撮影:編集部 提供:ゼインアーツ
今年もゼインアーツが攻めてきた
まだまだ残暑が厳しい時期ですが、ゼインアーツの新作テント情報が着弾! そして今回、一般情報公開に先駆けてCAMP HACK編集部による独占取材が実現。
数々の先鋭的なテントをリリースしてきた同ブランド。今回の新作も、「まじか…!」と鼻息荒くなるような仕上がりになっていました。
最後まで要チェックです!
「ありえない価格です」
超コスパなテントが登場
その名も「ウータ」
新作テントの名前は「WOOTA(ウータ)」。サイズ違いの「ウータ S」と「ウータ L」の2種類展開となっています。
デザインと機能もさることながら、特筆すべきはその価格。
・ウータ S:39,800円(税込)
・ウータ L:59,800円(税込)
TC素材で、インナーテントも付属でこの価格とは……。昨今のキャンプ市場では信じられないコスパモデルです。
開発者でもあるゼインアーツ代表の小杉氏も「正直、ありえない価格設定です」と語る本作。テントの特徴とともに、開発に込めた想いを余すことなくお伝えします。
「ウータ」はどんなテント?
【特徴1】初の秋冬向け2ルームテント
生地にTC素材が使われているように、「ウータ」は秋冬向け2ルームモデル。
昨年、化繊モデルだった「ぜクー」「ギギ」にTCバージョンが追加され話題になりましたが、今作は、いきなりTC版がリリース。
ゼインアーツとしては、初のパターンです。
秋冬向けモデルということで、全周にスカートも完備。泥など付着して汚れやすい部分なので、ここだけはお手入れしやすいポリエステル製なのも親切です。
さらに、正面ドアパネルのジッパーは凍結しても開きやすい「ビスロンジッパー」を採用がされています。
バックパネルにはダブルではなくトリプルジッパーを装備。自己責任にはなりますが、薪ストーブの煙突などを出しやすい構造になっています。
「キャンプ熟練者にこそ使ってほしい」と小杉氏が語るように、テント内に籠る時間が多い秋冬のキャンプシーンを想定して開発されたテントです。
【特徴2】 ベースはワンポール。グワっと広がる視界が特徴
「ウータ」のデザイン的な特徴は、テント内部から外を見渡したときの視界の広さ。
TC素材の遮光性を活かし、中は暗くて外は明るい。日本建築の陰影美を思わせる風景が、ゆるやかな多角形のパノラマで広がります。
構造のベースはテント中央にポールを差し込むワンポールテント。そこから、開口部にエクステンションポールを追加し、入り口を大きく持ち上げます。
人気作である「ぜクー」や「ロロ」を踏襲したゼインアーツらしさは健在。幕内で過ごす時間の長い秋冬キャンプにピッタリのテントといえます。
【特徴3】フルオープンでも「守られている」安心感
フルオープン
フルメッシュ
フルクローズ
「秋冬用」として開発されたこのテントの肝の一つが、内側へオーバーハングしたフレームワーク。
エクステンションポールが垂直ではなく、内側へ入り込んでいることで、屋根が大きく張り出すフォルムになっています。
これが軒(のき)のような役割を果たし、雨がテント何に吹き込むことを防ぎます。
雨が降ってきたら、テントのドアは閉めるのが一般的ですが、「ウータ」に関しては、フルオープンでも守られるような安心感があります。
テント内に篭りながらも、景色を楽しめるという不思議な感覚を味わえる幕なのです。
【特徴4】バックパネルからの眺めも抜群
バックパネルにもひと工夫が。こちらフルオープン・1/3オープンが可能なうえにメッシュ付き。インナーテントのドアパネルとも連動しています。
こんな風に、寝転がって頭上の景色を眺めることも。星が綺麗に見える秋冬は、満点の星空を眺めながら寝られるのもいいですね。
【詳細チェック】
「ウータS」と「ウータL」どっちがいい?
ソロ〜デュオなら「ウータ S」
「ウータ S」は1人〜2人が使うのにちょうど良いい大きさです。
チェアの後ろやサイドにはギアボックスなどが置けるスペースもあり、2人までなら十分快適に過ごせるリビング空間が確保されています。
インナーテントに、身長約165cmの編集部員が寝てみました。奥側はやや幅が狭くなっており、大人2人でぴったり。
広すぎることもなく、ゆったりソロにも最適なサイズ感でした。
収納サイズ。一般的な2人用2ルームテントよりもやや大きめな印象
- ●サイズ:最大幅335×最大奥行き370×最大高200cm
- ●材質/生地:フライシート/TC(コットン&ポリエステル混紡素材)・撥水加工、スカート・トップキャップ/210Dポリエステルオックス、インナーテント/ウォール:68Dポリエステルタフタ、ボトム:150Dポリエステルオックス・PU加工(耐水圧1,500mm)
- ●材質/フレーム:アルミニウム(A6061)
- ●発売時期:2024年9月下旬頃
- ●価格:39,800円(税込)
家族で使うなら「ウータ L」
中間のMサイズがなく、「ウータ L」はいきなりビッグサイズに。リビングスペースもテーブル1台にチェア4脚が余裕で並ぶ、広大さです。
最高部は270cmあるので、背の高い人でも立ったままの作業や移動がノンストレス。
インナーテントもこの通り、4人ならゆったりと、詰めれば5人は寝られる大きさです。奥行きも250cmあるので、足元や頭上付近に荷物を置くスペースもしっかり確保。
秋冬シーズンに家族でお篭りキャンプを楽しんだり、インナーを外してグループの宴開幕として使うのにもピッタリなテントです。
「ウータ L」だと片手で持ち上げるのは少し辛い重さ
- ●サイズ:最大幅485×最大奥行き570×最大高270cm
- ●重量:
- ●材質/生地:フライシート/TC(コットン&ポリエステル混紡素材)・撥水加工、スカート・トップキャップ/210Dポリエステルオックス、インナーテント/ウォール:68Dポリエステルタフタ、ボトム:150Dポリエステルオックス・PU加工(耐水圧1,500mm)
- ●材質/フレーム:アルミニウム(A6061)
- ●発売時期:2024年9月下旬頃
- ●価格:59,800円(税込)
「矛盾に挑戦しました」。小杉氏が開発に込めた想いとは?
──ズバリ、「ウータ」の一番の魅力は?
小杉:ここはもう、どストレートにコストパフォーマンスですね。
やっぱりこのスペックでこの値段(39,800円〜)は、「本当にこれで良いのか?」と自分でも迷うくらいの価格設定です。
同じ価格で、昨年「クク」というテントをリリースしましたが、今回の「ウータ」はそれ以上にコスパに優れていると思っています。
見てわかる通り、「ウータ」は多角形の複雑な形状しています。秋冬用を想定すると、このデザインは譲れない。でも、コストは下げなくてはいけないと。
工場とも、どうしたらこの価格が実現するかを話し合いながら、もう、詰めに詰めて開発しました。
──TC素材の2ルームテントで、この価格は本当に驚きです
小杉:正直、無理をやってのけたのが「ウータ」なんです。
最初、新作テントの概要を伝えたときに、製造現場からも「いや、小杉さん、言ってることが矛盾してますよ」と言われたくらいで。
コストを下げること自体は簡単なんです。
フレームをシンプルに作って、素材も少しランクを落とすとか。あと、メッシュパネルを少なくして、機能を削ぎ落としていくとか。
でも今回の新作は、とにかく機能を付加したい。でも安くするという、絶対ありえないことをやりました。
ゼインアーツを発足してから6年が経ち、工場との付き合いや、自分たちがオーダーできるロット感など、色々なことを勉強してきた今だからこそ可能なモデルです。
──キャンプギアの値上げが続く中、コスパを重視した狙いは?
小杉:「良いものを適正価格で」。もともと、ゼインアーツはそういう想いで製品を作ってきました。
正直、値段を考えなければ、良いものは誰でも作れちゃうんですよ。
コストを無視して、機能をどんどん付け加える。結果的に、高価なギアが生まれましたって。これは誰でもできますよね。
そこを安くするために、考えに考え抜いて、理想の価格に収めていく。それが私たちプロの仕事だと思っています。
あと、売上げばっかり気にしてると、逆に付いてこない気がして……。
ブランドを立ち上げた当初から、皆さんに喜んでもらった分だけ返ってくる感覚があります。
まずは身銭を切るということですね。自分たちがギリギリまで利益を圧縮して、キャンパーの皆さんに還元していく。
そうすると、自ずと評価されて、自分たちの想定以上に売れたりするんですよ。
この感覚を信じて、愚直に今でもやっている。今回の「ウータ」もその延長線にあります。
──「ウータ」の開発イメージはどこから?
小杉:最初からイメージは秋冬でした。雨や雪が降る中で、テントに篭るというか。外的要因から守られながら、外の景色をちゃんと眺められる空間をイメージしていました。
それを実現するために、ドアパネルを横一直線に大きく繋げたり、雨が振り込まないように、屋根部分をオーバーハングさせています。
ちなみに「ウータ」は漢字で「樹樹」と書きます。
森林の中で、紅葉の葉っぱがパアーって舞っていて、それを眺めながらテント内でコーヒー飲む。そんなシチュエーションを考えながら作りました。
──同価格帯の「クク」と迷う人も多そうです。「ウータ」はどんな方におすすめですか?
小杉:同じ価格帯でも「クク」の場合は、ポリエステルの化繊モデルなので、これからキャンプを始めたいという方におすすめしたい製品です。
2023年秋に発売され話題になった「KUKU(クク)」
一方「ウータ」は、設営の仕方もちょっと特殊だったり、わりと複雑な製品。
あと、TC素材なので、重かったり完全防水でもありません。土砂降りのときの雨水の染み込み対策など含め、扱い方を理解していないと使いにくい部分があります。
どちらかというと、ある程度キャンプに熟練された方が楽しんでいただけるプロダクトだと思います。
最後に、ゼインアーツの今後の展望を教えてください
小杉:機能性とデザインを両立させながらコスト面も追求し、みなさんが本当にいいと思う、欲しいと思うモノを形にする、そこは当初から変わらない軸です。
今後の展望についても特にリミットは設けていません。今年は、初めて「YAR」という山岳テントもリリースしました。今は、キャンプ用ソロテントの構想なんかもなんとなくあったりします。
ギアを通じてみなさんをアウトドアへお連れし、自然の素晴らしさを体験していただくことが我々のミッション。それに続くことなら、どんどんトライしていきたいですね。
ゼインアーツが到達した“今”が結晶したテント
秋冬シーズンにフォーカスし、幕内でも外の景色をゆったり眺めて過ごせるデザインの「ウータ」。
普通ならコストが上がる機能性を随所に付加しながらも、“爆安”な価格設定で、まさに“今”のゼインアーツが結晶したテントと言えます。
実際に幕内でしばらく過ごしてみた筆者は、大きな樹の下で守られているような安心感がありつつも、外の風景を常に眺められる開放感というギャップがとても印象的でした。
この秋冬、TC素材のテントを探しているなら、間違いなくチェックすべき新作テント2種。
発売は9月下旬頃を予定しているそうなので、ぜひ公式サイトやインスタグラムをチェックしてみて下さいね。