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専門家にド直球で聞きました
キャンプにとって、切っては切り離せないナレッジの1つが、天気や気象に関すること。やはりどうせなら、快晴の下で自然を満喫したいし、大雨の設営・撤収は避けたいですよね……。
もちろん快適性だけでなく、安全性の担保という大前提にも関わってくるのが、お天気の情報。
そこで今回は、専門家にド直球で質問をぶつける「一問一答」シリーズ第2弾! インスタグラムのアンケートに寄せられたみなさんからの質問に、詳しく回答していただきましたよ!
回答してくれるのはこの方!
気象予報士 安齊 理沙さん
気象予報士。趣味の登山経験を生かし、登山者向け天気予報アプリ「tenki.jp登山天気」の企画・運用も担当。資格:気象予報士・防災士・熱中症予防指導員など
今回、お天気にまつわる質問に回答してくれるのは、「日本気象協会」に所属する気象予報士の安齊 理沙さん。
ご自身も登山やスキーなどアウトドアアクティビティが大好きという安齊さんに、早速、回答していただきましょう!
Q&A:お天気のプロが回答
Q1.|天気予報は何日前から信頼すべき?
A.|季節による。冬は安定しやすい
安齊さん:これは、時期によりますね。例えば、冬はすごく天気が安定しやすいんです。なので、2週間前から出ている天気予報でも当たる場合も結構あります。
一方で、春や秋の移動性高気圧が多い時期、夏や梅雨の時期、また台風が発生したときなどは、やはり天気予報がコロコロ変わってしまいます。
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なので、結論としては季節によるんですが、1〜2週間前ぐらいから天気予報が出たなら、もう当日まで、こまめに確認していただくことをおすすめします
Q2.|ゲリラ豪雨はなぜ予測が難しいの?
A.|積乱雲の発生が急激すぎるため
安齊さん:「ゲリラ豪雨」とは、気象庁の専門用語では「局地的大雨」と言います。
そして「ゲリラ豪雨」を含め、天気の予報というのは、世界各国のスーパーコンピューターや気象衛星、レーダーなどのあらゆるデータを計算して出しています。
けれど、「ゲリラ豪雨」を引き起こす原因となる「積乱雲」は、予測結果が出るのを上回るスピードで、早いときには1時間ほどで発生してしまうので、予測が難しいんです。
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一方で、発生の可能性が高い日はある程度分かっていて、天気予報で「今日は大気の状態が不安定です」などと表現される日は発生しやすいです。
そんな日はぜひ雨雲レーダーをこまめに確認したり、天気予報アプリで雨雲の通知機能をオンにしておくといいですね。
予兆として、急に辺りが暗くなったり冷たい風が吹いたりするので、安全な建物に避難していただければと思います
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Q3.|猛暑日のさらにその上ってあるの?
A.|公式の定めはないが…
安齊さん:気象庁では、最高気温が25℃以上の日を「夏日」、30℃以上の日を「真夏日」、35℃以上の日を「猛暑日」と定めています。
ですが、実はそれ以上の気温の日を公式な表現として定めていません。
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けれど、最高気温40℃以上の日は、毎年のようにあるのが現状です。そこで「日本気象協会」では、2022年から最高気温が40℃以上の日を「酷暑日」と名付けています。
ほかのメディアなどでもよく使われているので、一般の方にもだいぶ浸透してきているのではないでしょうか
Q4.|地震の予兆が雲に出るってホント?
A.|気象予報士としては、NO!
安齊さん:よく大地震の後などに「こんな雲が出ていた」という話を耳にしますね。
そこで、ある種の雲が地震の予兆と思われがちなんですが、気象予報士としては「そんなことはない」と言えます。
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ほぼ全ての雲は、発生のメカニズムが科学的に解明されており、原因が説明できるからです。
なので、「地震雲」は存在しないというのが気象予報士としての回答となります
Q5.|週末ばかり天気が悪いのは気のせい?
A.|気のせいとも言い切れない
安齊さん:例えば、春とか秋の移動性高気圧の谷が通過するタイミングというのが、だいたい3〜4日程度。
1週間は7日間なので、晴れが続く日と雨が続く日が、ちょうど1週間に当てはまってしまう週が連続することは、全然有り得ます。
そういう理由で天気が悪い週末が続くときはあると思います
Q6.|予報が当たりにくい季節はある?
A.|Yes!夏の午後は要注意
安齊さん:まず、春や秋の移動性高気圧が日本列島を通過するタイミングです。移動速度によってコロコロお天気が変わりやすく、天気予報が当たりにくくなります。
あとは、先ほどもお話ししたゲリラ豪雨も予測しづらいので、夏場の、特に午後のお天気が当たりにくいです。
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ただ一方で当たりやすい季節もあって、それは「冬」。冬型の気圧配置で多いのが、「西高東低」といって、日本列島の西側に高気圧、東側に低気圧がある状態です。
この場合、日本海側の豪雪地帯である新潟などは、すごく雪が降りやすいです。反対に太平洋側の関東地方などは、すごく晴れます。この「晴れ」に関しては、あまり予報が外れることがないですね
Q7.|雨女雨男って本当にいるの?
A.|科学的には証明されていないが…
安齊さん:いるんですかね〜 笑。科学的には証明されてはいないですね。
私個人の考えだと、行動力がある人はたくさん予定を組むし、予定当日が雨でも全然外に行く人が多いと思うんです。それで「雨女・雨男」とされてしまうのでは?
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逆に、実は私は「晴れ女」。というのも、よく登山にも行くのですが、ちょっとの雨でも嫌なタイプ。
自分の行動時間に雨予報が出ていたら行かないので、私が外に出るときは、大体晴れの日という訳です。
だからみなさんも、天気予報を駆使すれば意識的に「晴れ女・晴れ男」になることも可能かもしれません
Q8.|降水確率何%から雨具を携行すべき?
A.|ケースバイケースで判断
安齊さん:過去に日本気象協会で実施したアンケートでは、折り畳み傘の小型軽量化が進んでいることもあり、カバンに入れて常に携行する人が多いという結果でした。
私個人は、降水確率が10%だったら持って行かないです。30〜50%でも、夜中など自分の行動時間外なら持って行かないですね。
70〜80%の場合でも、1時間ごとの天気をしっかりチェックして、建物の中に居る時間帯なら持って行かないことも。
一か八かではあるけど、天気予報を駆使すれば、傘を持って行かない確率は上げられると思っています。
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ちなみに、意外と誤解されているのが、降水確率について。正しくは予報されている時間帯や日の、雨の量ではなく雨が降る確率を指します。
なので、降水確率80%でもすごく弱い雨だったり、逆に10%でも強い雨が降ることがあるので、気をつけてくださいね
Q9.|なんで、山の天気は変わりやすいの?
A.|地形が強く影響するから
安齊さん:山の天気が変わりやすいのは、その地形が大きく影響しています。
雲は、大気が上昇することで発生しますが、山の斜面に向かって風が吹くと、その風が強制的に上昇させられることで雲が発生し、さらにすごく発達しやすいために積乱雲になって雷雨になったりします。
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Q10.|気象庁と民間の天気予報はどう違う?
A.|民間サービスはより細分化している
安齊さん:まず気象庁は、日々の天気予報だけでなく気象警報や注意報、台風の進路予想など、国民の健康や安全を守るために重要な情報を提供するのが主な役割です。
それに対して民間の気象会社は、より多様化するニーズに応えるための気象情報を提供しています。
例えば市区町村ごとにより細分化した予報や、ピンポイントな地点の予報も提供するなどです。
さらに、洗濯指数や紫外線指数など、生活に密着した独自の気象情報なども提供しています。
なので、どちらも天気予報サービスを提供しているけれど、それぞれ違う任務・役割があるということですね
Q11.|日本で晴れが多い場所はどこ?
A.|北関東などの内陸の地域
安齊さん:昨年(2023年)の日照時間ランキングを社内で調べたところ、上位は内陸の北関東の地域、山梨県や長野県などでした。なので、この辺りの日照時間が多い地域は、晴れの日も多いと思います。
あとは、太平洋側の地域。
冬場にすごく晴れる地域なので、意外と静岡県も日照時間が多かったです。逆に、日本海側の地域や北海道は晴れの日が少ないです
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Q12.|風速何mぐらいがキャンプで危険?
A.|一概には言えない
安齊さん:風速何mだから危険というのは、一概には言えないと思います。
例えば、帽子が吹き飛ばされた風をしっかり感じられるのが、風速5mぐらいなんですよね。そして歩いているときに、ちょっと真っ直ぐ歩きにくいと思い始めるのが、大体風速10mぐらい。
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ただ、タープや焚き火は、風速わずか数mくらいで影響があると思います。
なので、そういった場合は風除けを設置したり、風を遮るものがある場所にテントを張ったり、設営の強度を高めるなどの工夫が必要だと思います
Q13.|雷鳴が聞こえたら落雷の射程圏内?
A.|YES!本当です!
安齊さん:雷鳴が聞こえるのは、気象条件にもよりますが、大体10kmくらいの圏内にいるとき。
そしてこれも条件にはよりますが、稲妻の長さというのが、大体10〜15kmぐらいなんです。
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なので、射程圏内というのは本当です。しかも、間に高い山や丘があると聞こえづらいので、実際にはもっと近い場合も。
雷鳴が聞こえたら、次の雷は自分たちに当たる可能性があると想定して、安全な場所へ避難されるのがいいかと思います
Q14.|夕焼けの次の日は晴れるって本当?
A.|YES!本当です!
安齊さん:これは本当です。まず、日本付近の大気は、西から東へ向かって流れます。
そして、太陽は西に沈むので夕焼けも西側に見えますが、夕焼けが綺麗に見える状態とは、自分と西側の空の間に雲などがなく、太陽の光がしっかり届いている証拠なので、晴れた空が西側にあることになります。
すると、その西側の晴れた空が翌日自分の方へ来るので、晴れることになりますね。
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Q15.|よく聞く天気の勘違い知識は?
安齊さん:いろいろありますね笑。例えば、台風の進路予想図に出てくる円を、台風の大きさだと勘違いされているケースはよく耳にします。
各予報円には日付も記載されていますが、その日付ごとに、円の中に70%の確率で台風の中心が入るというのを示しており、あくまで台風の中心の位置の予想範囲を円で表しているのであって、大きさや規模、強さを表すものではないんです。
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あと、よく聞くのは「快晴」・「晴れ」・「曇り」の認識についての勘違い。
実は、空をぐるっと見渡して「全天」を見たときに、雲の量が0〜1割のときが「快晴」、2〜8割なら「晴れ」、9〜10割あると「曇り」という明確な基準があります。
なので「これは快晴だ〜」と言う人に対して、「いや、これは晴れだよ」と言いたいな〜というときが、個人的にあったりします笑。
Q16.|キャンパーにおすすめの天気予報アプリは?
A.|個人的なおすすめは「tenki.jp」
安齊さん:いろんな天気予報サイトやアプリがありますが、個人的におすすめなのは、私が実際に運用しているアプリでもある「tenki.jp 登山天気」です。
一般的な天気予報サイトやアプリでは、市区町村ごとのふもとの天気予報しか出していないと思いますが、「tenki.jp 登山天気」は山の天気予報を専門としており、山の山頂や登山口の天気とか、あと登山ルートごとの天気まで確認できるのが特徴です。
キャンプ場って登山口や山の近くにも多いと思うので、山の付近でキャンプをされるなら、山専門のアプリ「tenki.jp 登山天気」を、ぜひお使いいただければと思います。
▼「tenki.jp 登山天気」はこちら
気象情報をうまく活用して、めざせ「晴れキャンパー」!
お天気にまつわるさまざまなナレッジ、あなたはいくつ知っていましたか?
すでに知っていたこともあれば、あらためて専門家に聞いてみて初めてよく理解できた、ということもあったのでは?
あなたもぜひお天気の情報をこまめにチェックして、「晴れキャンパー」を目指してみてくださいね!