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クラシカルな9ホールのアンクルブーツ

『BESPOKE HUNTING BOOTS』~質実剛健、フルハンドメイドのビスポーク靴~

雑誌「HUNT」とのコラボレーション企画第16回。HUNT編集部がブーツ専門のビスポークシューメーカー『T.Shirakashi』への取材した際の記事を紹介します。

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比類なき、妥協のない靴づくり

ある日、HUNT編集部の電話が鳴った。電話の相手は、カントリースタイルを追及した、ブーツ専門のビスポークシューメーカー『T.Shirakashi』を主宰する白樫徹哉さん。

『T.Shirakashi』を主宰する白樫徹哉さん

白樫徹哉さん
元グラフィックデザイナーという異色の経歴を持つ靴職人。30代でビスポーク靴に感銘を受けて脱サラ。専門学校を出た後、紳士靴職人に師事。2015年にT.Shirakasiを立ち上げた。
http://www.shirakashi.jp/

その電話の内容とは、彼の作るブーツをフィールドで履いてくれる人を探しているというものだった。ネタに飢えたHUNT編集部としては、これは願ってもない機会。すぐにサンプルを見せて頂く運びとなった。

……ゴトンッ。白樫さんがシューバッグから取り出したのはロングシャフトのレースアップブーツ。ヨーロッパの服装史的な本でしか見たことのないような、見事な靴だった。「実際に野山歩く事を想定してつくったもので、こんなに長いブーツをビスポークで作っている所は国内では他にないと思います。このようなハンティングブーツをどなたかにお仕立てして、実際に使って検証して頂き、改善点などをフィードバックして欲しいのです」 編集部がフィールドテスターとして選んだのは、弊誌ではお馴染み、鳥類保護連盟の室伏友三さん。野鳥観察で日々山に入っている室伏さんなら、きっとこのブーツを履きこなしてくれるだろうと考えたのだ。

通常T.Shirakashiでは、採寸とデザイン決定の相談をした後、数か月をかけて木型、仮縫い靴の制作を行い、仮縫いのフィッティング。その後数か月かけて本制作に入るという工程を踏むため、採寸から納品までは約3~6か月の時間を要する。

今回は、最初の採寸とデザインの打ち合わせの為、座間にある白樫さんのアトリエにお伺いした。

白樫さんが手掛けたハンティングブーツのサンプル

白樫さんが手掛けたハンティングブーツのサンプル。美術品のように美しい姿だが、これを実際に使ってほしいという事で、野鳥研究科の室伏さんに白羽の矢が立ったのだ。

作業場で談笑する白樫さん
トリッカーズやオールデンも愛用している室伏さんだが、ビスポークシューズを作るのは今回が初めての体験だという。

採寸をする白樫さん

「ビスポークシューズってこんなに細かく採寸するんですね。左右の足でこんなに違いがあるのかとビックリしました」

室伏さんの健康的な足を採寸している様子
毎週10キロのランニングをこなし、毎月富士登山をしている室伏さんの健康的な足を、甲の高さまで細かく測定。左右で違う足をどう靴に収めるかが腕の見せ所。

採寸した後のスケッチ
加齢とともに普通は偏平足気味になるが、室伏さんは土踏まずのアーチがしっかり出ていることがわかる。この後、シャフト部分にあたるふくらはぎも測定した。

イギリス製のコテ
ずらっと並ぶのはイギリス製のコテ。これはアイロンのように熱して革に蝋を浸透させるためのもので、靴職人に欠かせない道具の一つ。

イギリスの老舗タンナーJ&Fベイカー社が手がけるオークバークという耐久性に優れたレザー
ソールにはイギリスの老舗タンナーJ&Fベイカー社が手がけるオークバークという耐久性に優れたレザーを使用。硬く、縫い合わせる時は泣きたくなるほど大変だとか。

イギリスで出版されたブーツ作りの教科書
参考にしている昔イギリスで出版されたブーツ作りの教科書。今では使われなくなった縫い方や素材選びのポイントなど、勉強になることも多いという。

クラシカルな9ホールのアンクルブーツ
T.Shirakashi定番のアンクルブーツはクラシカルな9ホール。同モデルは42万円〜で仕立てることが可能(専用シューツリー付)。

「一般的なビスポークは、履く人の好みやスタイルでデザインを決定しますが、カントリーブーツの場合はデザインからでなく、どんなフィールドで使いたいかという、用途を聞いて作り上げていきます。ドレス靴より、ブーツの方が運動することを考えて作られているので、知られていないですが、実はブーツ程ビスポークにした方が良いんですよ」

相談の上決まったのは、ストラップ仕様ハンティングブーツ。アッパーにはベジタブルタンニンレザーを使用。ソールは通気性を考えたレザーにすることが決まった。これから仮縫いが行われ、実際にブーツが生まれていく。次回は仮縫いフィッティングの模様をお伝えする予定だ。

写真: Soichi Kageyama 文: Junpei Suzuki

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