アウトドアシーンを牽引する3人が2020年のキャンプシーンを大予測
次々と新しいギアやブランドが登場し、多様化する現在のキャンプシーン。2020年はいったいどんなブームが巻き起こるのか!? そんな気になる今年のトレンドを、アウトドアシーンに精通する3人に予測していただきました。
ご登場いただいたのは、群馬県桐生市の人気ショップ「パーヴェイヤーズ」のオーナー小林宏明さん(左)、雑誌やテレビなど幅広く活躍するスタリストの平健一さん(中央)、ガレージブランド「H&O」のオーナーでプロダクトデザイナーの奥野順平さんのお三方。それぞれ異なる立場からアウトドアに携わる3名に直撃しました!
まずは昨今のキャンプシーンについて
──まずは2019年を終えて、みなさん昨今のキャンプシーンをどのように捉えているか聞かせてください。
平:去年はガレージブランドの台頭が著しかったですね。規模が大きくなって会社化する人も結構いらっしゃって。あとキャンプの愉しみ方もいろいろでてきて、ソロキャンプがメディアを席巻しましたし、サウナキャンプとかお家でグランピングとか、新しい流れもでてきました。アウトドアの垣根がなくなった1年だったのではないでしょうか?
小林:まさに、多様性が生まれた1年でした。来店されるお客さんもいろんな方がいるんですが、みんなそれぞれのスタイルを持っているんです。キャンプ=趣味ではなく、ライフスタイルに溶け込んできている感じがしています。
奥野:そうそう、これまでキャンプって趣味の一環で「頑張って行くぞ!」っていう感じだったのが、家のものまで持ち出して気軽にキャンプ場へ行く人も増えましたよね。家と外の境界線がどんどんなくなってきている感じがしています。
──なるほど。では、その辺りの状況を踏まえて、2020年の方向性を予測していきましょう!
2020年、キャンパーが注目すべきブランドは?
ガレージブランドはタッグを組み、より個性を増す時代へ
──コアなキャンパーたちから人気のガレージブランドですが、その流れは今年も続きそうでしょうか?
平:たとえば「アシモクラフツ」×「38Explore」のコラボモデルは昨年末に登場して話題となりましたが、今年はガレージブランド同士のダブル・トリプルネームがさらに勢いを増していく気がしています。アウトドアショップ「Orange」が「ogawa」に別注したアポロンTCのように、ショップ別注でオリジナル商品を作ったりといった流れも増えそうですね。
奥野:僕ががやりたいのも、まさにそういうモノ作り。自分ひとりの力だと出せない商品ってあるんですが、コラボすることで今後生まれるものがありそうですね。
和歌山の「ブラント」というショップから企画をもらって作った、この蚊取り線香ケースもそう。ある意味ぶっとんだ個性的な商品だけど、大手だとなかなかできない試みですよね。
小林:うちでも、個人の手作りのプロダクトには力をいれています。そのひとつである富山の「ENTOHO(エントホ)」のタープポールは人気があって、入荷してもすぐに売れちゃいます。
平:本物の枝を加工してポールにしてるんですね、いいですね! オリジナリティがあるブランドは、やっぱり魅力的です。
小林:ネックは需要と供給のバランスなんですが、どうしても手間がかかっちゃうモノってやっぱりモノとしても良いし、惹かれます。
奥野:数が作れないだけに、いろんな店に置いてもらうことも難しいですよね。一方で、どこでも買えるようなギアだとブランド価値を保てなくなるから、そのバランスが難しいのですが。
小林:とにかく、他のブランドにはない魅力があって特化している方が良いし、その細分化はますます激しくなってくると思います。
専業メーカーがキャンプ業界に参入
──大手メーカーの動向で気になるところはありますか?
小林:今年の注目ブランドとして挙げたいのが、カッターメーカーの老舗「オルファ」ですね。今度キャンプやブッシュクラフトに特化した新ブランド「オルファ ワークス」が立ち上がるんです。
平:おお! これは面白いですね。見た目もアウトドアテイストのデザインでお洒落。売れそうですね。
小林:2月末に一斉発売になるんですが、ノコギリが2000円・ナイフが1300円~1400円ととにかく安いんです。しかもどれもが替刃式(笑)。
奥野:やばい、めちゃめちゃ売れそう。こういう得意ジャンルをアウトドアに転化したブランドは、今後もどんどん出てきそうですね。
小林:そうですね。実際、その手の問い合わせは多いですよ。老舗手袋メーカーが作ったアウトドアグローブとか、昔から一貫してモノ作りをしていた会社が、自社の技術をキャンプ向けにアレンジしたものが増えています。生産体制がしっかりしているので、ガレージブランドにとっては驚異となるのではないでしょうか?
平:北海道の「トリパスプロダクツ」の焚き火台は突き抜けて良いですよね。薪を置いた姿がとにかくカッコいい!
小林:金属加工会社がはじめたブランドで、品質は折り紙付き。うちでも取り扱っていますが、ブランディングにかなりこだわりを感じるメーカーですね。こういうブランドが増えてくると、もっとおもしろくなりますよね。
海外勢はアジアに注目
──海外のブランドで気になるところはありますか?
小林:ウルトラライト(UL)系だと、新しいブランドがどんどん出てきていますね。
平:確かに、そっち系は豊作。やたら小さくなる大容量のバッグとか。各社の展示会でも、UL系の新ブランドはよく見かけました。
奥野:キャンプに限ればアジア圏は盛り上がってきていますよね。台湾とか韓国とか。台湾はキャンプブームが来ていて、日本人顔負けのコアなコレクターも多くて、熱量も高いです。仕事の関係で10年ほど前から頻繁に訪れていますが、年々盛り上がりを感じます。
──韓国はいかがでしょう? ヘリノックスとか、すでにメジャー化したブランドもありますが。
奥野:韓国はいいブランドもいっぱいあるのですが、正直、日本のブームに乗っかっている感じで。似たような商品が多いのがちょっと残念。
小林:それはありますね。でも、模倣品が多いなかで、デザイナーのアイデンティティが出ていてどこにもない商品を作っているデザイナーもいます。香港のデザイナーでタラ・ポキーという人が手掛けている「プレテント」はかっこいいですよ。
平:デザインが美しいですね。ソロテントだけど、あまり見たことがない形状です。
奥野:やっぱり、デザイナーの個性があるもののほうが、ブランドとしては長続きしますよね。
2020年、盛り上がりそうなキャンプスタイルは?
ソロが増え、グループキャンプの楽しみ方も変わってきた
──2019年はソロキャンプが注目を集めましたが、今年はどうでしょうか?
平:ソロキャンプのスタイルはますます細分化していくでしょう。ブッシュ系にいったり、ハンモックだけで楽しんだり。
奥野:僕も実はソロキャンプが一番好きなスタイル。一人ぼっちを楽しみたいので、友人にも内緒でこっそり行ったりしています。キャンプ場の隅っこの方にテントを張って、酒を飲みながらホラー映画を観るのが楽しいんです。
小林:マジですか!? それはすごく怖そう(笑)。
奥野:あと、グルキャンの楽しみ方が変わってきている気がします。以前は大きな幕を張ってそこにみんなが集まってワイワイ楽しむという感じでしたけど、最近はグループで同じテントやタープを持ち寄って連結してみたり。サイトのコーディネートに企画性も加わって、雰囲気だけじゃなくスタイリング自体を楽しむ人が増えてきていますね。
平:ユーザーって本当にいろいろな楽しみ方を知っていますよね。メーカーの人でも気づかないような張り方をしてみたり。多様性があって面白い。
ポータブル電源を活かした家電キャンプが盛り上がる
──キャンプ場での過ごし方で気になる動きはありますか?
平:キャンプ場で映画を見たり、ゲームをやったり。家のように過ごしている人が増えましたね。
奥野:ポータブル電源が普及していますからね。特にプロジェクターはサイズも小さくなって機能性もアップしているので利用する人が増えている気がします。
小林:僕も先日、プロジェクターを買いました。アンカーの「ネブラ」はめっちゃいいですよ。輝度が高いので映像がキレイですし、ネットフリックスのアプリもプリインストールされているから、スマホでテザリングすれば簡単に映画が観れます。子供たちは大喜びですよ。
アンカー ネブラ カプセル プロ
奥野:最近のポータブル電源は容量も大きくなっているので、大抵の家電製品は使えますからね。僕は先日、容量が400000mAh近くあって定格出力1000w出るやつを買いました。ドライヤーも使えますし、この容量ならホットカーペットもいけそうなので、今度試してくる予定です。
平:家電キャンプ、今年は絶対盛り上がりますね。昔、デートでドライブインシアターが流行りましたが、これからは映画キャンプ。「映画を見にキャンプ行こうよ」が誘い文句になる日も近そうです(笑)!
2020年、あなたはどんなキャンプを楽しみますか?
ときにキャンパーとして、ときにプロダクト・スタイリング提唱者として様々な角度からアウトドアシーンに携わる3名の予測、いかがでしたか? キャンプはブームからライフスタイルへと昇華し、ますます気軽で快適に、好きなスタイルを追求する時代がやってきそうです。
読者のみなさんは今年、どんなキャンプを楽しみたいですか?