別注・新作アイテム入荷中!!CAMP HACK STORE
テント開発者

【一問即答】テント開発者に、読者から集めた疑問をぶつけてみた!

キャンプの経験を積んでいくなかで、分かっていたようで意外とあやふやな知識も多いはず。

本企画は、CAMP HACKが読者の皆さんから集めた「実際どうなの?」を、専門家にぶつける一問一答形式の連載コンテンツです。

目次

記事中画像撮影:編集部

専門家にド直球で聞きました

テント アンケート

テントを使っているときに浮かんだ疑問って、みなさんはどう解決していますか? ネット検索では根拠に乏しいこともあり、やはり、ちゃんと専門家に聞きたいことってありますよね。

そこでCAMP HACK編集部では、「テント開発者に聞きたいこと」について、インスタグラムのストーリーでアンケートを実施! 

さらに集まった質問について、一問一答形式で専門家に回答していただくことにしました!

回答してくれる専門家はこの方!

ゼインアーツ立て看板

ワンポールテントをベースにしつつ、常に斬新な構想が加わり、美しくも快適で設営しやすいテントが人気のアウトドアブランド、ゼインアーツ

ブランド創業から6年経った今も、予約時点で完売が続く人気ぶりです。

ゼインアーツ代表 小杉 敬さん

ゼインアーツ小杉さんプロフ画像

1972年新潟県生まれ。大手アウトドアメーカーにて20年以上の企画開発を経て、2018年に長野県松本市を拠点に、株式会社ゼインアーツを創業。 機能とデザインの融合をコンセプトに製作されたプロダクトは、グッドデザイン賞受賞歴も多数。自身もクライマー・バックカントリースキーヤー。

今回、テントにまつわるあらゆる疑問に回答してくれるのは、そんなゼインアーツの代表であり開発者でもある小杉 敬さん

長年のアウトドアプロダクト開発で培われた専門家としての知識を基に、早速お答えいただきましょう!

Q&A:テント開発のプロが回答

Q1.|長くテントを使うコツは?

A.|乾燥させて保管するのが重要

小杉さん:長くテントを使う観点でお答えするなら、汚れ予防や洗い方よりも、とにかく乾燥させて保管することが一番重要です。

テントを干すシーン

出典:PIXTA

一般的にテントの裏面には、ポリウレタンコーティングによる防水加工が施されていますが、水分が大敵。

湿った状態で保管すると、加水分解という現象が起きて、このコーティングが劣化して剥がれ、雨が侵入しやすくなります。

テントの耐久性というのはほぼこの耐水性なので、一番留意すべきは、裏面の防水コーティング。撤収したら完全に乾燥させてから保管してください

Q2.|テントクリーニングって必要?

A.|高温乾燥は生地が劣化する点に注意

小杉さん:クリーニング専門業者に依頼した場合、必ず乾燥させる工程があり、そのときの温度設定が非常に重要です。

というのも、テントの生地は高温に非常に弱く、熱を加えることで生地が劣化して、強度はどんどん低下してしまうからです。

出典:PIXTA

なので、自然乾燥ではなく、高温でスピード乾燥させるクリーニング業者の場合、生地の強度が低下する可能性があるので、 1年に1回くらいが限度かと思います。

私自身は、生地の強度を保つ方を優先したいので、許容できる範囲の汚れなら、なるべくクリーニングには出さない方がいいと思っています

Q3.|ワンタッチテントは普通のテントより脆い?

A.|一概には言えない

小杉さん:これは一概に言えないです。ワンタッチかどうかという機構よりも、アンカーの仕方、ペグなどでテント本体をどう押さえるかの方がすごく重要になってきます

キャンプ場のポップアップテント

出典:PIXTA

もろさというのは、耐風性における意味だと思いますが、その意味ではどのように風を受けてそれを維持するのかが重要なので、ワンタッチでもそうでないテントでも、ただ建てっぱなしだと弱いです。

なので、ちゃんとガイロープを張って、しっかり耐風性をキープできているかをチェックしていただければと思います

Q4.|ポリエステルは必ず加水分解する?

A.|NO!加水分解するのはコーティング

小杉さん:ポリエステル素材自体が加水分解するのではなく、裏面に施されたポリウレタンコーティングが加水分解を起こします。

なので、コーティングされていないポリエステル素材は当然加水分解もしません。

テントのスペック表記などをよく見ていただき、ポリウレタンコーティングと書いてあるものは、よく乾燥させて保管することが大切です

テント 加水分解

出典:PIXTA

Q5.|結露を防ぐ効果的な方法は?

A.|温度差を無くす・芝生サイトを避ける

小杉さん:結露は、テントの生地の表面と裏面の寒暖差によって生じます。ですので、外が寒くて室内が暖かい状態だと、結露は起きやすいです。

効果的に防ぐとなると、ドアパネルを開け放して内外の温度差をゼロにするしかありません。

寒い時期は中を暖かくしたいですが、その場合はどうしても結露が出ます。

芝生のアップ

出典:PIXTA

また、メッシュパネルやベンチレーション機構をどんなに配置したところで、生地表裏で起こる問題なので、室温を暖かく維持しながら結露を防ぐのは不可能です。

1つだけ言えるとしたら、「芝生サイト」を避けた方が、比較的結露が起きにくくなります。

芝生はどうしても水分を蓄えているので、その水分が結露になりやすいんです

Q6.|テントに撥水スプレーは使うべき?

A.|使うべき。正しく定着させて

小杉さん:全然使うべきですし、もちろん使っていただいて問題ないです。

市販の撥水スプレーの場合、塗布するだけでは生地上に組織がちゃんと成立しない、定着しないので、熱を加えて定着させるタイプが比較的多いかと思います。

その場合は、塗布後に低温のアイロンをサッとかければ、定着して効果が出てきます。

ただ吹き付けるだけだと、撥水効果を得にくい場合があるので、取り扱い説明書などに従って、正しく定着させることに注意していただければ

スプレー噴霧

出典:PIXTA

Q7.|コストの安いテントは何を妥協してる?

A.|いろいろな選択肢がある

小杉さん:フレームの素材や生地をチープにしたり、妥協してコストを下げる方法も、もちろんあります。

ですがそれ以外にも、例えば流通の方法を変えたり、もしくは発注するロットを増やして単価を下げるなど、定価を下げるにはいろいろな方法があります。

それは企業の状態にも関わってくる話なので、コストの下げ方は各社それぞれ、いろいろな選択肢があるということですね。

テントのポール

出典:PIXTA

Q8.|どうせ買い替えるのに、なぜペグを付属させるの?

A. |これまでの慣習があるため

小杉さん:まさに「買い替えるだろう」という意図で、ウチ(ゼインアーツ)の製品には、現在ペグを付けていません

おまけ的なクオリティのペグだと、どうしてもゴミになるので、そこは割り切っています

テント付属のペグやポール

出典:PIXTA

一方で、特に初心者の方の中には、付いているのが当たり前だと思う方もいて、実際私たちがペグの付属を止めた年には、「ペグが無いんだけど」という問い合わせが多かったです。

なので、これまでの慣習として、ペグの付属を続けるメーカーも多いのが実情だと思います

Q9.|TCとポリエステル、おすすめはどっち?

A.|一長一短がある。シーンで使い分けを

小杉さん:これは、どちらも一長一短があります。

TCは遮光性が高く結露を感じにくい、火の粉に強いなどのメリットがありますが、残念ながら完全防水ではないので、雨に弱いです。

土砂降りの雨だと中まで侵入したり、撥水効果が薄れてきた場合は、吸水してかなり重くなってしまいます。

さらに、それを放置するとカビが生えやすいというデメリットも

TC軍幕の前で焚き火

出典:PIXTA

それに対し、化学繊維のポリエステルは完全防水にできるので、雨を中に侵入させないのが大きなメリットです。

けれどTCとは逆に、結露が発生しやすく、火の粉に弱いというデメリットがあり、シチュエーションで使い分けるのがおすすめです

Q10. |テントは畳んで収納しないとダメ?

A.|畳まなくても大丈夫!

小杉さん:いえ、そんなことはないです。畳まなくても全然大丈夫です。私も、そんなにキッチリ畳まずババっと丸めて収納していますよ

テントを収納中

出典:PIXTA

Q11.|開発者として一番衝撃を受けたテントは?

A.|ビル・モスが手がけたMOSSテント

小杉さん:20代前半に目にした、ビル・モスが手がけたMOSS(モス)テントですね。

最初にカタログを見たときに、すごく衝撃を受けました。あの計算された綺麗な曲線を見て、機能の塊であるテントで「美しい」ラインが出せるんだ、と。

MOSSテント

出典:MOSS TENTS

アメリカの広大な土地にポンと建っている写真もカッコ良かった。テントが映えるんですよ。自分もこういうのが作りたいって、ホントに思いました。

開発者としてのモノ作りに目覚めたのも、そこからです。まだアウトドア製品を作り始めたばかりの頃で、「モノづくりとはなんぞや」とか「開発ってこういうことだ」みたいなところが、なんとなく分かった気がしました

出典:Instagram by@mosstents_official

Q12.|どうやったらテント開発者になれる?

A.|まずはキャンプを。思考の訓練も大切

小杉さん:これは難しい質問ですね。まずはキャンプをして、自分がキャンプを好きになること。

その上で、なるべく多くのさまざまなテントに触れ、それをいちいち評価することが重要だと思います。

このテントを、自分だったらこうブラッシュアップする、この部分は要らないんじゃないかな、とか考えることが大切ですね。

ゼインアーツ小杉さん

開発とは、モノをクリエイトすることなので、自分の考えをまとめる能力が要求されます。

この能力の訓練は、身の回りのモノを評価することでもできるので、普段から意識するといいですね。

そうすれば、キャンパーの皆さんの心理、何をもって楽しいと思うのか、何をしに行っているのかといった本質の部分が見えくると思います。

そこから、もっとテントはこうなるべきとか、こういうデザインの方が使い勝手がいいかも、といったことをパパッと考えられるようになるのかな、と思います。

プロとしての経験に培われた知識に勝るモノなし!

ゼインアーツ小杉さん一問一答撮影風景

恥ずかしながら今回、筆者は勝手な思い込みによる勘違い知識がいくつか発覚……。いやあ〜、やっぱりプロとしての経験に培われた知識に勝るモノはないですね! 

皆さんもぜひこの記事を参考に、さらにテントに詳しくなって、キャンプをもっと楽しんでくださいね!

アンケートにご協力いただいた読者の皆さん、ありがとうございました!

インタビューの全貌は動画からチェック!