二人三脚で作り上げる「サンゾー工務店」
サンゾー工務店の代表作といえば焚き火台の「Rodan(ロダン)」。
丁番になった小さなパネルを組み合わせていくことで、五角形→半円→円と形を組み替えられるのが最大の特徴。長い薪がそのまま入れられる半円状のハンゲツセット(写真上)は一番の人気商品で、4万円台という高価格帯にもかかわらず入荷は三ヶ月待ちだそう。
取材で訪れたのは、神奈川県横浜市にあるサンゾー工務店の作業スペース。ネオン管のブランドサインが、閑静な住宅街の片隅で異彩を放っています。
ブランドを運営するのはサンゾーさん(左)とあっちゃん(右)のおふたり。
サンゾーさんはサンゾクマウンテンを立ち上げたメンバーのひとりと認識されている読者も多いかも知れませんが、自分がやりたいことを追求するために2020年にご卒業。2021年10月に自身が経営している会社名でもある「サンゾー工務店」を掲げて再出発をしました。
相棒のあっちゃんは商業デザインのグラフィックを手掛けてきたデザイナー。サンゾーさんとは20年来の付き合いで、サンゾーさんの頭の中にあるアイディアを具現化して、形にしていく役割を担っています。
ものづくりは完全に二人三脚。まずは僕のアイディアを伝えて、あっちゃんがパソコンでグラフィック化。そこから一緒に画面を見ながら、違う違う! とかいいながら作っています(サンゾーさん)
思考錯誤を繰り返した「Rodan」完成への道のり
Rodanはパネルを何枚も組み合わせていく構想でしたので、最初はアクリルパネルを切り出して、いろいろなサイズや角度を試してみました。五角形まではうまくいったんですが、半月状のデザインには頭を悩ませましたね。
理想のギミックを追求するために、毎日工場に出向いて、出来上がったサンプルで焚き火をしての繰り返しでした(あっちゃん)
デザインのきっかけはスパイダーマン!?
空気を取り込むために施されたパネルのデザインもこだわりのひとつ。
最初はキリン柄で試していたんですが、穴が大き過ぎて熱で鉄が曲がってしまいました。いろいろと検討した結果たどり着いたのが、レンガのシルエットアート。実はこれ、スパイダーマンの漫画を読んでいるときにひらめいたんです。試してみたらいい感じで。レンガの形も上の方ほど細くなっていくグラデーションデザインなので、燃焼効率も高まっています(サンゾーさん)
焚き火調理も存分に楽しめるように工夫
また、焚き火台を載せるための「アイアンテーブル(¥25,080)」を発売したのもRodan人気を押し上げた要因のひとつ。
写真のように使うことで地面へのダメージを軽減しつつ、薪を乾燥。さらに焚き火台の前框(まえかまち)を開くと現れるスペースを使って、ピザやグラタンといったオーブン料理が簡単に楽しめるようになったのです。
予想以上の反響
プレスや窒化塗装といった製作工程は、すべて新規で開拓した工場に外注。当初の予想を上回る増産体制で工場との調整も難航したといいますが、「ようやく月産200台を作れるようになりました」とサンゾーさん。
計画していた半年分の売上を、最初の一ヶ月で達成したんです。これには正直驚きました。
いま頑張って量産していますが、それでも三ヶ月ほどお待ちいただいている状態です。アウトドアのイベントにも積極的に参加していますので、ぜひ現地で実物を手にしてみてください(サンゾーさん)
かっこいいのは当たり前。Hな要素がサンゾー流の隠し味
最近のキャンプブランドって、みんなクールでかっこいいものをたくさん作っていますけど、サンゾー工務店はそれだけじゃありません。“頓知・パンチ・H”を合言葉に、かっこいいけど他にはないものを作っていきたいんです(サンゾーさん)
例えばシェラカップ。一見すると見逃してしまいそうですが、「底の中央に描かれているのは山の稜線……ではなく、寝そべっている女性のシルエットなんです(笑)」とサンゾーさん。言われても気づきにくいオモシロディテールですが「九州へ出張したときに見た涅槃像からインスパイアしました」とあっちゃんは真面目に答えます。
新作のステッカーも昭和ロマンポルノ風の書体を使ったデザイン。サンゾーさんが求める「H」の部分を、あっちゃんの絶妙なさじ加減で具現化されています。
最近だとパンクドランカーズさんやラッセルノさんの丘キャンパーズともコラボさせていただいたんですが、彼らと意気投合したきっかけというのも、 “頓知・パンチ・H”というキーワード(笑)。「ダサイはカッコイイ」をテーマにしている彼らのコンセプトとマッチしたみたいで、仲良くさせてもらっています。今後も何かがありそうな予感(サンゾーさん)
Rodanだけじゃない。サンゾー工務店の強烈ラインナップ
串焼き専用に変身する「CUTiE パーツ」(¥3,500)
ハンゲツセットに含まれる前框(まえかまち)と組み合わせることで、小さな四角形の焚き火台「CUTiE(キューティ)」に変身するオプションパーツ。
火床になる下台と釘ピンのセット商品で、焼き鳥や串焼きを炭で焼くのにちょうどいいサイズ。
世界一おしゃれな串「A-3-94」(¥3,300)
アシモクラフツとコラボしたステンレス製の串。アシモクラフツ、サンゾー工務店各一本ずつの計2本がセットになった商品で、持ち手部分に耐熱シリコン性のチビグリを採用。
CUTiEと合わせて使うとご覧のフィット感。ソロキャンプでちびちび呑みながらサイコロステーキを焼くのに最高ですね。
カスタムできる薪バサミ「Pulse」(¥10,780)
薪バサミの「Pulse(パルス)」は、薪のつかみやすさにとことんこだわって作られた新作。グリップ部分の木製パーツは付替えが可能で、写真は別売りのスケボーグリップ(¥3,850)を装着した状態。
先端部分の加工は従来の薪バサミでは見かけることのない複雑な形状。
先端に向かうに従って山の高さが変わるようにデザインしました。これによって、薪のサイズに関わらず、抜群のグリップ力が確保できました(あっちゃん)
また、秋以降にはアシモクラフツからもPulse専用のグリップが登場予定。カスタマイズできる薪バサミはありそうでなかった製品です。
斬新なギミックのロストル「Lecter」(¥17,600)
「映画『羊たちの沈黙』のレクター博士が使っていそうな器具だから」という理由で命名された「Lecter(レクター)」。
Rodanのハンゲツセットにぴったりはまる専用ロストルは、従来のロストルでは見たこともない斬新な形状。小さじスプーンのような5本のパーツは簡単に好きな位置に移動が可能で、大きなケトルからシェラカップまでがっちりと支えてくれます。
焚き火ギアのネクストに期待大
サンゾー工務店が目指すスタイルは個性的でありスタイリッシュ。立ち上げから1年の間で「焚き火周りのギアはいったんラインナップが揃いました」とサンゾーさんは語ります。
2023年以降は焚き火以外のキャンプギアや収納ケースなどの展開も予定しているそうなので、これからの動向にも注目です。