時代に先駆けたサステナテック!? #OUTDOOR 狼の足跡に込められたジャック・ウルフスキンの志
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環境先進国ドイツ発のアウトドアブランド「ジャック・ウルフスキン」。ファッショナブルなウェアや玄人好みのキャンプギアで注目を集めるブランドですが、世界中で愛されているのは彼らの理念や、自然を大切にする企業姿勢によるところも大きいのです。今回は、彼らにとってはあたり前すぎて大声で発信していなかった“サステナブルなモノづくり”にフォーカス。驚くべき徹底ぶりをマーケティングマネージャーの喜田 慎さんに伺いました。

CONTENTS1 狼の足跡(ポー・マーク)のマークは、手付かずの自然の象徴

ジャック・ウルフスキンは、じつは多くのサステナブルな活動を行なっているんですよ!

ジャック・ウルフスキンと狼、そして環境保全のストーリーは、創業者ウルリッヒ・ダウズィンがカナダのユーコン川を旅した四十数年前に遡ります。彼は旅の途中で不運にもクマに襲われてしまい療養のためにとある村で休んでいたそうですが、そのときにオオカミの遠吠えを聞き「オオカミが毛皮で自分たちの身体を守るように、人間がどんな環境でも使えるアウトドア用品をジャーマンエンジニアリングで実現したい」と、インスピレーションを得ました。

狼の足跡(ポー・マーク)は、生態系の番人が司る手付かずの自然の象徴であり、自分たちのすみかを壊さないという狼の習性に対する敬意も込められています。それゆえ創業した1981年の時点から自然に寄り添う姿勢や、環境負荷の少ないモノづくりをブランドアイデンティティとして持ち続けているんです。

機能を損なわず、環境負荷の低いマテリアルにシフト

環境負荷の少ない素材開発

近年、サステナブルマテリアルを使用することは業界のベーシックとして浸透していますが、環境意識の高いヨーロッパのブランドのなかでも先陣を切っているのがジャック・ウルフスキンの誇りでもあります。植物繊維は100%オーガニックもしくはリサイクルの素材。化学繊維の全アパレル製品に対するリサイクル素材使用率は78%(2023年春夏時点)を達成、透湿メンブレンも再生原料になったことでさらなる高みを目指しています。また、環境負荷の高いPFC(過フッ素化合物類)フリーの撥水加工が施されているのは、アパレルだけでなくテントやタープも同様。23年モデルからはテントもリサイクル素材にシフトするなど、多くのブランドが行っていない取組みを高次元で行っているんです。

生産する過程まで含めたサステナビリティ

クリーンな労働環境

エコな素材開発は自然環境だけに対するアプローチに見えますが、ここには製造過程に携わる労働者の健康までを包括的に配慮しているという側面もあります。フェアな環境を作り出すべく、モノを作る人を守るための監査機関「フェアウェア・ファウンデーション」に2010年から加入し、現在はその認定工場でしか製品の生産を行わないことを徹底しています。

また、2011年には持続可能なサプライチェーンを認証する「ブルーサイン」とパートナーシップを結び、職場の安全性、消費者保護、資源の節約といった観点で包括的に監査しています。

CONTENTS2 2023年の新作に見るサステナブルで機能的な技術

この章では、編集部がフィールドで使ってみたいと思ったサステナブルなアイテムを3つご紹介します。

PFCフリー&リサイクル生地に
変更された
「GRAND ILLUSION IV」

これまで業界に先駆けてPFCフリーの撥水加工「SUPER DWR」搭載のテントを送り出してきたジャック・ウルフスキンですが、環境負荷を抑えたモノづくりがさらに加速しています。2023年春夏シーズン以降、同ブランドから発表されるテントとタープは全てリサイクル生地を使用する方針で、新型のみならず、既存のモデルも徐々に新素材にアップデートされるとのこと。テントにリサイクル素材を使うという業界でも先進の試みは、グローバルブランドだからこそできる大胆なリニューアルです。

とはいえ機能面は従来のマテリアルと遜色なく、高水準の性能を発揮。耐水圧1,500~2,000mmが業界標準のところ、4人用のツールームテント「GRAND ILLUSION IV」のフライシートは耐水圧4,000mm、グランドシートは10,000mm。レインジャケットに使われるレベルの耐水性を誇ります。

業界初!リサイクルメンブレンを
採用した防水透湿シェル
「ELSBERG 2.5 JKT」

2020年にすべてのアパレル類およびバッグ類のPFCフリー化を実現したジャック・ウルフスキンですが、2023年には表地のみならず、防水・透湿性を司るメンブレンにもリサイクル率100%の素材を2017年以降採用しています。シーンによっては人命に関わる変更であるため、ドイツ本国の開発部門でも製品採用まで時間を要したそうですが、新素材は従来のメンブレンと変わらぬ機能を発揮。軽量シェルに採用された「テキサポール・エコスフィア・プロ」素材は、防水透湿20000㎜/15000g以上を誇ります。

ハリ感が抑えられている2.5層のシェルジャケットで、着心地も軽やか。暖かいシーズンのアウター、レインウェアとして気軽に使えそうです。デザインはシンプルですが、こまかな仕様にこだわりがあり。行動中に体温調整ができるように脇下にはファスナーによるベンチレーションを搭載し、ファスナー開閉の腰ポケットの袋布にはメッシュ素材が配されています。

サステナブル&オーガニック!
「WOODWORKER」シリーズは
夏に嬉しいヘンプ・コットン素材

「WOODWORKER」のジャケットとパンツは、春夏のキャンプシーンで活躍間違いなしの新作です。使用するのは化学肥料や大量の水を使わない天然素材。環境負荷の低い素材として注目が集まるヘンプとオーガニックコットンをベースに、リサイクルヘンプとリサイクルオーガニックコットンも合わせた生地です。なので、焚き火の火の粉が飛んできても、溶けて穴が開く心配もありません。

また、ヘンプと聞くとゴワゴワするイメージがあるかもしれませんが、コットン混紡なので肌触りはソフト。天然の機能素材が生み出す、サラリとした着心地に病みつきになりそうです。

カバーオールとして使えるジャケットは、大きめのポケットやループを配置。シャツの上から着たときのルックスも考慮したノーカラーのデザインで仕上げられています。パンツはワークパンツをベースにしたもので、サイドにはハンマーループ付き。さらに、トリプルステッチで強度をアップさせています。タフに使える仕様が嬉しいですね。

CONTENTS2 自然意識を喚起し、未来のアウトドアフィールドを創造する「WOLFUND」

グローバルで取り組む活動と並行して、ユーザーを巻き込んだ環境保全プロジェクトを日本独自で発足させました。「WOLFUND」と名付けたこの活動は、日本では絶滅したとされる狼の役割を私たちの手で担い、環境保全活動に貢献するという理念のもとスタートしました。2023年は狼信仰の残る東京・御岳山周辺の環境保全と未来の人材育成を図るイベント「DISCOVERY CLUB」を年間4回開催する予定です。

具体的には、江戸時代から御岳山に伝わる狼信仰を学びながらのハイキングや、アウトドアクッキング、トレイルメンテナンスなどのプログラム。アウトドアに親しみながら、環境保全に目を向けていただける機会を作っていきます。

この「DISCOVERY CLUB」の参加費から出る収益の一部は、アウトドア環境保護基金コンサベーション・アライアンス・ジャパン(CAJ)を通じて環境保護団体に寄付するのですが、一方で西東京周辺の中学・高校の生徒や先生を対象に無料招待する枠を毎回確保して、地域資源や環境保全の重要性を次世代に繋ぐ取り組みも同時に行います。

環境意識を育み、アウトドアを楽しむ文化を発展させることがアウトドアブランドとしての役目。プロダクトだけでなく、ジャック・ウルフスキンがおこなうさまざま活動で足跡を残し、その意志を示していきたいですね。

INTERVIEWE PROFILE

喜田 慎さん

ジャック・ウルフスキン マーケティングマネージャー

グローバルブランドとして一つのポリシーがあるなかで、ジャック・ウルフスキンの意志を汲み上げ、日本市場へ波及するための施策を計画。ジャック・ウルフスキンのブランドコミュニケーション活動や、イベント企画にも取り組んでいる。また、同ブランドを保有するキャロウェイゴルフのSDGsタスクフォースチームのリーダーも兼務し、同社が展開するサステナビリティ活動「ALL FOR GREEN」の牽引役も務める。