親子2人で行く、海外キャンプ旅

プロフィール
キャンプフォトグラファー猪俣慎吾。2017年に星空 案内人®を取得。2019年から自ら開発した『プラネタリウムテント』で天の川の解説をし ながら全国を回っている。 2021年10 月に『絶景CAMPGUIDE』(JTB パブリッシング) を出版。
広告・料理・アウトドアの撮影が主な得意分野であり、アウトドアを中心にフォトグラ ファーとして活動する傍ら、キャンプコーディネーターとしても仕事をしている。
外ごはん文化を広めるためのアウトドアパーティーグループ「KIPPIS」を主宰。現在は息子と2人で行く父子キャンプにハマっている
この連載では、日本全国の絶景キャンプ場を旅していた筆者が、新たに「息子2人と海外キャン経験を経て学んだこと」を通して海外キャンプ旅のレクチャーをしていきます。

ハードルが高いと思われがちな海外キャンプですが、まずは近場からの旅行を経験して慣れていけば案外かんたんなことだと気づくはず。
筆者が体験した日本全国のキャンプ旅と、海外キャンプ旅で得たノウハウを余すこと無くお伝えしますよ!
昆虫好きの息子の一言が冒険の始まりに

海外キャンプ旅の記事も、いよいよ4回目。
今回の舞台は東南アジアの国、マレーシア。多くの人が思い浮かべる首都・クアラルンプールから離れ、筆者たちが向かったのは“東マレーシア”と呼ばれるボルネオ島です。
ボルネオ島(インドネシアでは「カリマンタン島」と呼ばれますが、以下はボルネオ島で統一します)は、東南アジアのほぼ中心に位置する広大な島。面積はおよそ74万平方キロメートルで、日本の国土の約2倍。世界で3番目に大きな島として知られています。
一年を通じて温暖な気候に恵まれ、手つかずのジャングルが今も色濃く残るこの島は、世界中の冒険家や自然愛好家を惹きつけてやまない場所です。ここでは、野生のオランウータンやボルネオゾウと出会えるほか、世界最大の花として知られるラフレシアも咲き誇り、まさに“地球の息吹”を肌で感じられる大自然の宝庫です。
旅のきっかけは、息子の一言。
『パパ! 日本じゃ見られない昆虫がいる国に行きたい!』
その一言に背中を押され、ボルネオ島について調べてみると、昆虫好きにはたまらない“聖地”のような場所で、キャンプ場も複数あり、飛行機代も往復6万円前後と意外とリーズナブル。
さらには、標高4,095メートルのキナバル山にも惹かれ、気づけば「登ってみようか」と話がまとまっていました。
東マレーシアの大都市コタキナバルに到着

日本からコタキナバルへは、季節運航ながら直行便も就航しています。基本的には1回の乗り継ぎが必要となりますが、乗り継ぎを含めても所要時間はおおよそ10時間前後と、それほど長くはありません。
筆者が訪れたのは3〜4月で、現地の気候は日本の真夏のような陽気でした。とはいえ、暑い気候のほうが寝袋などのキャンプ装備をコンパクトに抑えられるため、海外でのキャンプにはむしろ適していると言えるでしょう。

コタキナバルの空港に到着後、事前に予約していたレンタカーを受け取ります。マレーシアは日本と同じく右ハンドル・左側通行のため、運転にはそれほど違和感はありません。


まずは燃料と食材の調達へ。マレーシアのスーパーは品揃えも日本とよく似ており、お米もパスタも問題なく購入可能。ある程度大きなスーパーならCB缶(カセットガス)も売っているので、飛行機では持ち込めない燃料類の調達も安心です。
キャンプ初日は展望抜群の山岳サイトへ

マレーシアキャンプの1泊目に選んだキャンプ場は、コタキナバルの市内から車で50分くらいの山の中にある展望の良い『ココル ママヒル キャンプサイト』に訪れました。
駐車スペースから徒歩5分ほどでサイトへ。荷物はあらかじめまとめておくのが良さそうです。

到着したのはすっかり夜。受付を済ませてテントを張り、夕食は簡単にパスタで済ませました。眼下にはコタキナバルの夜景が広がり、長旅の疲れを癒してくれるひとときでした。
海外キャンプの初日は、旅の準備や長距離の移動で体も心も疲れているもの。そんな中で風景を眺めつつ食べる夕飯には、思わずホッとさせられるものがあります。

ふと隣を見ると、マレーシア人キャンパーたちが『レット・イット・ビー』や『レット・イット・ゴー』を大音量で熱唱中。深夜23時を過ぎても盛り上がっており、日本では考えられない光景に驚きました。後から知ったのですが、マレーシアではカラオケがとても人気で、キャンプ場でのカラオケも一般的なのだとか。まさにお国柄ですね。
翌朝はキナバル山が目前に!

翌朝は時差ボケの影響もあり早朝5時に起床。場内を散歩してみると、遠くにキナバル山の堂々たる姿が見えました。なぜか人は国の最高峰の山に心惹かれるもので、ただ眺めているだけで時間を忘れてしまいます。



朝食を息子と済ませたあと、キャンプ場内を歩いていると、場内のあちこちにパイナップルが生えているのに気がつきました。畑でもないのに、まるで自生しているかのように至る所に点在しています。おそらく、ちょうど良い大きさに育ったものを収穫して食べているのかもしれませんね。
テントを片付けたあとは、世界最大の花として知られる「ラフレシア」を見に出かけることにします。


