だと思いますか?


イトキン
絶対③! 僕はこれまで、ずっと丸い⽯で投げてきましたし……! チャンプ、さすがにそれぐらいわかりますよ(笑)。



キノピ
私も③かな。なんとなくだけど、さっきのバラツキが出ない跳ね⽅っていうことを考えると、左右対称でキレイな楕円状が水切りに向いてそう。


チャンプ
おそらく、ほとんどの⽅が⽔⾯との抵抗感が少なそうな③の⽯を選んだと思います。ですが、じつは①の石が⽔切りに向いているんです。

正解は、①の角張った石!


イトキン
エッ!



チャンプ
正確にいうと、①→②→③の順番で水切りに向いているという感じですかね。



キノピ
どういうことですか?



チャンプ
ここで⼤事なのは、握ったときに指を引っ掛けられるかということです。



イトキン
……。



チャンプ
後ほど、⽔切りのポイントとなる⽯の握り⽅で詳しくお話ししますが、丸い③の⽯より①の⽅が⾓張っていて、指を引っ掛けやすいですよね。



キノピ
はい……。

ここで一旦、石の選び方をおさらい!

ポイント①大前提は平らな石

ポイント②薄すぎると風に煽られがちなので、程よく重量感のあるものを選ぶと◎

ポイント③指を引っ掛けられる角のある石

さて、ポイント③にある“指が引っ掛けられる”という意味は何を示唆しているのでしょうか。

スナップを効かせる?効率よく回転をかける石の握り方



チャンプ
さて、先ほど石に指を引っ掛けられる部分があった方がいいとお話ししましたね。というのも、⽔切りは⽯に回転をかけることが必要になります。

この回転には、⽯の姿勢と軌道を安定させる効果があり、石の角に指を引っ掛けておくと、指から石が離れた時に自然と回転がかかってくれます。



イトキン
コマも回転をかけることで重⼼が安定しますしね!



チャンプ
そう、コマと同じ仕組みです。

正しい石の握り方



チャンプ
正しい握り⽅は、⽯の出っ張りに人差し指を引っ掛ける感じです。⼿の⼤きさに合わせてどこに指を引っ掛けるか、それは⼈それぞれで違ってきます。

ダメな石の握り方



チャンプ
ちなみに、この握り⽅は悪い例です。指が⽯から離れている分、投げた石に⼒が伝わりにくく、⽯にスピードを持たせづらくなります。



キノピ
確かに、それだとフィット感がなく、投げにくそうな感じも。



チャンプ
そうですね。なので、握った時に⼿の中で⽯をクルクルと回しながら、自分の指にフィットする場所を探すといいですね!



イトキン
イメージ的に、水切りはスナップを利かせて投げるのがいいと思っているんですが、実際はどうなんですか?

手先だけで回転をかけようとするのは×



チャンプ
それはよくある間違えで、⼿先で回転をかけようとすると上⼿くいきません。



イトキン
ウソ! 今まで完全に勘違いしておりました……。



チャンプ
まずは指をしっかり石に引っ掛けること。そして、腕の振りに沿って、⼈差し指から⾃然に抜けるように⽯を離す。基本的にはこれだけです。それは、次に詳しくお話しします。

石の握り方のおさらい

ポイント①人差し指を石の角に合わせる
ポイント②石と指の接着面が大きくなるように握る

最後は正しい姿勢を!教わったのは定番のフォームと、⾜場を安定させる低姿勢パターン

さて、石の選び方と握り方はコレでOK。最後は、石の投げ方です!



チャンプ
まずは、腕を⽔平に振ることを意識しましょう。投げる前にこうやって腕を広げると、意識的に⽔平を取れますし、体を⼤きく使うための準備にもなります。「いーち」で手を左右に広げ……



イトキン
なんかラジオ体操みたいですね!



チャンプ
「にーい」で今度は体をひねりながら手を広げます。ここでしっかり石を持っている手を後ろに引きます



イトキン
(グググ!)こんな感じですか?



チャンプ
そうですね! で、「さん!」で腰から体をひねり、その勢いを利用して石を離します



キノピ
ぐは!



チャンプ
では、実際に投げてみましょうか。

定番フォームはコレだ!



チャンプ
こんな感じです。⽯が⽔に⼊っていくときの⾓度は小さいほうが跳ねやすいです。低い位置で⽯を離し、まっすぐ⽔に投げ⼊れるといったイメージで投げてください。



イトキン
具体的に、⽯は⽔⾯に対して何度で⼊っていくのが理想なんですか?



チャンプ
あくまでも⽬安なんですが、石の入射角は20度くらいがいいです。そのためには、しっかりと腰を落として少し前かがみになって投げるといいですね。



キノピ
じつは、撮影前にチャンプの⽔切り動画を拝⾒したんですが、膝をついて投げるパターンもありますよね?



チャンプ
そうですね。“膝付き投法”という投げ⽅で、地⾯に膝を付いて投げるパターンです。これですよね?

膝付き投法



キノピ
そうです、そうです! 膝を付くメリットってあるんですか?



チャンプ
地面に膝を付くことで⾃然に低いリリースポイントを作ることができます。



キノピ
なるほど!



チャンプ
また、重⼼を低くすることで投げる時のバランスも崩れにくくなるというメリットもあります。⼤⼈に⽐べるとお⼦さんは筋⼒が弱く体幹もまだ備わっていないので、膝付き投法がオススメです。

いざ実践!目指せ30オーバーへの道!

さて、水切りのコツを教わった我々二人。早速、実践してみることに!



イトキン
チャンプ、石を見繕ってきました! コレ、どうですか?



チャンプ
お、いい石拾って来ましたね! 早速、投げてみましょうか!



イトキン
はい!(いーち、にーの、さん!)トゥ! ……ヤベッ!


チャンプ
イトキンさん、腕だけで投げちゃっていますね。腰の動きを利用して、水平に投げるのを意識しましょうか!

キノピ
イトキン、全然ダメじゃん。こうやって投げるんだよ。見てて!(シュッ!)




チャンプ
キノピさんは、石がちょっと重たいみたいですね。石にスピードが乗らず、山なりに石が飛んでいる印象です。もう少し、軽い石で試してみましょうか!



キノピ
はい……。



イトキン
(ニヤニヤ)

トレーニングは続く…


その後も我々二人は、チャンプが見守るなかで必死にトレーニング。


チャンプ
イトキンさん、一旦石のスピードを抑えましょうか。石のスピードが速いと、その分、空気や水の抵抗が大きくなってしまうので、いい水切りの条件が崩れてしまいます。

もちろん、石にスピードを出すことは大事なんですが、慣れるまでは8割ほどの力で正しいフォームを意識しましょう。



イトキン
はい!



チャンプ
キノピさんは、石の回転をもう少し意識しましょうか! 上半身の回転に合わせて腕を振り、あとは人指し指から石を抜くだけです。そうすれば、自然とキレイな回転が生まれますよ。



キノピ
はい!



キノピ先輩の愛犬“ムギ”も飼い主の水切りを見守っています! 10投、20投……。徐々に上達する我々。


イトキン
チャンプ、ちょっと来てください! 僕だいぶ上手くなってきた気がします。いきますよ〜! トゥッ!(シュッ)




イトキン
どうっすか?(ドヤ顔)



チャンプ
お〜、かなりいい感じじゃないですか! ただ、姿勢が少し高くて、石が着水した時に少し勢いが落ちてしまっているので、もう少し腰を低くしましょうか




チャンプ
こんな感じで!

こちらが実際のチャンプの投球



イトキン
す、すげ!


50メートルを優に超える綺麗な投球。跳ねた回数は正直把握できませんでしたが、40回近くは飛んでいます。ちなみに、チャンプの自己記録は60回だそうです。


チャンプ
リリースポイントをできるだけ低くすることで、水面に対しての石の入射角が20度ほどになり、石の勢いを殺すことなくキレイな水切りができますよ



イトキン
オッケーすッ!


そして1時間後。30投目ぐらいでしょうか。ついに、その時が来ました!


イトキン
腰を低くし、力を抜いて、フォームを意識して……。いち、にの、さん!(シュッ)

チャンプ
今のは20回近く跳ねたんじゃないですか! コレはすごい!
今日イチの大記録! 思わず、世界チャンプともハイタッチ!
イトキン
ザッス! チャンプのおかげです!
そして、キノピ先輩も……。残念ながらうまく画面に収められませんでしたが、7〜8回の大ジャンプ。調子が良くて3〜4回だったキノピ先輩も見事に記録更新。この、ガッツポーズが嬉しさを物語っていますね。
チャンプ
お〜! キノピさん今のはかなり良かったですね! 投げた瞬間から感覚も良かったでしょう?
キノピ
今のは“キタ”なと思いました!
チャンプ
でしょ! 慣れてくると、投げた感覚だけでイイ投球だったか、そうでなかったかわかってくるんですよね。何はともあれ、お二人ともお疲れ様でした。
イトキン
お疲れ様でした!
キノピ
ありがとうございました!
残念ながら、目標の30回には遠く及びませんでしたが、めちゃくちゃいい思い出になりました。チャンプによれば「たった1日の練習で水切り30回は至難の技」だそうで、センスがある人でも2、3日は練習が必要とのこと。

キャンプの新定番に水切りはいかが?

水切りチャレンジ1投目のイトキン
撮影翌日、「イトキン、水切りいこ!」と誘ってくるキノピ先輩。それほど水切りは楽しく、年齢問わず、老若男女でお楽しみいただける魅惑なアクティビティ。

お子様と真剣勝負してみるのもいいのではないでしょうか? さて、これは余談ですが、じつは取材中、一投目の水切りでボイスレコーダーが水没。壊れちゃいました(泣)。皆さん、水切りをする際はポケットの中は空にしておくのがオススメです!

※水切りは、周囲に配慮しマナーを守って楽しみましょう

撮影:菊池貴裕 編集&執筆:GGGC

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イトキン

ファッション誌の編集者としてキャリアをスタート。現在は、紙媒体の編集はもちろん、ウェブメディアの運営やライティングにも携わる。古いものをこよなく愛し、今一番したいことは釣りで、欲しいものは船舶免許。

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