CAMP HACK × HUNT
この記事は、アウトドア雑誌『HUNT』で掲載された記事の一部をCAMP HACKでもお届けする連携企画です。
今回は、THE NORTH FACEに勤務する永山さんを取材した記事です。
岩と対峙し、自分と向き合う孤高の山登り。
スポーツクライミングが2020年の東京五輪の公式種目に決まり、間口が更に広がっているボルダリングの世界。アーバン・アウトサイダーズは、街でクライミングウォール、山でそびえる岩と戯れる。
ボルダリングは自然相手の推理ゲーム。
ボルダリングとは、比較的安全な高さを登るフリークライミングのこと。ロープで繋がれていないため、上下左右に移動する際の自由度が高いのが特徴だ。もちろん打ち所が悪ければ危険なことに違いはないが、基本的には下にマットを敷いている範囲に落下するので、安全なスポーツだと言える。
ザ・ノース・フェイスのプレス永山貴博さんは、そんなボルダリングに没頭しているうちの一人。休日は朝から山に向かい、平日は仕事帰りにジムへ行って汗を流しているのだ。
「僕がボルダリングを始めたのは、4年前です。最初はそんなの何が難しいのよ? と思っていましたが、挑戦してみると出来なくて(笑)。それでムキになってやっていたらハマってしまったんです。特に外岩では登る達成感、自然と対峙して楽しむという、アウトドアとしての醍醐味が感じられるから好きなんです。ジムはジムの良さがありますが、僕は外岩を目指すために、ここで技術を学んでいるって感じですかね」
ジムでは壁ごとに難易度が設定されていたり、ホールドの色でコースが決められているが、外岩は一つ一つがありのまま。自分でコースを導き出す。岩をよく観察し、先々の一手を考えて今はどこに足を伸ばすべきかを考察する。自然の岩に対しては、ことさら身体だけでなく頭もフル稼働させたければならないのだ。
「必ずしも筋肉バカが登れるという訳じゃないのがボルダリングの魅力でもあります。身体がしなやかで体感が良いなら、登り方の幅も広がりますし、ルート次第で案外すんなり登れたりすることも。ですが、メンタルに左右されやすく、一度スランプに入ると全く登れなくなるんですよ(笑)」
そんな永山さんが休日に出かける外岩は、大抵クルマで2時間圏内の場所。今回は山梨と埼玉の県境、奥秩父に位置する瑞みずがきやま牆山エリアで撮影させていただいた。
ボルダリングの世界にはエリアマップもあり、岩ごとに名前が付いている。しかも、一つの岩でも複数の課題(登るルート)があったりと、かなりマニアックにまとめられている。
瑞牆山はその課題が面白く、クセのある岩が多いのだ。また、この一帯は岩の王様とも言われている火成岩「黒雲母花崗岩(くろうんもかこうがん)で形成されており、ざらざらとした質感も特徴。フリクション、要は摩擦抵抗があるので、クライマーには人気のスポットなのだ。
「ボルダリングに行くときは、基本的には仲間と一緒なのですが、『あの岩に行った? ここはどう登る?』と、話題を共有できるからか、現地で知り合った人ともすぐに仲良くなれて楽しいですよ」アウトドアで赤の他人と深く交流することは、ありそうで意外と少ない。しかし、外壁でもジムでも、ボルダリングをする人は不思議と気さくな人が多く、意外と開かれた世界なのだという。
「ボルダリングは道具も少なくて、すぐに始められるスポーツ。シンプルだからこそ、何処までも追及出来る奥深さがボルダリングにはあります。こんな生涯をかけて打ち込める遊びって結構貴重だと思いますね」
photo & text by HUNT
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