ogawaのテントを変えた立役者
ogawaは今年で創業110年を迎える、日本発の老舗アウトドアブランド。
直営店は全国で20店舗以上を展開し、2022年には千葉県柏市に直営キャンプ場「ogawa GRAND lodge FIELD」をオープンしました。
もともとは日本軍用のザックやテントの製作からはじまったogawaブランド。
防災用品や業務用品の取り扱いも多く、2000年代からはレジャー用品の開発にも注力し現在に至っています。
2016年に社名がキャンパルジャパンに変わってからは、画期的なテントを次々と発表。アポロンやグロッケといった大型幕は、ogawaの新アイコンとして多くのキャンパーに人気のテントです。
「アポロンとグロッケは、僕が開発した商品です」
颯爽と現れたのは、キャンパルジャパン株式会社 商品企画・宣材部 次長 /Art Directorの大木秀樹さん。
20年間、広告業界でデザイナーとして活動した後、キャンパルジャパンに転職。
カタログ制作担当として採用されたつもりが、テント開発を含む商品企画からイベント広報、宣材素材の制作など、ogawaのデザインに関わるすべての業務に携わっているそうです。
果たして、アウトドアメーカーで働くとはどういうことなのか? 大木さんの半生を振り返りながら、リアルな内情をお聞きしました。
ogawaユーザーからogawa社員へ
高校時代にバイクに興味を持ち、そこからツーリングに魅了されてキャンプをはじめることになったという大木さん。
キャンプ歴はなんと30余年、ogawaに出会って20年という、生粋のヘビーキャンパーです。
ツーリングの宿泊費を安く済ませるためにキャンプをはじめました。
ですので、キャンプは目的ではなく手段。20代後半になって、ようやくちゃんとしたテントを買ったのですが、そのときに手に取ったのがogawaのステイシーでした
15年使用している、ステイシーⅡは未だ現役
もともと絵が得意だったこともあって、高校卒業後は広告制作会社に就職。ここから大木さんのデザイナーとしてのキャリアがはじまります。
最初に就職した制作会社には10年勤めていました。
その後、30代はフリーランスのデザイナーとして活動、38歳のときに再び広告制作会社に入っているので、20年以上は広告業界にズッポリという仕事環境でした
そんな大木さんに転機が訪れたのが43歳のとき。たまたま見かけたキャンパルジャパンの求人に目が留まったと言います。
広告業界に疲れていたんですよね。徹夜も多いし、体力的にもしんどかった。
転職を具体的に考えていたわけじゃなかったんですけど、自分が使っているテントの会社だったので、気になったんですよ。
募集職種に『デザイナー』、やることが『カタログ制作』ってあったので、俺できるじゃん!って(笑)。
まったく未知の業界でしたけど、門を叩いてみたら、あれよあれよと話が進んでいって(笑)。入社して早8年が経ちました
最初の仕事はブランドの交通整理
大木さんが入社した2016年当時、キャンパルジャパンの社員数は15~6人ほど。
現在は80人前後まで増えているそうですが、当時はブランディングを管理する部署がありませんでした。そこに広告業界で培った大木さんの知識と経験が役立ちます。
入社してすぐにやらなきゃと思ったのは『ブランドの交通整理』でした。
小川キャンパルという名で独り歩きされている部分があったり、その前の小川テントで覚えている方もいます。
ただ、これらはあくまで社名なので、ogawaというブランドが変わっていないということを、しっかり伝えていく必要があると感じました
広告業界だと、ブランド名や社名の使い方はすごいシビアです。間違うと信用問題になるのでCI(コーポレート アイデンティティ)マニュアルの熟読は必須でした。
でも、当時のogawaにはそういうルールがありませんでした。ロッジマークのロゴもちゃんとしたデータがなかったので、最初にやった仕事は高解像度なロゴデータの制作です
ものづくりを一気通貫する醍醐味
大木さんの仕事は、ogawaにまつわるデザインのすべて。
店頭のポップやポスター、商品のラベルやカタログ、テントやテーブルなどのギアまで、ブランド運営に携わるすべてを作っています。
そのうえで、メディアの取材対応などの広報業務をやっていると聞くと…しっかりお休みできているのでしょうか……
もちろん、しっかり休んでいますよ(笑)。
たしかに、大きい企業であれば複数部署になる業務内容かもしれません。でも、自分としては、ものを作って、PR方法を考えて、撮影して、レタッチして、アウトプットする。
入口から出口まで、すべてに携われているのがこの仕事の醍醐味なんです
大木さんは、カタログやWebなどで使われている写真も自ら撮影。用途やシーンに合わせて様々な機材を持ち歩いているそうですが、すべて自費で購入しているというから頭が下がります。
もちろんプロのカメラマンにもお願いしていますが、自分でもいろいろ撮っていますね。
ガジェット(機材)も好きなので、楽しみながらやっていますよ。カメラはソニーのα7 Ⅳで、レンズはカールツァイスのSonnar T* FE 55mm F1.8 ZAが好きです
テントのデザイン、初手からアポロン
広告業界で働いていた頃はイラストとグラフィックデザインが中心だった大木さん。いまではogawaの全アイテムに携わっていますが、はたして最初からうまくいったのでしょうか?
入社してすぐ、社長から『新しいテントの企画を考える』というお題をいただいたんです。
締切は2週間後。ずっとキャンプをやってきたから、なんとなくイメージはあって、それを絵に描いて提出したら見事採用。それが、アポロンとグロッケなんです
アポロンとグロッケはそれぞれ2017年に開発がはじまり、2018年に発売。大木さんは初手にして、開発からリリースまでを任されたそうです。
市場のニーズにあわせたのがアポロン、自分が欲しかったのがグロッケでした。
ogawaといえば2ルーム。でも当時は商品ラインナップも少なかったのと、フレームワークもやや複雑だったのでシンプルな構造を想定してデザインしました。
提案時のフレームワークは適当でしたね(笑)。その後は長年付き合いのある工場と相談しながら、強度や仕様、設営の方法などを決めていきました
アウトドア業界で働くということ
ogawaの製品開発は年単位。毎年7月以降になると、サンプルのチェックや商品の撮影で忙しくなるそうですが、そのほとんどがアウトドアでの活動。体力勝負な側面もあるそうです。
キャンプ用品を扱っているので、一年の約半分はフィールドにいます。
春から夏前まではイベント出展で全国を行脚、夏から秋にかけては新製品のフィールドテストや撮影という感じです。
変なストレスはまったくないですけど、体力の限界を感じることはあります。炎天下でテントを張ったりするのは本当につらいんですよ(笑)
体力をつけるには、「よく食べてよく飲む、そしてプライベートでキャンプに行くこと」と笑う大木さん。キャンプは18歳からはじめて以来、ほぼ変わらないペースで今も続けているそうです。
友人とのグループキャンプはいつも大所帯
仕事とプライベート、その境界線がほぼない大木さんの働き方は、レジャーを扱うアウトドア業界特有のものでしょう。ただ、そこは勘違いしないで欲しいと大木さん。
製品を通して笑顔をつくるのが仕事ですが、その笑顔をつくる為の仕事は決して楽しいだけじゃないということをちゃんと理解して入ってきてほしいです。
本当に体力勝負な業界だと思うので、考えて動くことを楽しめる元気な若手はウェルカムです
ogawa 110周年記念キャンプイベントの開催が決定
ogawaは創業110周年を記念して、直営キャンプ場「ogawa GRAND lodge FIELD」にてキャンプイベントを開催します。各種ワークショップや限定モデルの販売会、2025年モデルの新作展示など、ogawaファンならずとも楽しめるコンテンツが満載。どなたでも参加できるので、気になる人は公式サイトをチェックしましょう。