きたるべきハンモック・ブームにむけて
これまでご紹介したように、アメリカやヨーロッパではハンモックが実用的なアウトドアギアとして定着しつつあります。
いつまでも「ハンモックってあくまで雰囲気の道具だよね」と言っているようだと、日本はこの新しいムーヴメントに乗り遅れてしまうでしょう。
第1回でお伝えしたように、日本の自然環境はハンモックに適しています。わざわざ森を切り拓き、斜面をならしてキャンプ場を作らなくても野営ができるようになれば、自然環境へのダメージも大幅に軽減できるはず。とはいえ、それはまだまだ理想論です。
日本ではハンモック泊に対する理解の問題だけでなく、山岳地での幕営に関する様々な問題も絡んできます。「どこでハンモックを張ればいいのか」と問われたら、現状ではオフィシャルな答えは簡単にお伝えできません。
しかし、使い方を問わざるをえない状況は、裏を返せば試行錯誤のおもしろさをたっぷり味わえるということでもあります。どこでどのように使えば他人に迷惑をかけずに楽しく過ごせるのかを、自分で探していく。
これは十数年前のULハイキングの状況とも似ています。世間的に評価が定まった遊び方をなぞるのではなく、自ら開拓する楽しさを味わえるのです。
ハンモックは日本中どこでも地域格差なく楽しめるギアです。今まで魅力を感じなかった近所の裏山も、ハンモックを張ってみたら意外とおもしろいかもしれません。
そうすれば、わざわざ遠くの山に出かけて、混雑したキャンプサイトでテントを張らなくても、日常からちょっと道を外れるだけで、自然のなかで寝泊まりする楽しさを味わえるようになる。
「アウトドア=山」という認識すらくつがえして、身近な自然を魅力ある遊び場に変える可能性が、ハンモックには秘められています。
だからこそ、まだハンモックの黎明期にある日本ではいちはやく動きはじめたユーザーひとりひとりが自分たちの遊び場を守るためのリテラシーを強く意識する必要があります。
いまハンモックを手にすれば、こうしたルールづくりの醍醐味も含めて、新しいムーヴメントを第一線で切り拓いていくおもしろさを体感できるはずです。
curator/土屋 智哉
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