キャンパーなら覚えておきたい、ナイフの基本の「キ」
「ナイフって扱いが難しそうだから、買うのをためらってしまう……」。もしくは「買ったはいいけど、あまり使わず飾りになっちゃっている」そんな方、意外と多くありませんか? かくいう筆者も、買ったけど活用できずにいる派です。
そこで今回、キャンプに役立つナイフの基本を、クラフト作家として日々ナイフに親しむ長野修平さんにレクチャーしていただきます。基礎知識の【入門編】とテクニックを紹介する【実践編】、前後編に渡ってたっぷりお届けしますよ。
モーラナイフ スウェーデン公認アンバサダーでもある長野さん
「刃物のある暮らしが大好き」と語る長野修平さんは、ご自宅から生活道具・料理まで、さまざまな刃物を駆使したDIYライフを実践する、いわば刃物のスペシャリスト。
スウェーデンのナイフメーカー「モーラナイフ」の日本・台湾アンバサダーとしても活動しており、仕事では自然素材を使ったクラフト作家として、全国各地でワークショップを行っています。
そんな長野さんを講師に迎え、キャンプシーンに絞って知っておくべきナイフの基礎知識をご教授いただきました。
キャンプ用ナイフを選ぶには、ある2点に注目すべし
質実剛健な作りかつ手頃な価格帯から、アウトドアジャンル内外で幅広く愛されているモーラナイフ。一口にキャンプ用と言っても、ラインナップの数はとにかく豊富。ナイフビギナーが自分にぴったりの1本を見つけ出すのは、至難の業です。
モーラナイフはいくつかのカテゴリーにわかれていて、キャンプで使うのであれば「アウトドア」というシリーズに絞ると良いでしょう。といってもご覧の通り、刃の長さや持ち手の形状など、個性はさまざまです。
ですのでここから絞り込むために、まずは素材の違いと背の形状に注目するといいでしょう。
ステンレスとカーボン、どっちを選ぶべき?
ナイフの素材は大きく2つ、ステンレススチールとカーボンスチールです。ぱっと見では気づかないのですが、よーく見ると、ナイフ表面に「CARBON」と「STAINLESS」の文字が刻印されているのが分かります。
ステンレスは錆びにくく切れ味も持続するのでメンテナンスを多少サボっても問題ありません。切り味はぬる~っとした感じ。
一方、カーボンは錆びやすいのでこまめなメンテナンスが不可欠ですが、切れ味がとてもシャープです。
細かい木工クラフトをやらない限り、初心者はステンレスからで十分とのこと。価格もカーボンより安価で手に入れやすいのが魅力ですね。
刃の長さよりも、背の形状に注目
ナイフは刃の長さに目が行きがちですが「キャンプ用であれば背の部分の厚さやエッジの有無に注目したほうがよい」と長野さん。
厚さは2.0mm、2.5mm、3.2mmあたりが一般的です。料理用であれば薄い方が切りやすいですが、バトニングで薪割りなどにも使うのであれば厚いほうが割りやすくなります。
ファイヤースティックをこするためにナイフを使う場合は、背の部分が丸まっていない角張ったタイプを選ぶようにしましょう。
写真の左側は2.5mm厚で背が丸まったタイプ、右側は3.2mm厚で背が角張ったタイプ。自分のスタイルにあった1本を選ぶようにしましょう。
次に覚えておきたいのが、ナイフの基本的なグリップ(握り方)です。
ナイフの握り方は作業目的によって違う
フェザースティックを作る場合は「握りやすいと感じる位置」で握る
ナイフは作業によって使う刃の部分が変わります。フェザースティックに代表される木を削る作業は、刃の根元を使い刃先を上から下へ向かう動作です。力がしっかり伝わるよう、一番握りやすいポジションで行いましょう。
箸や串を作る場合は「刃先を動かしやすい位置」で握る
次に、枝を使って箸やバーベキュー用の串を作る場合は、刃の先端を使う細かい動作になります。写真のように背の部分に親指を当て、刃のストロークを短くするとナイフが安定します。
ロープを切るときは「親指が上に来るように」握る
ロープを切るときは、身体にナイフを押し当ててナイフごと身体を前へ突き出し、ナイフ自体は動かさないのがポイント。親指が上に来るようにグリップするとナイフがしっかり固定できるので、ロープが切れる瞬間でもナイフの刃が思わぬ方向へ動くことがなく安全に作業が行えます。
さて次は「ナイフの置き方」。目にしたことのある方も多いあの置き方には、ちゃんと理由があるようです。
あのナイフの置き方は、かっこいいだけじゃない理由があった!
よく見かける、丸太などに突き刺さったナイフ。見た目もかっこいいですがじつはこれ、作業を一時的に中断するときのナイフの置き方としては理に叶ったひとつの方法でもあります。
すぐに作業をはじめるのであれば、木に刺しておくのが目立つし、手に取りやすいのでおすすめです。テーブルや地面に寝かした状態で置いておくと他の人が気づきにくいですし、思わぬケガの原因にもなりかねません。
ナイフによってはシース(収納ケース)が付属しているものもあります。木に刺すのに慣れていない場合は十分に注意して、難しければ面倒でも毎度シースにしまうようにしましょう。
ロック機構があるシースの場合は、手のひらでしっかり押し込んでカチッという音や、グッと入った感触を確認してください。中途半端に入った状態だと抜けて落下することがあるので、注意が必要です。
さらに、愛用ナイフを長く使うために欠かせないメンテナンスについても伺いました。
切れ味を保つためのメンテナンス方法
切れ味が長持ちするステンレス素材といえども、「できることなら使ったあとは軽く研いでください」と長野さん。ナイフとあわせてシャープナーも一緒に買っておくとよいでしょう。
研ぐ時はナイフの刃の角度に合わせてシャープナーを置き、刃の根元から刃先に向かって軽く撫でるようにスライドさせます。その後は写真のようにもう少し角度を付けた状態で同じように根元から刃先へスライドさせていくと、刃が付いてきます。
1分くらいでよいので、これをやるだけで切れ味は担保できますよ。
モーラナイフ ダイヤモンドシャープナー
ナイフの基本を知ったところで、キャンプに役立つおすすめの1本を挙げていただきました。
長野さんが選ぶ、キャンプにベストなナイフはこれ!
数あるナイフの中からキャンプシーンに一番フィットすると選んでくれたのが、モーラナイフの「コンパニオン スパーク」。
キャンプナイフで最初の1本としておすすめなのがこちらです。刃厚は2.5mmなので料理にも使えますし、細めの薪であればバトニング(ナイフで薪を割る作業)もこなせます。
ハンドル内部にファイヤースターターが収納されているので、火起こしもできます。
ファイヤースティックで着火する場合は、小さな板の上などにほぐした麻ひもを置いてやるのがベスト。焚き火台の上でやろうとする人が多いのですが、ナイフが固定できず危険なのでおすすめしません。
コツは足の甲にナイフを握った手を置いて固定し、ファイヤースティックを引くように動かすことです。
着火した火種は板にのせたまま、そ~っと焚き火台に移動すればOKとのこと。おすすめのナイフで、ぜひ挑戦してみましょう!
モーラナイフ コンパニオン スパーク
基本を知れば、もっとナイフで遊びたくなる
ナイフの選び方と基本的な扱い方、お分かりいただけたでしょうか。持っていない人はまず1本、すでに持っている人は次のキャンプで試してみましょう。
そして次回は実践編として、キャンプの時に活用できるテクニックを紹介します。こちらもぜひご期待ください!