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靴合わせする男性

『BESPOKE HUNTING BOOTS』~質実剛健、フルハンドメイドのビスポーク靴~vol.2

雑誌「HUNT」とのコラボレーション企画第17回。HUNT編集部がブーツ専門のビスポークシューメーカー『T.Shirakashi』への取材した際の記事を紹介します。

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目次

フィッティングを通じて対話を重ねる

自分の足と用途に合ったビスポークブーツを作る。大人なら一度はトライしてみたい逸品を目指す連載第二章である。今回のテーマはフィッティング。本番に向けての最終調整であり、オーナーと職人が対話を重ねる大事な工程なのだ。
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(左:白樫徹哉さん/元グラフィックデザイナーという異色の経歴を持つ靴職人。30代でビスポーク靴に感銘を受けて脱サラ。専門学校を出た後、紳士靴職人に師事。2015年にT.Shirakasiを立ち上げた。http://www.shirakashi.jp/)

完全オーダーメイドのハンティングブーツを作る。夢のような企画を編集部に持ち込んでくれた白樫徹哉さんは、おそらく日本で只一人のブーツを専門とするビスポーク職人。たった一人で全工程を手がけるクラフトマンである。
「バブアーに似合うような、英国の上質なアウトドアスタイルに負けないブーツを作り上げるのが目標です」

目指すはリアルカントリー。野山に分け入った時に頼りになる、ホンモノのアウトドアツールであることが大前提である。フィールドに負けない性能を持ち、何よりオーナーの『足』にフィットしていること。しかも、大人のファッションアイテムとしても成立しなければならない。

立ちふさがる様々な命題を妥協無く克服しようとするなら、既製品の中から探し出すのは至難の業。アンクルブーツはまだしも、ロングブーツでは不可能に近いだろう。究極の一足を目指すのなら、ビスポークブーツをオーダーするのが、最短距離かも知れないのである。自分の足に合う靴を探すのではなく、足に合わせて靴を作る。その課程をお伝えする当企画が、ステップ2に突入した。

当企画にご協力いただいているのは、HUNT誌面でもお馴染みの室伏友三さん。野鳥の撮影からハンティング(アメリカ)まで精力的にこなし、鳥類保護協会連盟の要職をお務めになっているリアルアウトドアマンである。

手作業で作り込み微調整を加えていく

23LAST
ラストと呼ばれる木型は、ヨーロッパビーチ(ブナ)を削りこんで作られている。三分割した無垢の木材を、まずはノミで全体的な形を整える。その後、ヤスリで丁寧に仕上げを施していく。ラストのレッグ部分だけでも、3日間ほどの製作期間を要するという。
5TRIAL
フィッティングにお持ちいただいたのは仮縫い二号機。
4上の写真が一回目の仮縫いで作ったブーツで、木型の出来を確認するのが主な目的。採寸通りに作った木型でも、マージンを追加したり、色々な部分とのバランスをとる必要があるのだという。
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完成した木型にマスキングテープを巻き付け、再び剥がして型紙(パターン)を製作する。革の“伸び”を計算に入れながらの作業は、見た目の美しさも左右する大事な工程である。
7FITTING
室伏さんに履いていただき、ほんのわずかにタイトであることが判明。ミリ単位で修正箇所を直接アッパーに書き込み、工房に戻って木型の形状を調整する。

8ウェルトを縫い付ける作業。片方で70~80目、一針ずつ撚りをかけてしっかりと縫っていく。例え一箇所が切れても、他の縫い目はほどけない構造となっている。

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今回、白樫さんが室伏さん用にお持ちいただいたのは、「フィッティング用」。連載の初回で、室伏さんの足をきめ細かく採寸、そのデータを基に作った仮縫いのブーツである。

だがしかし。その出来映えは驚くべき完成度を誇る。美しい立ち姿、味わい深い風合いなど、惚れ惚れとするばかりの仕上がりである。フィッティングに不必要なソールを備えていていない点を除けば、まさに本番さながらの出来。しかも、サイズ感もかなりのレベルで煮詰まっているらしい。初めて足を入れた室伏さんも、驚きのピッタリ具合なのである。

それもそのはず、なんと白樫さんは、フィッティング用ブーツを作る為に、室伏さんの足を再現した「木型」を作っているのである。この段階で、すでに高いレベルで煮詰めてあるフィッティング用ブーツを基に、さらに細かく微調整を施し、最終的な完成品を作り上げるというのだから、その手間たるや恐れ入るばかりである。

美しいアッパーに容赦なく注意書きを入れ、シワの入り具合をチェック。初めて足をいれたオーナーの声に耳を傾け、仕様の変更を相談する。「ビスポーク」の神髄である「対話」を重ねることで、オーナー自身が本当に臨んでいる一足を探っていく。

「フィッティング」とは、ビスポークブーツに欠かせない工程なのである。

写真:Yoshiro Yamada ,Yoshiko Shirakashi 文: Junpei Suzuki

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