2015年の国連採択から急速に広まりつつあるSGDs。政府機関や大手企業をはじめ、多くの組織がSGDsの実現に向けたさまざまな取り組みを実施しています。個人レベルで小さな取り組みをスタートしている人も。2030年までの目標として掲げられたSDGsの実現のために、アウトドアパーソンができることを考えてみませんか?
全世界を対象にした持続可能な開発目標
SDGsとはSustainable Development
Goalsの略称。世界が持続可能であるために定められた開発目標です。2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択されました。MDGsの発端は、18世紀半ばの産業革命以降、人間の活動が急激に変化したことでした。経済・社会が活発化する一方、生き物すべての基盤である地球環境に大きな影響を与えてきたという歴史があります。そうして15年に渡って取り組まれたMDGsに対して、当時のパン・ギムン国連総長は、「歴史上最も成功した貧困撲滅対策だった」という評価。後継であるSDGsでは、MDGsで取りこぼしてしまった問題に焦点が当てられました。
持続可能性は途上国だけの問題ではなく、先進国や途上国の垣根なく、全世界で取り組まなくてはならない大きなテーマなのです。SDGsは地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓い、2030年までに実現すべき17のゴール・169のターゲットで構成されています。日本も積極的に取り組んでいる最中です。
アウトドアパーソンとSDGs
アウトドアと身近にある人は、自然のちょっとした変化や違いに気づくきっかけが多いはずです。森を歩いていれば、管理されず日当たりの悪いエリア、倒木が溢れた場所、なんとなく美しくない景色に出会うことがあるかもしれません。そんな違和感を持ったら、理由を探ってみて。人の手によって壊されてしまった生態系に気づくことができるかもしれません。キャンプが好きなら、キャンプ場やギア選び、道中で入手する食材選びにも、SDGsの視点を持つことができます。
アウトドアのプロに聞いてみた
アウトドアパーソンとSDGsの関係についてお話を伺った、コンサベーション・アライアンス・ジャパン(CAJ)代表理事の三浦さんは、自身もアウトドア愛好家。登山、クライミング、シーカヤック、トレイルランニングなど、数多くのアクティビティに挑戦されてきました。そんな三浦さんは自然とアウトドアにまつわる仕事を志すようになり、ゴールドウイン勤務時代にCAJに携わりました。同社を退社後、CAJの法人化に当たって代表理事に就任。現在もフリーランス活動の傍ら組織運営に取り組まれています。
アウトドア領域における項目は?
4番の、教育と生涯学習の提供。7番の、持続可能かつ近代的なエネルギーを確保すること。12番の、持続可能な消費と生産。13番の、気候変動への対応。14番の、海洋資源の持続可能な開発・保全・利用。15番の、生態系や生物多様性の保護。これらはアウトドアと深い繋がりがあります。気をつけるべきは、ひとつの項目に囚われて他の項目を蔑ろにしてはならないということです。例えば全人類がオーガニック食材を選択することを強要してしまったら、食料の奪い合いに発展してしまいます。自分の取り組みが他のどの項目に抵触する可能性があるかを知り、省みるためのチェックリストとして17項目を活用してみましょう。
アウトドアパーソンができるSDGs① 地産地消
12番では「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」という項目が挙げられています。食事はキャンプの楽しみのひとつですが、地産地消はその一例。都市部で美味しい食材を仕込んでいくのもいいけれど、道の駅や直売所でその土地のものを購入してみては? 特にファミリーキャンプなら、一緒に料理をしたり食材の話をすることで、環境教育に繋げることもできますよ。美味しい食事があれば、子どもたちは地産地消の素晴らしさを。身をもって理解できるでしょう。
アウトドアパーソンができるSDGs② 植樹活動への参加
森林生態系の保護はアウトドアフィールドの管理に直結します。15番には「森林の持続可能な管理」という記述があり、日本でも大きな課題となっています。国土の60%を占める森林のうち半数が人工林。しかし、十分な管理をされないまま放置されている林も少なくありません。CAJが支援している丹沢自然保護協会のように、荒れてしまった山に固有の樹種を植えるという活動が全国で執り行われています。ボランティア参加の募集を探して、アウトドアの日程に組み込んでみては?
CAJは日本のアウトドアフィールを次世代へと継承するために活動する非営利団体で、2022年4月現在53の加盟数です。日本の多様な自然環境の保全に向けて、加盟ブランドから基金を募り、草の根的に活動する団体への支援を行うことが主な活動。近年ではコロナ禍における安全なアウトドアの遊び方をまとめたガイドラインを作成し、近接領域の団体との協働にも積極的に取り組みます。現在注目の支援事例として、ファーストアッセントジャパンのプロジェクトがあります。もともと震災復興支援を通じて金華山のクライミングエリア開拓や登山道整備を行ってきた団体ですが、東北大学の研究者と連携して水中に浮遊する環境DNAを採集して行う生態系の調査をスタートしました。生物を傷つけずに生態調査を行うという先進的な取り組みです。
三浦務さん
コンサベーション・アライアンス・ジャパン(CAJ)代表理事
「CAJの基金は、各会員の売上規模によって年間費を算出し集められています。ですので、みなさんが利用されるアウトドア用品やサービスを、会員ブランドから購入いただければ基金額も上がり、より多くの自然環境を保護できる仕組みです。私は、街でもアウトドアフィールドでも会員ブランドのウェアやギアを使ってCAJの取り組みに個人的にも貢献しています。皆さんもぜひ参加してください!」