価格の『高いテント』と『安いテント』の違いって何?開発者にズバリ聞いてみた!

2019/11/11 更新

テントの値段って、高かったり安かったりする。できれば安いほうがいいけれど、何だか高いほうがちゃんとしてそうだ。でも、ホントのところはどうなの……?そんなギモンを、今をときめく新鋭テントブランド「ゼインアーツ」の小杉さんにぶつけてみました!さて、納得のいく答えは得られるのか、乞うご期待!


記事中画像撮影:筆者

高いテントと安いテントの違いって何?

出典:PIXTA
キャンプを始めるにあたって最初に悩むところはテント選び。半年や1年悩んでまだどれがいいか分からない……なんて方もいるのではないでしょうか?

今回はテント購入の際に一番気になるポイント「価格」の謎に迫ります! 誰もが抱く素朴な疑問を、テント開発者の方に筆者山田が直撃してみました!

テント開発者に聞いてみた


今回、わかりやすく答えてくれたのがゼインアーツ代表の小杉さん。アウトドア業界歴は25年以上の大ベテランです。

ブランドを立ち上げる前もアウトドアメーカーで開発者としてキャンプ用品の開発に携わっていました。

「ゼインアーツ」の価格設定も気になるところ


小杉さんが手掛けるのが、今年4月のリリース以来、売り切れ店舗続出でなかなか買えない人も多い人気ブランド「ゼインアーツ」。

こちらの「高品質なのに手に入れやすい価格設定」の理由も気になるところです!


 テント「高額価格」の理由、疑問を徹底解明

それではまず、お高いテントの価格設定の理由に迫っていきます!

高額の理由①:生地スペックが違う


今回はテントの平均価格は10万円以上と、他社と比べて高額な価格設定なブランドのひとつ「ヒルバーグ」を題材に、小杉さんに解説してもらいました。実際に見て触ってもらったテントは、40万円する高額テント「アトラス」です。

山田
まず、テントの価格が上がる理由として、どんな要素があるんでしょうか?


小杉さん
大きな理由は、テントの生地スペックフレームの材質、本数です。もちろんそれ以外の細かい部分も関係しますが、一番のポイントはその2点ですね。


山田
では生地の方からお伺いします。今回は高いテントの代名詞的存在でもあるヒルバーグのアトラスを例に挙げていますが、安いテントと何が違うのでしょうか?


小杉さん
ヒルバーグはレベルが違います(笑)。極地用ということもあり、使う人の命を守る構造というのが大前提ですね。


山田
そもそも目的からして違うと。


小杉さん
そうです。ナイロンにシリコーンを浸透させたシルナイロンという生地を使っています。
軽さと強度を兼ね備えた素材ですが、かなり薄く滑りやすい素材なので、縫うのに時間と手間がかかるんです。


山田
たとえ製造過程での扱いが難しくても、命を守ることを重視した結果、強くて軽い生地を選んでいるんですね。


小杉さん
ちなみに「スタロン」というモデルに使用している生地は、引き裂き強度試験器でも測定ができないほどの強度を持っているんですよ。


山田
それはすごいですね(笑)。


小杉さん
さらに強いだけじゃなく、加水分解の原因となるPUコーティングがされていないので、何年経っても劣化がしにくいのは大きな特徴ですね。


山田
軽い上に破れず、加水分解しにくい……まさに理想的な生地!

当て布の「楕円」に秘密アリ!


小杉さん
細かいところですが、この当て布を見てください。三角形ではなく楕円形にしてありますね。


山田
これは何か意味があるんですか? てっきりデザインなのかと……。


小杉さん
縫うときの工程で、三角形は直線縫いなので簡単なんです。対して楕円は手間がかかります。


山田
どうして手間をかけて楕円にしているんですか?


小杉さん
これも安全性を高めるための工夫なんです。円形にすることで当て布にかかるテンションを分散させているんですよ。


山田
確かに三角だとテンションがトップに集中してしまいますね。楕円なら強度も上がって長持ちするということですか。なるほど!

高額の理由②:フレームが違う


生地周辺の凄さがわかったところで続いてはフレーム。あまり材質まで気にしたことはないかもしれませんが、比べてみると大違い!

小杉さん
高額テントのフレーム素材は大きく分けてカーボンとアルミ合金の2種類です。カーボンは万が一折れた時に先端が尖り、生地を破いてしまう可能性があるので、ヒルバーグはジュラルミンを使っています。


山田
なるほど、カーボンのほうが軽いからいいのかな?と思っていましたが、一概にそうとは言えないんですね。アルミ合金にも種類があるんですか?


小杉さん
番手は6000番台と7000番台がメジャーですね。このヒルバーグのアトラスはA7001というジュラルミンを使用しており、軽い上に強いです。飛行機の機体で使われている素材と同じですね。


山田
なんと! 飛行機の素材がテントに使われているなんて驚きです。

強さと低価格の両立


小杉さん
フレーム構造は交差点が多いほどテントの強度が増すと言われていますが、そうすると本数が増えてしまい、値段も跳ね上がってしまいます。


山田
強くすると値段が高くなる……うーん、なんとかなりませんか。


小杉さん
ですよね。最小のフレーム本数で最大の強さを発揮する構造を生み出すのが理想的で、それがデザイナーの仕事だと僕は思っています。
実際、ヒルバーグのトンネル型テントは交差点がありませんが、フレームを固定する構造で耐久性を上げています。


山田
なるほど、奥が深いですね。

高額の理由③:ディテールが違う


テントの価格が上がる理由として「テントの生地スペック」と「フレームの材質、本数」を紹介してもらいました。この2点のほかにも、アトラスを触って気付いた「こだわり」を教えてもらいましょう。

なかなか気付かないような細かいディテールにこだわっているのも、値段の高いテントの特徴なのだそう。

小杉さん
例えばテントとフレームをつなぐ、このフック。まず、こんなにあるの?とツッコミたくなるほど数が多いです(笑)。


出典:Hilleberg
山田
あ、本当だ。かなり太いフックが短い間隔で配置されていますね。他のテントではなかなか見ない数です。


小杉さん
そうなんです。この無数にあるフックがフレームの歪みを最小限にして耐久性を保持しています。さらに一つ一つの向きが逆になっているので、どんな環境でも外れにくいように考えられていますね。


山田
これは気が付かなかった! 確かに相当な手間暇がかかっていますよね。

お高い理由が分かった!

高いテントの理由が生地とフレーム、意外と気づかない細かいパーツの作り込みにあるということがわかりました。

ヒルバーグに関して言うと日本ではちょっとオーバースペック気味かもしれませんが、誰もが憧れるテントだからこそ一度は使ってみたいですよね。

お値打ちテントにも良さがある!


一方で、ロープライスに設定されているテントはどうなのでしょう。

小杉さん
価格の安いテントをヒルバーグと比べるのはちょっと酷な話ですが……。簡単に言うと高いテントの特徴で挙げた生地とフレーム、細かい作り込み部分のスペックやコストを下げているということになりますね。


山田
極端な質問になりますが、下げているということは、あまり買わないほうがいいということなんでしょうか……?


小杉さん
いや、テントの選定は目的に合わせておこなうべきなので一概にそうとは言えないんですよ。年に1回しかキャンプに行かない人が何十万もするテントを買う必要はありませんし。


山田
なるほど。


小杉さん
雪中キャンプを好む方が激安テントを使うのは危険なので、ちゃんとした作りのテントを選ぶ必要があるのと同じです。


山田
自分のスタイルに合ったテントを見つけるのが大切だということですね!

安かろう悪かろうとは言えない


小杉さん
お手頃な価格のテントは、市場に出回っている安定した価格の生地を使っています。フレームだって、飛行機と同じものじゃなければダメという訳ではなく、そのテントの適正に応じて強度と価格のバランスの取れた物を選んでいます。


山田
でも、そういうお値打ちものを選ぶと雨漏りしたり、フレームが折れたりしませんか?


小杉さん
極端に安価なものは注意が必要かもしれませんが、メジャーブランドの製品であれば、そのシチュエーションに応じたベストな品質の素材を選定していると思いますので、製造上の欠陥でない限り、そういった事がすぐに起こる事は無いですよ。もちろん、その性能を越える自然現象に見舞われた場合は別ですが。


山田
単純に”安い=悪い”ということではないんですね。

スペックと値段をしっかり考えて選ぼう!


テントは用途や目的に見合った構造とスペックによって値段設定もさまざまだということが分かりました。

これからキャンプを始めるという方は、家族構成やキャンプに行く頻度などをしっかりイメージしてから購入するのがよさそうです。


ゼインアーツの挑戦

山田
小杉さんが手掛けるゼインアーツのテントはスペックに対して価格が手頃な気がするのですが、どうやってそれを実現させたのでしょうか?


小杉さん
企業としてアウトドアを普及させ、社会貢献するためには価格を下げるのが一番いいことだと考えました。いいテントを安く買えるのに越したことはないですからね。


山田
それは嬉しい。


小杉さん
軽くてコンパクトな製品を開発して、それを適正価格で提供することで、よりアクティブにアウトドアを楽しむ人が増えるんじゃないかと考えています。


山田
確かに今はいいものは高い、というのが当たり前の価値観になってきていて、僕もキャンプ用品を買うときは、財布と相談して泣く泣く諦めることが多い……。


小杉さん
製品を開発する企業として、やるべき事とやらなくてもいい事をしっかり考えて、余計な出費を抑え、なるべく物作りに専念する体制を作りました。それが価格を低く設定できた大きな要因です。


山田
そういう工夫の結果なわけですね。


小杉さん
アイテムの質も価格帯も、本当の意味での日本の新スタンダードを作りたいと考えています。アウトドアを愛する人たちに寄り添えるブランドとして、一緒に楽しみながら物作りをしていきたいですね。

ゼインアーツの今後の展望


山田
まだゼインアーツのテントを手に入れられない方も多くいると思いますが、次に作るものは決まっていますか?


小杉さん
来年新しいテントをリリースするかはまだ未定です。アウトドアの総合メーカーを目指しているので、次はキャンプ用ギアかもしれませんし、登山用品かもしれませんね。


山田
それは楽しみ! キャンプだけでなく登山用品も作るのかな、なんて勝手に期待してましたから(笑)。


小杉さん
ありがとうございます。松本が拠点なのですが、晴天率がものすごく高いのでフィールドテストもしやすいんですよ。長野は山もフィールドもダイナミックなので、物作りするには本当にいい環境ですね。これからのゼインアーツを楽しみにしていてください。


ゼインアーツのHPはこちら

「高い」と「安い」の理由が分かった!


高いテントと安いテントにはそれぞれしっかり理由があるということがわかりました。そして、ゼインアーツの小杉さんの値段への想いも伝わってきました。

自分のキャンプスタイルをイメージしつつ、自分にあったテントを選んでアウトドアを思い切り楽しみましょう!


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山田昭一

ファッション、アウトドア業界での経験を生かし、フリー転身後はライター業やブランドディレクション、PRに携わる。休日はキャンプを中心に釣りやサーフィンを楽しむなど本格的なアウトドアに傾倒。

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