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一問即答

【一問即答】ストーブの専門家にみんなの疑問をぶつけてみた!

CAMP HACK読者のみなさんから集めた「実際どうなの?」を、専門家にド直球でぶつけるシリーズ第3弾!

今回は、冬キャンプの主役級ギアながら、正しく取扱わないとリスクも大きい、石油ストーブにまつわるナレッジ。あなたは正しい情報を、いくつ知っていますか?

目次

記事中画像撮影:編集部

専門家にド直球で聞きました

冬キャンの主役級ギアと言っても過言ではない、石油ストーブ。けれど、灯油を扱う燃焼機器だけに、間違った知識のまま使ってしまうと、命の危険にも関わってきますよね。

そこで今回は、専門家にド直球で質問をぶつける「一問一答」シリーズ第3弾 インスタグラムのアンケートに寄せられたみなさんからの質問に、詳しく回答していただきましたよ!

回答してくれるのはこの方!

株式会社トヨトミ 佐治 秀昭さん

トヨトミ佐治さんプロフ用

株式会社トヨトミで、長年に渡り暖房器具開発に携わる。現在はコールセンター長として、これまでの経験を生かして技術的な側面も含め、お客様からの問い合わせに対応。

今回、ストーブにまつわるさまざまな疑問に回答してくれるのは、アウトドアシーンに特化したストーブでお馴染みの、暖房器具メーカー「トヨトミ」の佐治 秀昭さん。

長年の暖房器具開発で培われたプロの知見から、早速お答えいただきましょう!

Q&A:石油ストーブのプロが回答

Q1.|テント内でストーブって使ってもいいの?

A.|メーカー推奨の使用条件を守ればOK

佐治さん:トヨトミとしては、テント内というのは室内と同じと考えています。燃焼させる以上、微量ながらも一酸化炭素は発生し、密閉空間では酸素が減って一酸化炭素が増えていく危険性が伴います。

ただし、それは換気によって回避できるので、換気を十分にして安全確保できていれば、一応、可能と考えております。

トヨトミ製石油ストーブの「取扱注意書チラシ」

出典:TOYOTOMI*トヨトミ製石油ストーブの「取扱注意書チラシ」より

また、テント内というのは狭い空間です。テントの幕体やガスボンベなど可燃物との距離が近いと火災や爆発の危険があるため、ストーブとの距離を十分にとるよう、注意してください。

メーカーが推奨する具体的な使用条件を確認し、適切に使用していただければと思います。

Q2.|テントの中で一酸化炭素中毒にならない方法は?

A.|十分な換気で防げます

佐治さん:やはり換気ですね。ご自宅の場合は、窓を5cmほど開けて5〜6分の換気でいいと思います。

一般的に家の窓は高さ1m以上ぐらいあるので、上部から暖かい空気が出て、下部から冷たい空気が入ってきて空気の循環が起こるからです。

ベンチレーション開けるシーン

出典:PIXTA

テントの場合も、できれば窓のように縦長に開くドアパネル部分、もしくは2箇所以上のベンチレーションを開けて、空間が小さいので2〜3分の換気でいいかと思います。

いずれも、1時間に1〜2回の頻度で行うと安心です。

Q3.|石油ストーブは乾燥しないってホント?

A.|Yes!石油ストーブは乾燥しにくいが…

佐治さん:外が寒い時期に室内が暖房で暖まると、窓ガラス表面の温度差によって結露が生じ、空気中の湿度が低下して乾燥します。

ですが、石油ストーブは、灯油を燃焼させる過程で水分が出るんです。つまり、もともとの室内の湿度に対してプラスの湿度が発生するため、乾燥しにくいです。

テント内で燃焼中の石油ストーブ

出典:PIXTA

これに対し、電気ストーブやエアコンでは、もともとの室内の湿度に水分がプラスされずに温度が上がるので、より乾燥しやすくなります。

ただし石油ストーブの場合も、結露などによる室内の湿度の低下が、燃焼時にプラスされる湿度を上回る場合は、どうしても部屋が乾燥してしまいます。

Q4.|石油ストーブ・電気ヒーター・薪ストーブ。コスパが一番いいのは?

A.|石油ストーブです

佐治さん:この中で言えば、石油ストーブです。石油ストーブと薪ストーブはそれほど差がないと思いますが、電気ヒーターはややコストがかかります。

具体的には、石油ストーブでは1kWの暖房出力で1時間使った場合、コストは約12円。電気ヒーターは、同じ条件の場合に約32円のコストが必要です。

電気ヒーターと石油ストーブ

出典:PIXTA

Q5.|家で使うなら、エアコンと石油ストーブはどっちがコスパいい?

A.|ケースバイケース。APFをチェック

佐治さん:これも、基本的には石油ストーブの方がいいと思います。ただし、非常にエネルギー消費の効率が高いタイプのエアコンも存在します。

その効率について、昔は「COP=エネルギー消費効率」、最近では「APF=通年エネルギー消費効率」という指標で表され、その値によっては、石油ストーブよりコスパが高い場合があります。

エアコン

出典:PIXTA

Q6.|テント内で、真ん中と端っこ、
どっちが早く暖まる?

A.|どちらでも同じだが、真ん中が安全

佐治さん:難しい質問ですが、これは、ストーブをテント内の真ん中に置くのと端っこに置くのはどちらが早く暖まるかという意味なら、どちらでも同じですね。

ただし、ストーブは熱いので、端っこに置くとテントが溶けたり火災につながる恐れがあるので、真ん中に置く方が安全ですね。

テント内中心にある石油ストーブ

出典:PIXTA

Q7.|みんな、ストーブの上にやかんや
鍋を置くけど、ダメってホント?

A.|天板サイズとのバランスによる

佐治さん:当社では、ストーブの天板より小さいやかんや鍋を置くことは、禁止していません。

ですが、振動や接触でやかんや鍋から熱湯がこぼれて火傷したり、ガラス製の外筒が割れたり、異常燃焼(立炎)の原因となるリスクはあります。

やかんを乗せた石油ストーブ

出典:PIXTA

また、吹きこぼれによりストーブの故障やサビの発生を起こす可能性もあり、使用には細心の注意が必要です。

さらに、ストーブの天板より大きい鍋ややかん、鉄板などの場合は、輻射熱でストーブ内部に熱がこもったり炎が横に伸びるなど、異常燃焼の危険があるため禁止しています。

Q8.|石油ストーブと石油ファン
ヒーター、どっちが暖かい?

A.|石油ファンヒーターが暖かい

佐治さん:これは、暖房出力が大きい石油ファンヒーターになりますね。また、暖かさだけでなく、燃料消費効率においても、石油ファンヒーターが優勢です。

石油ファンヒーター

出典:PIXTA

石油ストーブは人が室温を確認して手動で調整しない限り、一定の出力でしか燃焼しないのに対し、石油ファンヒーターは部屋が温まれば自動的に出力を制御し、燃料の消費を抑えてくれるからです。

Q9.|ストーブの上に置く扇風機は効果あるの?

A.|効果はあると思うが、推奨しない

佐治さん:先ほどお話ししたように、石油ストーブより石油ファンヒーターの方が暖房出力が高いことからも分かる通り、やはりファンによる効果はあると思います。

ただ、不安定な場所に置くことになるため、落として怪我をする危険があり、当社としては推奨していません。絶対に使わないでください。

対流用ファン

出典:PIXTA

Q10.|対流形と反射形があるけど、どう選べばいい?

A.|テントは対流形、家は反射形がおすすめ

佐治さん:テントで使う場合は、対流ですね。なぜかと言うと、対流形ストーブは空間を360°温められて真ん中に置けるからです。

端っこに置くと火災の危険性があるので、対流形を真ん中に置くのがいいと思います。

テント内の石油ストーブに当たる人

出典:TOYOTOMI

逆に、背面が平面になっている反射形は、背面が温まらず前面が暖まりますので、家で使うときには、壁際に置けるのでスペース効率が高いです。

暖かさでいうと、暖房出力が大きいタイプなら、どちらでも暖かいと思います。

反射型ストーブに手をかざず

出典:PIXTA

Q11.|灯油をどう持ち運ぶべき?

A.|色付きのポリタンクで携行すべし

佐治さん:ポリタンクで持ち運ぶようにしてください。そして、ポリタンクの中でも、灯油用の濃い色付きタイプを使っていただきたいです。

出典:TOYOTOMI

たまに、白など薄い色のウォータータンクでキャンプに灯油を携行・保管するケースを耳にしますが、これは絶対に止めてください。

灯油は紫外線で変質する恐れがあり、ポリタンクの濃い色は紫外線を遮断する役割があるからです。

Q12.|一酸化炭素チェッカーを使えば、就寝時も火をつけてOK?

A.|NO!就寝時は消してください

佐治さん:仮にテント内が隙間風だらけだとしても、やはり消してください

就寝時には夜露が生じたり、ましてや冬の場合は、テントに雪が積もったりして密閉率が上がってしまう危険性もあります。そうした非常事態も考慮し、消した方がいいです。

コット脇の石油ストーブ

出典:PIXTA

Q13.|灯油ストーブと石油ストーブは同じもの?

A.|Yes!同じものです

佐治さん:そうですね。これは同じものです。石油とは、ガソリンや重油、軽油、灯油を全て含む呼称です。その中でもより精製されたものが灯油なので、石油に含まれる訳ですね。

toyotomi

出典:TOYOTOMI

軽油と灯油は非常に似た成分で、ディーゼルエンジンやジェットエンジンに灯油が使えるケースも。ちなみに、灯油を車に入れて使うと脱税行為になりますので、絶対におやめください。

Q14.|石油ストーブってメンテナンスは必要?

A.|Yes!毎年の掃除とから焼きが必要

佐治さん:できれば毎年分解して掃除し、保管前にから焼きすることが大切です。

燃料が入ったストーブなら、最大燃焼で燃やし続けてください。消えるまで燃やし続けることで、しんに付いたタールが無くなり、翌年の使用条件がすこぶる良くなります。

逆にから焼きをしないとしんを痛めて翌年使えない可能性もあるので、から焼きは必須です。

分解された石油ストーブ

出典:Instagram by@toyotomi_japan

Q15.|石油ストーブを長持ちさせるためには?

A.|しんを下げすぎず、古い灯油を使わない

佐治さん:まず、あまりしんを下げすぎて燃やさないことです。これはしんを痛めることになるので、取扱説明書の炎の調整に関する箇所を見て、最適なしんの出具合を確認してください。

石油ストーブの芯

出典:TOYOTOMI

もう1つ、古い灯油(不良灯油)を使うのも良くないです。異常燃焼の原因となりますので、昨年の灯油が勿体無いからと使うのは極力避け、ガソリンスタンドで処分して新しい灯油を使ってください。

不良灯油とは

⚫︎前シーズンから保管状態にある灯油
⚫︎直射日光にあたった状態で保管した灯油
⚫︎ゴミや油、水といった不純物が混入していた灯油

Q16.|石油ストーブのベストな保管方法は?

A.|ケースで湿気のない場所に保管

佐治さん:空焼きしてホコリなど掃除したうえで、購入時の箱などのケースに収納し、かつ湿気のない倉庫や押し入れなどに保管していただきたいですね。

当社が販売している専用の収納ケースもオススメです。

専用ケースに入った石油ストーブ

出典:TOYOTOMI

Q17.|石油ストーブの場合、どんな異変があったら危険?

A.|炎の色が違ったり、ススが出たとき

佐治さん:まず、炎の色がいつもと違っていたら危険な可能性があります。あと、ススが出た場合もですね。

この2つとも、燃焼筒の変形や、燃焼筒の位置のズレに起因することが考えられるので、よく確認してください。もし危険を感じたら、すぐに消火してください。

燃焼筒の図解

出典:TOYOTOMI

正しく使って、ヌクヌクの冬キャンプを楽しもう!

テントに石油ストーブのある風景

出典:TOYOTOMI

石油ストーブに関するQ&A、正しい情報をあなたはいくつ知っていましたか? 

冬キャンプを暖かく快適に過ごすために不可欠の存在ながら、やはり一歩間違うと命の危険を伴う燃焼機器であることを忘れてはいけませんね。

この記事を参考に、ぜひ正しい使用方法を守って、ヌクヌクの冬キャンプを楽しんでくださいね!