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われらの足元をめぐる水【海に生きる八幡暁の”足元サバイバル”#10】(2ページ目)

準備するものから考える

準備する物を徹底的に教えて用意してもらうのではなく「各自、川から海まで行くのに必要だと思うものを持参してきてください」というくらいのアナウンスに留めます。集まったペットボトルの数が多ければ筏まで作ってみようということに。

おやじの会としては、ペットボトルの回収、現場で必要な道具(ハサミ、カッター、紐、ガムテープetc……)を準備して、はたして人はやってくるのか? と若干の不安もありつつ当日を待ったのでした。

それって浮くの?どうやって作ったらいいの?

大人と子供たくさん

当日の天気は晴れ。30組くらいの親子が集まりました。皆、今日って本当に大丈夫かしら? という空気が流れていたように感じます。それもそのはず、参加者は誰もペットボトルでライフジャケットなど作ったことがないのです。そして主催者側だってペットボトルで浮力帯を作りだすプロではありません。

「はい、今日はお集りいただきありがとうございます。材料はここにあるだけです。これを自由に使ってもらって、自分なりのライフジャケットを作ってみてください」

そう言っただけだったと思います。周りから一瞬の苦笑やどよめきもあったかもしれません。今、おかしなこと言ったよねと確認するため、横の人と目を合わせてみたり。そんな動揺の中、スタートしたのでした。

周りに目を配ることが安全への近道

ペットボトルでライフジャケット

胴体に巻く式、両腕に抱える式、自分で抱えて持つ式。できた浮力帯は実に多様でおもしろい。実際に使えるかどうかはわかりません。既に出発する前から、普段にはない冒険の要素を多分に含んでいたのです。

「はい、では完成した親子もいるので、各自、川へと降りていきますが、その前にちょっとだけ注意事項です。すべってバランスを崩すことも、足を切ることもあるかもしれません。それは普通のことです。

周りの子、親に目を配りましょう。自分が何ができて、何ができていないかに意識を持ちましょう。それが安全への近道であり全てです。プロの目があれば安心ではなく、自分たちで考えて動きましょう。

正直、プロの目は届かないと思ってください。おそらく隊列は長くなり、先頭と最後尾は、全く見えなくなります。また途中離脱の判断をする人もいるでしょう。各自の判断で離脱してOKです。その際、できれば周りの人に声をかけてください。点呼での安全確認はしません。参加した人のそれぞれの目が頼りです。よろしくお願いします!」

不安だらけの出発

それぞれの人の目が連続していることで、安全が担保されるということを、まずは共有します。誰かの目が切れることで、リスクが大幅に増えることもあります。慣れない水辺で、不安だらけ。それでも出発したのでした。

逗子の中心を流れる田越川にこれだけの園児が降りて、水の中をじゃぶじゃぶ歩くことはかつてなかったかもしれません。道行く人が道路の上から心配そうに見ていました。

それぞれの力で動き出し、そしてゴール

ペットボトルのライフジャケットで川

自分だけのライフジャケットで浮いてみます。「すげー浮いた!!!」「すぐ壊れちゃった……」

道具のことも忘れて、小魚やエビ、カニに狂気する子供たちも。また泣き出して水に入れない子もいたり。そう、スタートする前から、既に感じるところがたくさんありました。川を歩くのにビーサンでやってきた親御さんもいました(つまりはほとんど歩けないまま終わりです)。これだけでも成功です。

怪我だけはないようできるだけケアして出発を促します。すると早速、先頭と最後尾が離れ、見えなくなっていきました。

自分もワクワクします。というのも大きな鯉が、足に体当たりしてくるのです。こんなにたくさんいたんだ! という驚きもありました。これは災害時、食料になります。

その横では大変そうな子を助けたり、転んで泣いてる子をあやしたり。周りの人が、初顔合わせなのに手を貸しあい、苦戦しながらも楽しそうにしている様子をみて嬉しかったり。忙しく進んでいきます。

それぞれの判断で海まで

ペットボトル 子供 川

川なのに干潮帯の影響下にやってくると、川底には牡蠣が生え始めます。こうなると足への危険度は増します。靴を履いてない人も多かったのです。淡水域にはなかったのに……と気づく頃には遅し。このあたりは海と川が混じり、生きているものも違うのです。身をもって知ることになりました。

河口まで来ると、川底にはヘドロが堆積していました。臭いもあります。水深もだんだん深くなり幼児がいる親子は道路に上がって、歩いて河口を目指している人が多かったようでした。それでも頑張れる子は、周りと力を合わせて海まで泳いで辿り着いたのでした。

ちなみに大人が作ったペットボトル筏は、子供たちに乗っかられて、すぐ崩壊寸前に(笑)。それでもゴールの海まで到達しました。

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