温故知新な食品用の包装材「経木」が今ふたたび、流行の兆し!
自然のパワーを秘めた、昔ながらの「経木」(きょうぎ)が、再度、注目を集め始めています。「経木」とは、天然の木材を薄く紙のように削り出したもの。添加物や化学的な加工はいっさいなし。木材本来の持つ穏やかな抗菌作用や調湿作用があり、手に取ると、ほのかに木のいい香りがしてきます。
その使い途も多岐に渡り、キャンプ飯作りや家のキッチンで大活躍の予感が。
身近に見かける経木といえば、そう、たこ焼きを入れる「舟」。これはやや厚手の経木を舟形に加工したもの。しなやかで軽く、適度に水分を吸ってくれるため、焼きたてのたこ焼きが蒸れてベチャベチャになるのを防ぎ、最後の1個まで美味しく食べられますね。
すぐれた機能を秘めた経木、たこ焼きのみならず、あらゆる料理に、食品の保存に重宝なんです。
主な用途は、食品を包むこと
経木の主な使い途は、食品の包装用。まださほど冷蔵・冷凍技術が発達していなかった昭和の頃、小売店でお惣菜や和菓子、肉や魚、味噌などを買うと、経木に包んで渡してくれました。経木の持つ「抗菌性」と「水分調整機能」が食品の保存に役立ったんです。
プラスチックの代わりとして再注目
折りしも、2022年4月からは「プラスチック資源循環促進法(プラ新法)」が施行され、プラごみ削減につながる包装材として、経木がにわかに注目を集めています。
自然に還るサスティナブルな素材の経木を使ったひと皿は、見た目もなかなかオシャレ! その万能っぷりをご紹介しましょう!
経木って、そもそも何でできているの?
木材を厚さ1ミリ以下の薄片に加工
「経木」の名は、遥かな大和時代、まだ紙が高価だった頃に、経典を筆写するのに使われたことからきています。
経木の厚さは約0.05~1.0mm。木材をごく薄く削って造られています。明るいところでかざすと、光が透けて見えるほど。重さは1枚約5〜7g程度、軽いので束にしても持ち運びは苦になりません。
国産の赤松材が原料
原料の木材は、国産の針葉樹。赤松が使われることが多いです。木材の中でも松は抗菌性と調湿性が高く、匂いも穏やかで、食品の包装用にうってつけ。おにぎりや菓子などを包むと、爽やかな松の匂いがかすかな移り香となって、風味をプラスしてくれます。
木目を生かして敷き紙の代わりにすれば、見た目も爽やかなオードブル皿に。
しなやかで張りがあるため、クルリと丸めて使うことも。
キャンプで、キッチンで、はたまたディナーテーブルを演出する名脇役として、どんな使い方ができるのか、実際にみていきましょう!
【載せる】 そのまま食器として使う
お皿の上に重ねて
キャンプの前菜に、大好物の馬刺し! お皿に直接盛り付けると、どうしてもお肉の赤い汁が目立ってしまいます。経木の上に置けば、余計な水分を吸って、最後まで見栄えのいいご馳走に。
焼き鳥を盛る
次のおつまみは定番の炭火焼き鳥。木皿の上に経木を重ね、脂汚れを防止。後片付けもラクチンです。
ちなみに、ハサミで簡単に加工できる
極薄だから、ハサミで好みのサイズにカットして使えます。木目があるので、縦方向に裂けやすい点に注意すれば、紙と同様に加工できます。
好きな形にカットして
丸く切って和スイーツを盛り付ければ、趣のあるお茶タイムに。きなこやトロトロの黒蜜も経木の上だけなので、お皿を洗わなくて済んじゃいます。
おつまみを入れる舟も作れる!
たこ焼きの舟を真似て、自分で作ることも可能。ハサミで縦に3本切れ目を入れ、真ん中に寄せ集めてホッチキスで留めるだけ。
茹でたての枝豆を入れれば湯気を吸い、スナック菓子の油分が他のところに付くのを防止。見栄えもいいし、みんなで囲んで食べやすくなりますね。
【包む】 植物由来の抗菌パワーと、ほのかな木の香り
おにぎりを包む
朝の残りご飯でおにぎりを作り、撤収後のお昼のお弁当にしました。キッチンラップと違い、経木で包んでおくと、おにぎりが蒸れてベタベタにならないんです。包みを開いたときに香る自然な木の匂いもご馳走のうち。
お弁当の仕切りに
お弁当箱に合わせて経木をカットし、おかずの仕切りとして使用した例。サインドイッチの具や、茹でたマカロニから染み出す水分を経木が吸収し、食べる時まで美味しさをキープ。主婦として、家族が食べるものの保存には気を遣いたいもの。原料の松の木由来の抗菌作用があるせいか、お弁当が傷みにくいように思います。
ごはん党なら、お弁当箱に詰めたごはんの上に切った経木をかぶせておけば、お弁当用抗菌シートの代わりになります。
ナチュラル&オシャレな包装アレンジができる
ちょっとしたお裾分けや、手渡しのおやつを経木で包んで。ハーブを添えたり、リボンや紐にこだわれば、ナチュラルな雰囲気を感じさせるパッケージに。いつもファイアースターターで着火するときに使う麻紐を結んでみました。
カンタン!包み方の基本はコレ
使うのは、経木2枚と紐1本。経木を十字に配置し、中心に菓子を置きます。内側の経木で菓子を包み、片手で押さえながら外側の経木を巻いていきます。最後に紐で縛ったら完成です。
食べ物だけでなく、アクセサリーやハンカチ、石けんなど、ちょっとした小物をプレゼントするときにもぜひ経木を使ってオシャレに演出してみてください。
【料理する】 まな板や落とし蓋に!調理器具として万能
まな板に敷いて使う
経木の本領発揮、まな板シートとして。プラスチック素材のまな板シートは使いやすいですが、どうしてもプラごみになってしまいます。紙製のまな板シートは簡便な反面、強度的に弱く、包丁の刃先や水分で破れたりも。
経木は木製ですから燃えるゴミとして処分できます。また、強度もあるので、ごく普通に包丁を使う程度では破れません。肉と野菜を分けるなど、食材ごとに経木を取り替えれば、まな板を洗いに行く回数も減らせますし、衛生的に調理できますね。
蒸し料理の網に敷いて
キャンプのおやつは小籠包。ラージメスティンの内網サイズに経木をカットし、水を入れて小籠包を載せ、蓋を閉めてバーナーに点火!
ふんわりと立ち昇る湯気、小籠包の匂いに木の香りが混じって、上々の蒸し上がり。経木が水分を吸うので底のベチャつきもなく、経木ごとお皿に移して盛り付けもラクラク。
煮物に敷けば、形崩れ防止になる
海沿いのキャンプ場近くのスーパーで、新鮮なイワシをゲット。家族のリクエストはイワシの煮付けだったので調理にも使ってみました。
まずは頭とワタを取り、煮汁が沸騰するまで経木に載せて待機。
煮汁が煮立ったところで、もう一枚、長いままの経木にイワシを移し替え、そのまま煮汁の中へドボン! こうすると、柔らかいイワシの身や皮が鍋にこびり付くことなく、キレイな姿のまま調理できるんです。
魚が煮えたら、経木のままそっと持ち上げてお皿の上へ。身を崩さずに盛り付けることができます。ヘラやトングも不要!
落とし蓋に
煮物を作るとき、煮汁をまんべんなく行き渡らせるのに落とし蓋を使いますね。いつものアルミホイルやクッキングペーパーの代わりに経木を使ってみてください。程よい弾力で煮物の具材にピタッと沿うため、味の染み込みがいいんです。
揚げ物の油を吸収
経木は天ぷらやフライの敷き物にも最適。紙と違い、揚げ物に貼り付いて衣がベタつくこともなく、適度に油を吸収しカラッとした状態が長持ちします。
【食品の解凍・保存】ドリップを吸収し、水分を調整
冷凍肉のドリップを吸収
冷凍品の解凍時、経木を敷くとドリップを吸い、肉や魚に臭みが出るのを防ぎます。塩コショウしたり、お気に入りのアウトドアスパイスを振るときにも下に敷くと、スパイスの塩気で滲み出る水分を吸収し、より美味しい焼き上がりをアシスト。
魚や肉を保存する
経木は食品を冷凍保存するときにも使えます。肉や魚、パンなどを経木で包み、チャック袋などに入れて密封し冷凍。冷凍保存中の乾燥を防ぎ、そのまま解凍すればドリップ防止に。
鯛などの白身魚は、捌いた身を冷蔵庫でしばらく寝かせた方がアミノ酸が増えて美味しくなったりしますね。経木で挟んで冷蔵すると、余分な水分を吸って身が締まり、経木の抗菌作用で身が傷むのも防いでくれます。
保存容器に敷いて、湿度を調整
野菜を保存容器で保管するとき、容器の底に敷いて使いましょう。調湿作用・抗菌作用のお陰で、野菜が長持ちします。
TOMIZ cuoca 経木
経木 Shiki Short(1/2サイズ)
使用後は燃えるごみ、キャンプなら着火剤に!
経木を使えば、プラスチックごみを減らせる
色々な料理に使った経木。自然の木材が原料ですから、土に還ります。使用後は燃えるごみに。そして、キャンプならではの使い途は……?
赤松の油分で、すぐれた着火剤になる!
キャンプ飯作りに使った経木は、焚き火に放り込めば後処理完了。それに、経木はとても有能な着火剤になるんです。赤松に含まれる油分で、小さな火種でもメラメラと燃え上がります。
薄いため火持ちはいまひとつなので、着火用には使用後の経木をある程度溜めておくといいですね。
使い方のコツは?
使用前に濡れ布巾でさっと拭く
食品を包む前に、濡れ布巾等でさっと湿らせておきましょう。しなやかになって包みやすいです。おにぎりのご飯粒などもこびりつきにくくなります。
電子レンジはNG!
経木は極薄の木片です。焦げてしまうので、電子レンジやトースターでは使用できません。
また、経木を食品に使う場合、衛生上1回限りの使用が基本です。
植物パワーを秘めた「経木」が、家でもキャンプでも大活躍しそう!
国産の木材を継続して使うことで、森林の保全にもつながります。そして、アウトドア好きのあなたなら、ほのかな木の香りのなかに癒しや安らぎが感じられるはず!
昔ながらの方法で作られた経木。この薄い1枚に、自然由来のすぐれたパワーを備えています。環境にやさしく、脱プラにもつながる経木を、キャンプや普段の暮らしに採り入れてみませんか?