機能美あふれる鎌倉天幕の焚き火台
「鎌倉天幕」の母体企業は、もともとはOEM製品を手がけていました。その確かな技術を活かしつつセンスのいいデザインを採り入れ、今では人気アウトドアブランドに。
そして2022年2月、ブランド初の焚き火「SOLOIST HOMURA(ソリスト 炎)」を発売。これが大人気となり、売り切れ→再入荷→すぐに売り切れ……という状態が今だに続いています。
なんでも前人未到の構造を持つ、ポップアップ式の焚き火台なのだとか。
ちなみに、2022年8月時点の現在で手に入るのはFOLBOT(フォルボット)と鎌倉天幕がコラボして作った焚き火台があります。
現物をなんとか入手!
話題の焚き火台をこの目で見たい、使ってみたい!……というわけで楽天市場で再入荷メールを設定して待つこと1ヶ月弱、ようやく入手することができました。価格は15,150円でした。
コットン製の上質な収納袋が付属し、収納サイズは34×14.5cm、厚さ3.6cm。コンパクト性は優秀です。
中身を出してみました。左が本体で、ゴトクが2本付属します。本体は広げるだけで焚き火台の形になるらしいのですが、にわかには信じられません。
展開も収納もほんの数秒……!
それではさっそく組み立ててみましょう……いや正確には「組み立て」ではありません。当製品は広げるだけのポップアップ式!
10秒の動画にノーカットで余裕で収まりました。脚が飛び出すのはほんの一瞬で、風防のプレートを立ててステーで固定する工程を含めても、トータル10秒を切ります。
カメラを回したついでに、収納アクションも試してみましょう。
こちらもノーカットの10秒動画となりました。展開と収納を計20秒以内に行える焚き火台は、世界広しといえど当製品ぐらいではないでしょうか。ちなみにこの仕組みは特許出願中だそうです。
完成状態をご覧ください。まな板のような形状だったステンレスの板たちが、立体的に展開され焚き火台として大地に立っています。
おっさん臭い感想で恐縮ですが、平行な直線が効いたビジュアルに、何やらガンダム的なかっこよさを感じました。
惚れ惚れしながらディテールを観察
ソロに適したサイズ
真上から見ると火床の大きさは34×27.5cm。ソロキャンプにほどよいサイズだと言えるでしょう。
高さは23cmで、ソロ用焚き火台の金字塔「ピコグリル398 」よりも1.5cm低い仕様。高さもまたソロにちょうどいいサイズです。
重量は公式スペックによると約1.0kg。ご覧の通り小指1本でらくらくと持ち運ぶことが、その必要はなくとも可能です。
空気の流れを絶妙に調節
火床には肉抜きが施されていました。薪が燃えているときは空気の通り穴となって、燃焼効率に貢献することでしょう。
風防は長辺だけでなく、短辺の中央部にも。しかもこの風防ときたら、ポップアップ時に自動で立ち上がるシロモノです。薪が寄りかかることで、空気の通るスペースをつくる役割も期待できますね。
付属ゴトクの有能感
ゴトクを設置してみましょう。乗せるだけのシンプルなタイプに見えますが、風防プレートをちょっとだけ閉じてあげるアクションが必要となります。なぜなら……。
……ゴトクには溶接で溝がつくられてあり、それが風防をホールドするようになっているんです。ゴトクがズレ落ちないだけでなく、焚き火台全体の剛性と耐荷重を高める効果もありそうですね。
ゴトクは左右方向にもズレ落ちることがありません。風防プレートには3つの突起があって、それがゴトクのストッパーに。2つのゴトクには、それぞれ行動範囲が定められているんです。
また風防プレートの中ほどに空いたスリットにもゴトクをはめ込むことができ、熱源との距離を近くすることもできます。
特許出願中のメカニカルな構造
さてポップアップを可能にしている、特許出願中の構造を見てみましょう。
なんだかSOTOの「フィールドホッパー」 のような、複雑な機構が組み込まれています。何がどう動くのか、ぱっと見では見当もつきません。しかし機能美はビンビン感じられます。
ちょっとだけ閉じようとしてみました。収納アクションの途中の段階です。脚がスライドしながら折りたたまれていくことがわかりますね。
これだけ繊細な仕組みですから、公式サイトには要メンテであることが記載されています。
使用後は都度可動部の細かい箇所までクリーニングをしていただき、定期的に潤滑剤を挿していただくなどのメンテナンスをお願いいたします(出典:ニューテックジャパン)
実際にキャンプで使ってみた
それでは実際に焚き火をしてみましょう。焚き火台そのものは極上のかっこよさ、機能美を堪能させてくれましたが、薪の燃え具合はどのようなものでしょうか?
ちなみに焚き火シート はAmazonで購入したノーブランド品で、サイズは約80×60cmです。
燃えっぷりは上々
はい、何ら問題なく、とてもよく燃えています。耐荷重のスペックが約5kgなので、薪は針葉樹で細めのものを用意しました。
予想していた通り、サイドの小型風防に薪が寄りかかることでスペースが生じ、空気の通りが順調でした。火床の空気穴と相まって下方向から空気が取り込まれ、調子よく燃えてくれています。
この風防は取り外せないので風を遮る効果は確かめにくいですが、薪の組みやすさと燃焼性に大きく貢献してくれる、有能なパーツです。
薪は基本的にサイドからハミ出ます
使った薪の長さは35cmです。当製品のサイズは長辺34cmで、また火床は真上から見るとレクサスの「スピンドルグリル」のような形状。一般的にキャンプ場で購入できる薪は、ほぼほぼハミ出してしまうと思います。
今回はそれを逆手にとって「両サイドの風防に寄りかからせる」という薪組みをしました。しかし重量のある広葉樹の薪の場合は、風防の養生のために薪割りやカットが必要だと思います。
薪がハミ出た状態で焚き火を続けると、薪の端っこが落下する事案がそこそこ発生します。長い薪をそのまま使う場合は、小まめに薪いじりをしてあげる必要があるでしょう。
しかしそういった手間は焚き火好きにとっては逆に嬉しくもあるので、デメリットだとは思いません。
“焚き火調理”はしやすい?
何か調理をしてみましょう。ゴトクは風防の上にポンと置くだけではなく、はめ込む必要があるのは前述した通りです。
風防プレートをじかに触る必要があるので、絶賛焚き火中の場合はグローブが必須アイテムとなります。
一方のゴトクで鉄板を使い、もう一方にはケトルを乗せました。コンパクトながら2バーナーのような熱源となり、ソロキャンプの調理に不足はありません。
特に鉄板調理がしやすいと感じました。というのもゴトクは左右には動かせますが、前後にはズレることがありません。左右への動きも、風防プレートの突起によって可動範囲が制限されています。
おかげで重い鉄板を動かしてもゴトクが引きずられて落下する心配がなく、ストレス知らずで鉄板を扱うことができました。
後片付けのしやすさは?
焚き火を終え、焚き火シートに落ちた灰を確認。落ちている灰は決して多くはなく、火床にスリットの入った焚き火台としては、いたって普通だと思います。
灰の捨てやすさに関しても、何ら問題はありません。他のソロ用焚き火台と同じように、手軽に灰捨て場に持って行って処理することができました。
強いて感想を言うとすれば、ポップアップ式の機構に気を使ってしまうので「火床をバンバン叩いて灰を落とすのがためらわれる」ぐらいです。
正直、気になった点は……?
耐荷重には不安が残るかも
焚き火シーンでもちらっと言及しましたが、当製品の耐荷重は約5kgです。ポップアップ式の構造を守るための上限であり仕方ないとは思うのですが、もうちょっと余裕がほしいと感じました。
ずっしりとした広葉樹の薪を使いたい場合、「5kg」の薪がどの程度のボリュームなのか、予め把握しておきたいところです。それプラス、調理時にはクッカーの重さにも配慮が必要ですね。
使用後は閉じにくくなります
焚き火台は、熱によって必ず歪みや変形が生じます。当製品も例外ではなく、説明書には「購入時よりも開閉がスムーズでなくなる」旨の注意書きがありました。しかし使用には問題ないとのことで、弱点認定するのは酷な話でしょう。
ただ筆者が購入した実機の場合、開閉するうちに脚の位置がズレてしまうことがあります。左の写真が正しい位置、それが右の写真のように内側に入ってしまうことがあるんです。
中央方向に押し上げてやることで簡単に元に戻るのですが、ズレた状態に気づかずに閉じようとすると……。
……このように引っかかり、脚がひん曲がりそうになります。嫌な感じの手応えで抵抗が感じられ、新品状態で撮った写真を見返して脚の位置に気づきました。
ちなみにこのままでも閉じることはできるのですが、ダメージが積み重なるかもしれないのでご注意を。
軽さを重視するキャンパーには……
公式スペックでは、重量は約1kg。ゴトクを入れた収納袋ごと量った総重量は1,124gでした。
けっして重い焚き火台だとは思いませんが、ソロ用の軽量コンパクトな焚き火台がしのぎを削る昨今、軽さを求めるソロキャンパーには不満が残る数字かも……。
しかしポップアップ式であることを考慮すれば、重さをつつくのは無粋というものです。
個性派の焚き火台が欲しいなら
というわけで今回は、鎌倉天幕が手がけた初の焚き火台「SOLOIST HOMURA(ソリスト 炎)」を実際に使ってみました。
ポップアップ式の展開と収納は、便利であり時短にもなりますが、それ以上に気持ちよさがありました。「かっこいい機能を手にしている」という満足感です。
もちろん焚き火台としての使いやすさが犠牲になることもなく、特に調理時の使い勝手は特筆すべきもの。繰り返しになりますが、ゴトクの安定感が秀逸でした。
機能美のほとばしる、唯一無二の焚き火台。個性派の焚き火台が欲しいキャンパーにとって、これ以上の選択肢はないかもしれません。
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