【ナイフの種類と選び方】刃付けの形状だけで4種類!?木村ミサのブッシュクラフト入門 #02
モデルでありイチ・キャンパーの木村ミサちゃんの憧れからスタートした当連載。一人前のブッシュクラフターになるために「薪の選び方」や「フェザースティックのやり方」、「ファットウッドの探し方」など、可愛らしい見た目とは裏腹に男前なスキルを学んでいく成長記録です。#02は、ブッシュクラフトに必要不可欠なツール、「ナイフ」についてのお話。
2023/04/05 更新
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CAMP HACK編集部
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ブッシュクラフトデビューに向け「ミサミサ、ナイフを買う。」
「趣味でキャンプはしてるけど、ブッシュクラフトは未経験」という木村ミサちゃんが、読者の等身大となってブッシュクラフトのノウハウを学ぶ、リアルな成長記録。
木村ミサ
きむら・みさ 1990年、群馬県生まれ。好きなことを仕事にする“推しごとをお仕事へ”をモットーに、モデルとして活動する傍ら、ライフスタイルメディア「Hanako」でお茶連載、グルメニュースサイト「macaroni」でカレーレシピ連載を持つなど、マルチに活躍。“ミサミサ”の愛称で親しまれている(@misaxmas)。
前回は、ブッシュクラフトに必要な“最低限の装備”について色々と学んだわけですが、そのなかの見本として出てきた“特異”なナイフにやや困惑気味……。「え、これもナイフ?」。
「ないものは作る」を真髄とするブッシュクラフトだけあり、調理に加えて道具を作る際にも活躍するナイフのセレクトは失敗が許されません。そこで今回は、より詳しくナイフの選び方について学んでいきます。
▼前回の「#1」はこちら
ブッシュクラフトにおけるナイフの重要性って?
多様な道具に頼らず、最低限のギアと“生活の知恵”を駆使してアウトドアを楽しむブッシュクラフト。
なかでも薪の加工やロープのカット、ペグやカトラリーのウッドクラフト、調理までの全てを担うナイフは、ブッシュクラフトにおいてもはや“相棒”ともなる欠かせないものです。
とはいえ、一口にナイフといってもその種類は数知れず。パーツに用いられる素材も違えば、ブレードやハンドル、全体像までも用途によってその形状が変わってきます。もちろん、最終的に“好み”も大きな判断材料になってくるのですが、最初の一手で間違えるのだけは避けたいところ。
そこで今回も、アウトドアライフアドバイザーである寒川さんのもと「ナイフの選び方」を学びます。
自分に合ったナイフの選び方
刃の形状で選ぶ
アウトドアショップ「UPI 鎌倉」のアドバイザーを務める寒川一さん。防災やキャンプ関連のイベントで講師として登場するほか、ラジオから雑誌まで幅広いメディアで活躍し、著書には「アウトドアテクニック図鑑(池田書店)」などがある。
ミサちゃんは、ブッシュクラフトに使うナイフにどんなイメージを持ってますか?
刃先が鋭く、尖ったイメージを持ってたんですけど、前回見たのは四角いブレードで……。あれ?って。
そう、それです! これもブッシュクラフトで使うナイフなんですか?
もちろん、これで薪を加工したりできます。でも、ブッシュクラフトナイフというよりかは、現場用のナイフ。
モーラナイフの“働くナイフ”っていうシリーズで、何かを剥がす際のスクレーパーとしての役割に重きを置いたデルです。
へぇ〜。まさに現場仕事で使うような! でも、ホントに色んなブレードパターンがあるんですね。
ミサミサが言うように、ブレードの形状にはさまざまな種類が! それぞれ得意な用途が変わるそうで、ここで少し事例をご紹介します。
刃の先端に近づくほど鋭くなる「クリップ・ポイント」
例えば、この画像のナイフのように刃の先端(ポイント)に近づくほど鋭くなる「クリップ・ポイント」は狩猟向き。
刃先が緩やかに落ちる「ドロップ・ポイント」
そして、刃先が緩やかに落ちる「ドロップ・ポイント」は指を宛てがいながら作業をするのに都合が良く、小型なら果物の皮むきなどにも向いていると言われています。
形状にクセのない「ユーティリティ」
また形状にクセのない「ユーティリティ」はオールマイティに使える、まさに万能なブレードです。
▼ナイフの形状についてもっと知りたい方はこちら
ナイフの刃付け部分「グラインド」について知っておこう
ブレードパターンによって適材適所があるように、じつは刃付けの形状にも種類があって。それぞれで用途の向き不向きがあるんです。
ナイフの刃付け部分をグラインドって言って、例えばそのアメリカ製のフォールディングナイフは「ホロウグラインド」。特徴としては、えぐれていて先に小さな刃がついてる。
でしょ? 一方で、凸状にふくらんでいるのは「コンベックスグラインド」と言って、別名“ハマグリ刃”。
さきほど話に出たモーラナイフなんかは全てV型の形状をしてて、それを「スカンジグラインド」って言います。真っ直ぐなのは「フラットグラインド」。
ずばり、右にいくにつれて、強度が高くなります。「コンベックス」は、丈夫で刃持ちが良い。逆に、細い「ホロウ」はシャープな切れ味が特徴なんだけど、耐久性はやや劣ります。
なるほど! 強度が高いとナイフの役割が変わってくるんですか?
そのとおり。ナイフで木を切る技術を “バトニング”と言うんだけど、そのバトニングには「コンベックス」が一番破壊力がありますね。パカーンって。イメージ的には、木の中に太いものがグッと入って、しっかり“木を割いていく”みたいな。
そして「ホロウ」は、シャープなので“木への食い込み”はすごく良いんだけど、“木を割いていく”と言うよりかは“食い込んでいく”感じ。なので、バトニングに有効なのは、やはり刃付けのふくらんでいる「コンベックス」。
グラインドによって“研ぐ難易度”も変わってくる
ナイフは、使えば使うほど切れ味が落ちたり、かけたりしますよね?
なので、切れ味を保つために研がなくちゃいけないんですけど、ちょっと細かい話があって。「ホロウ」と「フラット」には“ベベル”って言って、先端に小さい刃があるでしょ?
要はその小さい方の“ベベル”でモノを切っていくわけ。なので、切れ味が落ちたらそこを研ぐ。もちろん、この“ベベル”が欠けたら修繕は大変だけど、研ぐこと自体は割と簡単。ただ、錆びてくると「ホロウ」はくびれてる箇所も研ぐ必要があるので、そこを研ぐのは難しいですね。
そうなると直線でV型の「スカンジ」は一番研ぎやすそう! ……合ってますか?笑
そうなんです。「スカンジ」はそう言った点で非常に扱いやすい。「コンベックス」にも稀に“ベベル”があったりするんですけど、基本的にはこうやってカーブを描いてるので、やっぱ研ぐのは難しいですよね。
▼ナイフの研ぎ方をもっと知りたい方はこちら
素材で選ぶ
同じモデルでも、「ステンレス」と「カーボン」の素材があるんですね。
そうですね。鋼材もナイフ選びでは大事なポイントです。「ステンレス」の特徴は絶対的にサビにくい。サビないとは言いきれないんですけど、メンテナンスに神経質にならなくていいのが魅力です。
かたや、「カーボン」は炭素が鉄の中に含まれていて、素材自体がすごい硬いんですよ。でも、錆びやすい。濡らして放っておくとすぐ錆びちゃいます。
なるほど。サビの強さをとるか、刃自体の強度を取るか……ですね?
「ステンレス」と「カーボン」の良し悪しはよく論争になるんですけど(笑)。正直、お好みです。
ただ、「カーボン」は錆やすいんですけど、「ステンレス」に比べると研ぎやすいというメリットもあります。
クラシックなモデルも渋い……!
ノルウェーのメーカー、ヘレナイフですね。こっちは、どちらかというと趣味のナイフで、ハンドルに一個一個模様が入っていてカッコいいですよね。
こっちも、木製のハンドルを使ったモーラナイフのクラシックシリーズ。同じに見えても、木目が違って……。
モーラナイフの伝統的なモデルで、シース部分のレザーもまた渋いですよね。昔はね、ケース自体もレザーだったんですよ。でも、「皮だと水分を吸って衛生的じゃない」ってことで今はプラスチックに。
最初の1本はレザー?プラスチック?
もちろん、レザーは味わいがあってかっこいいんですけど、最初の一本ってなるとプラスチック製のカバーの方がオススメですね。
プラスチックだと水分を一切吸わないのでナイフが錆びにくい。グリップも木製よりかは樹脂がビギナー向きです。素手で握ったときのグリップの良さは、おそらく“木”以上。吸い付くような感じ。
でしょ? このグリップの良さは、ブッシュクラフトに限らず、ハンティングの人たちにもすごく定評があって。僕はやったことないですけど、狩った獲物を解体するとき「血と油でぬるぬるになっても滑らないってところが評価されているみたいです。
構造で選ぶ
あとは、構造の違い。大きく分けると「シースナイフ」と「フォールディグナイフ」があって……。
そうですね。「シースナイフ」は上の画像のように刃から持ち手部分までが一体になっていて、刃渡りの長さが特徴。折り畳むことはできないけどすごく頑丈で、バトニングなど力を必要とする作業に安心して使えます。
▼バトニングについてもっと知りたい方はこちら
一方、「フォールディングナイフ」は折り畳める仕様が大きな特徴。コンパクトに携帯できて便利だけれど、比較的に小さなモデルが多いのでバトニングというよりかはロープを切ったりする力を必要としない作業に向いてます。
そう。ちなみに、今持っているそれはモーラナイフの「ガーバーグ」っていうモデルで、「シースナイフ」の中でも特に強度のある
「フルタング」構造。ブレードを構成する1枚の金属板がハンドルまで通っているっていうものです。
▼「ガーバーグ」についてもっと知りたい方はこちら
▼「ナイフの構造」についてもっと知りたい方はこちらミサミサ、はじめてのナイフを「ガチ選び」
頭の中で何かを諭すミサミサ……。
(……この「ガーバーグ」って、モーラナイフだから「スカンジグラインド」。ある程度強度もあって、研ぎやすいのが魅力。「フルタング」だし、鋼材も「カーボン」を選べばよりタフに使える。ただ、「ステンレス」に比べるとサビに弱い……だっけ?)
(でも、ナイフの弱点は自分次第で克服できるし、寒川さんが「カーボン」は研ぎやすいって言ってたし……。ブツブツブツ……)
「ガーバーグ」、かなり気になってるみたいですね〜。
今日聞いた話を色々整理すると、コレが一番いいんじゃ?って。
そうですね。「ガーバーグ」はモーラナイフのハイエンドモデル。一番屈強な、言ってしまえば頂点です。
でも、どんなに頑丈でも間違った知識で扱うともちろん刃こぼれもします。まだナイフ自体に慣れていない最初のうちはエントリーモデルで練習し、ナイフに慣れて、いつか「ガーバーグ」っていう選択がいいのかもしれません。
お、いいセレクトですね! しかも「カーボン」って、渋いですよ。
サビに弱いって弱点は、しっかりメンテナンスしてあげれば自分次第で克服できるかなって。だから、強度のある「カーボン」がいいかなって。
僕らも、ビギナーの方にはモーラナイフの「コンパニオン」か「コンパニオン ヘビーデューティー」をオススメしています。
●刃素材:カーボンスチール ●刃長:約104mm ●全長:約218mm ●刃厚:約2.0mm ●重量:約77g(ナイフのみの重量)
モーラナイフ コンパニオン ヘビーデューティー ステンレススチール
●刃素材:ステンレスブレード ●刃長:約100mm ●全長:約220mm ●刃厚:約3.2mm ●重量:約101g(ナイフのみの重量)
●刃素材:ステンレススチール ●刃長:約59mm ●全長:約143mm ●刃厚:約2.0mm ●重量:約80g(ナイフのみの重量)
寒川さん愛用のモーラナイフ「カンスボル」。
ちなみにコレ、「エルドリス スタンダード」じゃないんですけど……。僕が普段使ってる「カンスボル」ってモデルです。刃の厚みが途中から変わってますよね。
シャープな刃先ではお肉を切ったり、刺身を作ったりと細やかな作業を。で、奥はかなり分厚いんでバトニングにも適してる。調理もできて、叩いても OK。二つのナイフの特徴を持ちあわせてるんです。
そしてこの刃の形状は、「エルドリス スタンダード」も同様にあって。
モーラナイフ「エルドリス スタンダード」
料理ができて、小型ながらもバトニングも! そして、パラコード付きの「エルドリス ネックナイフキット」は、そうやって首からもかけられる。ブッシュクラフト中、一本身につけておくと便利ですよね。
そう、「エルドリス ネックナイフキット」はメタルマッチもセットでついてくるんです。
エルドリスの活用方法については、こちらの下記記事で寒川さんが詳しくレポートしてくれているのでぜひ見てみてください。
ミサミサの本日の収穫!
寒川さんのレクチャーを受け、ミサミサが購入したのがコチラ! モーラナイフの「コンパニオン カーボン」と「エルドリス ネックナイフキット」です。
●刃素材:カーボンスチール ●刃長:約104mm ●全長:約218mm ●刃厚:約2.0mm ●重量:約77g(ナイフのみの重量)
●全長:143mm ●刃長:59mm ●刃厚:2.0mm ●重量:80g ●ブレード鋼材:ステンレススチール
刃渡りの長い「コンパニオン カーボン」をメイン使いに、私アウトドア料理が好きなので「エルドリス ネックナイフキット」で調理を楽しみつつ、火起こしもコレでがんばります!
その組み合わせは、すごくいいです! 買い物上手ですね〜。
ナイフ選びは無事成功! 次回は、ナイフの使い方を学ぶ
初めてのナイフにカーボンという激シブなセレクトをしてみせた、ミサミサ。流石のその選択にはスタッフ陣も脱帽です。
さて、今回は奥深い「ナイフ選び」を学んだわけですが、次回の#03では早速そのMYナイフを使って“アレ”を作っちゃいます! ときより見せる、ミサミサのクールな表情にもご注目あれ!
今回撮影に協力してくれた店舗
UPI 鎌倉
住所:神奈川県鎌倉市御成町13-36 御成町テラス1階(JR鎌倉駅西口 徒歩2分)
営業日:11:00-19:00(月・火・木・金)、10:00-18:00(土・日・祝)
定休日:水曜日
PHOTO:きるけ。 EDIT&TEXT:GGGC
▼続きの「#03」はこちら
▼「#01」はこちら