インバーター発電機とは?
インバーター発電機とは、直流の電気を安定した電圧、周波数の交流に変換する「インバーター」という装置を搭載した発電機のこと。一般的にはガソリンやガスなどの燃料でエンジンを稼働させて発電する仕組みになっています。
家庭用コンセントと同じ正弦波の良質な電気を供給できるため、パソコンをはじめとするコンピューターが内蔵された精密機器にも安全に給電可能なモデルが多いのが特徴です。
ただし、運転時に発生する排気ガスには一酸化炭素が含まれるため、屋内で使用するのは厳禁。屋外で使用する場合も、テント内で使用するのは危険です。風通しのよい場所で使うことを心がけてください。
※参考:経済産業省「携帯発電機・カセットこんろ・モバイルバッテリーの使用にご注意ください」
インバーター発電機の使い方
インバーター発電機は、コンセントがない屋外で電源を確保したいときに重宝します。自宅の庭でDIYやガーデニングをする際にも便利で、電動のこぎりやチェーンソーなどを使い、家具を作ったり、庭木の手入れをしたりすることが可能です。
そのほか、地震や台風で停電が起きてしまった際の万が一の備えとしても大きな役割を果たします。
一方で、使用時には一定の騒音、振動が発生するため、人の多いキャンプ場や住宅密集地などで使うのであればポータブル電源がおすすめです。
インバーター発電機よりも出力は小さめになりますが、音が静かで振動が少ないこと、室内でも使えることはメリットといえます。
防災家・防災スペシャリスト
野村功次郎のコメント
地震・風水害・感染症……複合災害に対応するためには、ポータブル電源と発電機両方の備えがあるとよいでしょう。
ポータブル電源も熱を発するので、使用方法に注意してください。鞄や布団の中での充電すると火災、爆発の危険性があります。
発電機は取り扱い方法や使用状況、環境に注意して、できれば1人で操作しないことをおすすめします。
▼ポータブル電源のおすすめを紹介した記事はこちら!
インバーター発電機の入手方法
インバーター発電機は、「コーナン」「コメリ」「カインズ」「ナフコ」などのホームセンターやDIYショップのほか、インターネット通販でも購入できます。
より価格が安いものを探している場合は、「ヤフオク!」や「ラクマ」などのオークションサイトで中古品を購入することもできますが、安全が第一の商品であることを考えると、十分な知識がないのであれば大手メーカーの新品を購入するのが無難です。
また、イベントのときだけ使いたいという場合は、レンタルサービスを活用するという手段もあります。
防災家・防災スペシャリスト
野村功次郎のコメント
昨今は5万円以内で購入できる、安くて使いやすい家庭用発電機が増えていますが、一戸建てかマンションかによっても、使用状況や搬送状況、燃料を含めた保管環境は異なるでしょう。
そのため、インバーター発電機を購入する際は、実物を見て大きさ、重量などを確認してから買うのがおすすめです。家庭に1台あると役立つので、ぜひ最適なモデルを購入してみましょう。
インバーター発電機の選び方
インバーター発電機を選ぶ際は、重量や価格などのほか、次の6つのポイントをしっかりとチェックしましょう。
また、購入前に主な使用者や使用場所、使用環境、保管場所などの確認と想定をしておきましょう。間違った方法や不適切な環境で使用してしまうと、故障の原因になったり、事故につながったりする可能性があります。
非常時にも使用する想定の場合は、各発電機の違いを理解して機種を選びましょう。
1. 接続する機器の消費電力と起動電力(出力パワー)
インバーター発電機を選定する際は、接続する電気製品の消費電力(使用するときに消費する電力)を確認しましょう。また、消費電力だけではなく、起動電力(起動するときに必要な電力)の確認も欠かせません。消費電力を自転車をこぐ力とすれば、起動電力はこぎはじめに相当します。
電気製品は、消費電力と起動電力が同じ程度のものもあれば、起動電力が2~5倍ほど大きいものもあります。そのため、起動電力をカバーできるかどうかは必ず確認しましょう。
電気製品によってその幅はまちまちですが、主な電気製品の消費電力・起動電力の目安を記載しますので参考にしてください。
電気製品 | 消費電力 | 起動電力 |
---|---|---|
スマートフォン充電器 | 10~40W | 10~40W |
ノートパソコン | 25~80W | 25~80W |
電気スタンド | 20W | 20W |
プロジェクター | 300W | 300W |
炊飯器 | 300~700W | 300~700W |
テレビ | 70~300W | 70~300W |
コーヒーメーカー | 300~650W | 300~650W |
ホットプレート | 1,300W | 1,300W |
扇風機 | 30~80W | 30~160W |
ドライヤー | 1,100W | 1,200W |
ハロゲンライト | 250W | 500W |
電子レンジ | 800~1,500W | 900~3,000W |
電気ストーブ | 500~1,000W | 600~2,000W |
小型冷蔵庫 | 80~150W | 400~700W |
大型冷蔵庫 | 150~600W | 800~3,000W |
エアコン | 600~750W | 1,800~3,000W |
電動のこぎり | 400W | 480~1,200W |
チェーンソー | 700~1,400W | 2,000~7,000W |
起動電力は消費電力を上回ることがほとんどです。起動電力をしっかりと確かめて、手持ちの家電と相性のよい発電機を購入しましょう。
2. 定格出力
消費電力や起動電力は一般的に「W(ワット)」で表されますが、インバーター発電機の出力を表す単位としては「VA(ボルトアンペア)」や「kVA(キロボルトアンペア)」がよく使われます。
基本的には起動電力のW数よりも大きなVAの出力が必要になると考えておきましょう。起動電力が1,000Wの電気製品を使うのであれば、1,000VA(1kVA)以上の出力を持つインバーター発電機を選定する必要があります。
防災家・防災スペシャリスト
野村功次郎のコメント
発電機は1,000W(1kVA)以内の低出力モデルから、5,000W(5kVA)以上の高出力モデルまで多くの種類があります。その中でも、1,000W(1kVA)以下はレジャー用に、1,500W(1.5kVA)以上は防災用におすすめです。
必要な出力は用途によって違います。家電が動かないといったトラブルを避けるためにも、出力の算出方法を知っておきましょう。
3. 周波数と電圧
日本の一般家庭のコンセントは電圧が100V、周波数は東日本なら50Hz、西日本なら60Hzです。そのため、日本国内で販売される電気製品は、基本的に上記の電圧・周波数に対応しています。
輸入品のインバーター発電機を使う場合などは、AC出力ポートと接続する製品の電圧・周波数が対応しているかどうかは必ず確認しましょう。
4. 騒音レベルと振動対策
インバーター発電機は利用するときにどうしても騒音が発生します。周囲に人がいる場所で使う可能性がある場合は、できるだけ音が静かなものを選定しなくてはなりません。
騒音レベルは「dB(デシベル)」で表しますが、多くのインバーター発電機にはこのdB表示があるので、必ず確認しましょう。
そのほか、音が静かな製品を選ぶための基準としては、国土交通省の低騒音型建設機械指定を受けているかどうかも目安のひとつになります。
※参考:国土交通省「建設施工・建設機械:騒音・振動対策」
防災家・防災スペシャリスト
野村功次郎のコメント
発電機の稼働音は70dB(デシベル)以上が一般的。これは、パチンコ店の中と同程度の騒音です。住宅街に住んでいる人は、カバーで振動や騒音を予防するのがおすすめです。
原動機が覆われて見えないようになっているカバータイプの発電機は安全面でも優れています。発電機のエンジン部は高温になりやすいのがネック。お子さんがいる人は、カバーで事故防止に努めていきましょう。
また、静音性や安全性を上げるため「防音ボックス」を利用するのもおすすめです。防音ボックスは、ボックス内に発電機を収納できるアイテム。住宅地に住んでいる人や、夜間使用を想定している人はぜひチェックしてみましょう。振動吸収、騒音防止ゴムの併用も効果的です。
5. 付加機能
上記のような基本スペックに加え、あると役立つ付加機能もチェックしておきたいポイントです。
エコスロットル
エコスロットル(エコモード)は、エンジンの回転数を自動制御して、燃費を向上させる機能です。連続運転時間が長くなると同時に、静粛性も高くなります。
災害時は燃料の残量が気になるもの。もしものときに備えて発電機を購入する人は、エコスロットルが付いた機種を探してみましょう。
セルスターター
セルスターターは、スイッチひとつで発電機を始動できる機能です。
ほとんどの発電機は、紐を引くリコイルスターターです。慣れれば問題ありませんが、工程が少ない分スムーズに始動させられます。頻繁に停止・駆動を行いたい人におすすめです。
防災家・防災スペシャリスト
野村功次郎のコメント
価格の安い発電機は個人、家庭向けでインバーター機能も内蔵されていますので、お値段、重量、機能のバランスがよく、幅広いシーンで使用可能です。
価格の高い発電機は、とても機能性に優れていますので、会社、防災組織、自治体、団体などでの業務用に購入するのがおすすめです。
6. 燃料
ガソリン式 | カセットボンベ式 | LPガス式 | |
---|---|---|---|
メリット |
|
|
|
デメリット |
|
|
|
インバーター発電機は、主にガソリン式、カセットボンベ式、LPガス式の3種類があります。
それぞれにメリットとデメリットがあるので、次の項目で説明する特徴をきちんと理解したうえで、自分に合った製品を選んでみましょう!
防災家・防災スペシャリスト
野村功次郎のコメント
一般家庭に1台購入するのであれば、使用目的にもよりますが燃料購入方法、取り扱いの手間、エンジンメンテナンスを考えるとカセットボンベ燃料の機種が好ましいでしょう。ガソリンは劣化(酸化)しやすく、長期保存が困難な燃料です。その点カセットボンベは保管性に優れ、非常時の電源として優秀です。
平常時のガソリン購入も、専用容器が必要で購入規制があります。さらに、近年の燃料価格高騰や発災時は、ライフラインの寸断によりガソリンの入手が困難になることが予想されます。
ただし、カセットボンベには次のようなデメリットもあります。
・電力あたりの燃料費が高く、ランニングコストが高い
・使用後に空き缶のゴミが出る
・ガソリン使用と比較して、連続使用時間が短い今後は非常時にはガス燃料発電機が大きな力になるでしょう。
インバーター発電機のおすすめ12選
ここまでの選定方法をもとに、「ガソリン式」「カセットボンベ式」「LPガス式」それぞれのおすすめインバーター発電機を紹介します!
ガソリン式
ガソリン式は小型から大型まで種類が豊富にあり、高出力のモデルも多数。カセットボンベ式より燃料の保管は難しい一方、比較的ランニングコストが安いのも魅力といえますが、近年は燃料価格高騰も考慮する必要があります。
ガソリンの補給は「ガソリン携行缶」で行うため、持っていない場合は買っておきましょう。なお、ガソリンはフルサービスのガソリンスタンドでのみ購入可能。セルフスタンドでは購入できないので注意しましょう。
ナカトミ ドリームパワー EIVG-900D【0.9kVA】
定格出力は900VA。エコモードスイッチで省エネ運転も可能です。騒音値が約65dBと低く、サイズもコンパクトなのでさまざまな場所で活躍するでしょう。
ナカトミ ドリームパワー EIVG-900D
工進 GV-9i【0.9kVA】
最長約8時間利用可能で、シガーソケット端子がついているため、車中泊用に買った電気を使う車載グッズをつなぐこともできます。騒音値も58~65dBと低めに抑えられています。
工進 GV-9i
EENOUR GS1800i【1.4kVA】
定格出力は1.4kVAで、起動電力の高い電気製品も安心して使えます。USB出力も2つあるので、災害時のパソコンやスマートフォンの充電にも役立つでしょう。
EENOUR GS1800i
ヤマハ EF16HiS【1.6kVA】
1台で1.6kVAの出力を持つヤマハ EF16HiSですが、2台つなげての運転が可能な並列端子を装備しているため、2台をうまく活用すれば、最大で3.0kVAまでの出力を得られます。種類にもよりますが、アウトドアでホットプレート、炊飯器、コーヒーメーカーを同時に使うことも可能です!
ヤマハ EF16HiS
マキタ EG1600IS【1.6kVA】
エンジンの回転を自動制御するシステムにより、コストを抑えながら安定して発電を行うことができ、長時間の連続使用が可能に。こちらも並列稼働で最大30kVAの出力を実現。大勢での使用や起動電力の高いガーデニング用機器などの利用におすすめです!
マキタ EG1600IS
ホンダ EU18i【1.8kVA】
同社の人気モデルだったEU16iとほぼ同じ重量ながら、出力は1,800VAにパワーアップ! この大出力ながら片手でも持ち上げられるサイズ感になっています。メンテナンスも手軽に行える使い勝手のよいインバーター発電機です。
ホンダ EU18i
SUSEMSE SUA2500iY【2.2kVA】
大容量2.2kVAを誇るインバーター発電機です。ハンドルが付いているため持ち運びしやすい設計になっており、万が一の災害時などにも活躍するでしょう。
SUSEMSE SUA2500iY
新ダイワ IEG2800M【2.8kVA】
2.8kVAの出力で起動電力の高い電気機器でも並列稼働なく1台で賄えます。重量はありますが、キャスター付きのため、災害時用に持っておけば安心です!
新ダイワ IEG2800M
カセットボンベ式
家庭用のカセットボンベで発電ができるタイプのインバーター発電機。ガソリンやLPガスに比べ、スーパーやコンビニなどでもすぐに燃料が入手できるので、普段は使わないけれどいざというときに使いたい、という人にもおすすめです。
ナカトミ ドリームパワー EIGG-600D【0.6kVA】
小型軽量タイプのため、どこにでも持ち運びがしやすいインバーター発電機です。0.6kVAとパワーは少なめですが、非常時の最低限の電源確保には十分使えるでしょう。
ナカトミ ドリームパワー EIGG-600D
EENOUR XYG950i-B【0.7kVA】
6つのステップで簡単起動を実現します。10kgを切る軽量コンパクトサイズなので、小柄な人やあまり力がない人でもそれほど持ち運びに困らないでしょう。
EENOUR XYG950i-B
LPガス式
LPガス式はランニングコストが比較的安いうえ、個別供給方式のため、災害時の備えにも役立ちます。基本的には事前に工事が必要になりますが、自宅でプロパンガスを使っている人は選択肢に入れてみましょう。
ホンダ EU9iGP【0.9kVA】
LPガス50kg容器満タン時、約110時間の長時間運転が可能なため、地震や台風などで停電した際には大活躍間違いなしのインバーター発電機です。工事すれば家庭用のプロパンガスで使えるため、災害時の備えにも最適といえます。
ホンダ EU9iGP
新ダイワ IEG900PG-M【0.9kVA】
キャブレター周りの掃除も不要のためお手入れが簡単で、普段は使わなくても災害時用に1つ持っておきたい……という人におすすめのインバーター発電機です。5kgのガスボンベで約10時間の連続運転が可能です。
新ダイワ IEG900PG-M
購入後の点検・メンテナンスも重要!
インバーター発電機は、購入後の点検やメンテナンスも重要になります。
エンジンオイルの交換
エンジンオイルとは、エンジンの潤滑油です。初回は1ヶ月、または20時間運転後に交換をしてください。発電機には「推奨オイル」が記載されている場合もあります。事前にメーカーのホームページで確認してみましょう。
エアクリーナーの清掃
エアクリーナー(エアフィルター、エアーエレメント)の清掃は、3ヶ月、または50時間運転を目安に清掃しましょう。
スパークプラグの交換
スパークプラグは、ガソリンの着火を担っているパーツです。6ヶ月、または100時間を目安に劣化を確認し、必要なら交換を行いましょう。スパークプラグはメーカーサイトなどから購入できます。
ガソリンの使い切り・保管
ガソリンは6ヶ月以内に使い切れない場合、ガソリンスタンドで処理してもらう必要があります。30日以上使用しないときは発電機からガソリンを抜きましょう。
また、市区町村の火災予防条例などにより、ガソリンの保管は原則40L未満と定められているので、備蓄量にも注意してください。
防災家・防災スペシャリスト
野村功次郎のコメント
定期的な点検・稼働はしっかり行いましょう。エンジン始動後は20〜30分程度稼働させてください。点検のみでエンジンをすぐに停止すると性能が低下します。
なお、酸素を使用して発電する機器なので密閉された室内での使用は避けてください。室内の酸素濃度低下による事故、酸素不足による故障などを招く恐れがあります。延長コードを使用するなど、機器本体を屋外に設置して使用するようにしてください。
さまざまなシーンで役立つアイテム!
アウトドア、DIY、そして災害時など、いざというときに役立つのがインバーター発電機です。
発電機というと重くて音もうるさいイメージがあるかもしれませんが、現在ではコンパクトタイプや静音設計タイプも増えており、用途に応じてベストなものをチョイスできます。
紹介したアイテムから自分にぴったりの1台を選んで、便利さを体感されてみてはいかがでしょう?