「海外グランピング事情」と「スノーピークグランピングが考えるグランピング」 そして二人が語る今後の国内グランピングスタイルとは?
株式会社リゾートコミュニケートデザイン 代表取締役 加藤 文人氏
2015年がグランピング元年。市場は2020年まで拡大し50か所から100か所になるであろう。玉石混合のなか優勝劣敗がありつつ、日本におけるスタンダードの確立、グランピング文化が日本に根付いていけるかの正念場がこの2、3年だと考えられる。
ここまでのフェイズ1はキャンプ場の進化版であった。フェイズ2は宿泊業の本業、アウトドアメーカーが本格参入してくる。
中でも「地域活性型」が増えていくだろう。注目のインバウンドを呼ぶにしても宿泊のキャパシティは各地簡単には解決されない。ホテルなどをこれから建てるのは難しいが、グランピング施設なら対応しやすい。
企業向けの英国グランピングのショーが9月にあった。129社が出展。「ホットタブ」など様々な施設形態が注目された。イギリスの関係者曰く、このトレンドはまだまだ黎明期であり、この先も伸び市場に不安はないという。アメリカ市場開拓を含めて、10年に一度の宿泊トレンドだとも言っている。
日本におけるグランピング参入のポイントは何か?
そもそもグランピングがグランピングたる理由は、宿泊と飲食を「体験」にしたこと。これを忘れてはならない。トレンドだからグランピングを入れようというのは一番曖昧。
キャンプ場のコンセプトをよく鑑みたうえで、自分たちが何を体験させたいか、何を持ち帰ってもらいたいのか、その「選択肢」としてグランピングが必要なら導入すべき。
グランピング導入をキャンプ場が議論することで、キャンプ場のコンセプトを洗い直すいいタイミングにすればいいと思う。
株式会社スノーピークグランピング 代表取締役社長 村田 育生氏
キャンパー市場はわずか6%だ。非キャンパー市場は94%もある、これをどう見るか?ここに対応していかなければいけない。そして、今年の1月にスノーピークグランピングが設立した。
スノーピークはモノの提供、当社はバリュー=体験の提供をしているのが違いになる。モノ=点が面になるとライフスタイルとなり、それを立体的したことがコト=価値だ。スノーピークが考えるグランピングは、自然という舞台で贅沢をすることではなく、偉大な自然を”取り込み”、体験すること。
グランピングとキャンプの違いを個人的に言えば、自然を楽しむことは同じだが、自然の取り込み方が優しいのがグランピング、そうではないのがキャンプだろう。”グランパー”(=グランピングを体験する人のこと)はキャンパーではない。ビジネスとして大事なのはそこを分けて考えること。
この先グランピングを支える人材も大切だ。「グランピングアカデミー」でホテルマン同様”グランピングマン”を育てていこうという考えも持っている。現状千差万別でもあるグランピング施設の格付けも行い整備していく必要もある。
重要なことは一貫性。作り込み過ぎない、サービスをし過ぎない、期待させ過ぎない。我々は自然に鈍感になっている。それにはいろいろな見方が出来る”媒体”が必要。スノーピークグランピングはその媒体のひとつとして役目を担っていきたい。
【セッション】アウトドアの未来
コールマンジャパン株式会社 マーケティング本部 マーケティングディレクター 根本 昌幸氏
『子どもの未来』
「コールマンのビジョンは「アウトドアで「家族」「仲間」「自然」が触れ合うことで生まれる心のつながりを大切にする」で、自然体験の中でつながりを持つ機会をこの先も増やしていかなければならないと思っています。
その中、「震災の直後「未来を照らそうプロジェクト」がスタートしました。震災支援・防災サポート、環境保全の取り組みはもちろん、子どもへの自然体験機会の提供をさらに力を入れています。
同時に、なぜ自然が子供を成長させるのに必要なのかを説明しなければならないと考え、本日いらしているC.Wニコルさんや尾木ママなどにもご協力いただき、様々な形でご紹介させていただいています。
「未来を照らそうプロジェクト」ではキャンプカレッジ、冒険トレック、グリーンカレッジなどを展開中です。不思議なもので、それらから帰ってくると子どもたちが活き活きとした表情になり、家のお手伝いを進んでするなど積極的な協調精神が出てくるようになった、という親御さんの感想も多くいただいています。
私たちはもともとハードのメーカーですが、その正しい使い方、キャンプの正しいやり方、またマナーなど、きちんと説明していくことも私たちの役目だと思っています」
八女市集落支援員 森 庄氏
『地域の未来』
「八女は水と緑がたいへん豊かなエリアです。笠原は八女茶発祥の血として有名です。しかし平成24年の九州北部豪雨では九州でも最もダメージを受けたエリアで、この地域の集落の復興も私のミッションとして課されました。
山のことをもっと知ってもらいたい。いろいろな人に関わってもらいたい、そう考えた時、山奥の空き家を改修してゲストハウスにしました。バックパッカーや海外の旅人、お茶に興味がある人に泊ってもらっています。
ここを拠点にクリエイティブを誘発する企画「ヤマベリング」を始めました。山で輪になって山辺の未来を考えようというもので、フィールドワークやブレストをしながら地域資源を巡ってもらっています。こうやって若い人たちとの育みを大切にしています。
キャンプ場の再興にはスノーピークさんにもお願いしてモニタリングキャンプを行い、地域の方、行政の方、設計の方に加わっていただき、基本構想や、この地域の強みと課題を現場で考え取り組んでいるところです。
田舎って、言い方は悪いのですが、ある意味マンネリしています。実は新しいアイデアを欲しています。都会から来る方がそれを運び、そして地域の方が受け入れてくれることで新しいことが始まっているのです」
一般財団法人C.W.ニコル・アファンの森財団 理事長 C.W.ニコル氏
『日本の未来』
「ボクは日本の未来を心配している。自然欠乏症候群。子どもたちは五感を使って自然の中で遊ばないと、発達するべき脳が発達しない。そのままで育つと、判断力が鈍くなる。恋に堕ちられない。ITが進むほど心悩んでいる人が増える……。
これを治せるのは薬じゃないよ、「自然体験」です。
みなさんが、あなた方が、子供たちが未来。明るい未来を創るなら、自然からいろいろなことを感じなければ。このままじゃ、日本が日本じゃなくなっちゃうよ。
55年前、僕は子どもから自然を学んだ。「ミーンミーンミーン」僕はこれを知らなかった。8歳の子供がね「セミだよ」って。虫があんな大きな声を出すのを信じられなかった。みんな子供が教えてくれた。以前、子どもはそういう場所にいたよね。
街の中では電気で何でもできるようになった。でもね、自動的に与えられるだけじゃ……。言葉が悪いけど、これじゃあ家畜になっちゃうよ。独立精神とか、本当の愛は、自然の中でステキな人たちと経験して欲しいのね。みんな明るくなれる。 Adventure means go out to new wind. 冒険は若い男だけじゃなくて、家族で経験すれば幸せになれるよ。
これだけの自然と文化があれば、日本風のアドベンチャーを作るのは大いに可能です」