自立するフレームに引っ掛けていくだけ
画像は「クク1」の設営時(黄色線がメインフレーム)
小杉さん:「クク1」「クク2」では、共に、「Y」の字を2つ繋げたような「逆Y字」のメインフレームで設営のしやすさを実現しています。
画像は「クク1」のハブ部分
画像はクク2のハブ部分
小杉さん:中央から両サイドに分岐する接続部分は「ハブ」が支える構造となっています。
中心を支える1本のアーチポールを分岐させることで、全体のポール本数をなるべく抑えつつ、高いレベルで耐風性も確保できる効率的な作りになっています。
小杉さん:さらに、両サイドが「逆Y字」型である大きなメリットは、メインフレームを4コーナーに連結した段階でしっかりと自立する点です。
これにより、パタパタと倒れて設営がしにくいアーチポールの弱点を克服しています。
メインフレームへの「吊り下げ式」でよりスムーズな設営を可能に
小杉さん:「逆Y字」フレーム自体は、山岳テントに古くからある基礎構造ですが、メインフレームへのフックによる吊り下げ式なのが、キャンプ仕様のテントにはなかった新しい特徴です。
キャンプ仕様のテントでは、基礎構造となるフレームをスリーブに通すタイプが一般的ですが、スリーブに通したフレームごと生地を持ち上げるのはかなりの力が必要になります。
小杉さん:そこで、最初の段階で自立したメインフレームに、生地をフックで吊り下げるという構造を採用し、設営時の労力を大幅に軽減しました。
あとは生地が持ち上がった状態で、左右のアーチポールとバックパネルのフレームをスリーブに通す作業でほぼ完了。とてもスムーズに設営できます。
小杉さん:また、メインフレームから左右に分岐したポールは、両サイドの他2本のアーチポールの下部とそれぞれクロスする構造に。
計4箇所でクロスして頼り合う構造で、全体の強度を上げているポイントにもなっています。
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大きなサイドパネルを含む、4方向からアクセス可能
クク1
小杉さん:左右にも大きなサイドパネルを設け、前後ドアパネルと合わせて4方向からの通気と出入りが可能です。
空調のコントロールがしやすく、使い勝手の良さやレイアウトのしやすさも高めた設計となっています。
「クク1」ではちょうどインナーテントのサイドパネルとリンクしており、インナーテントのサイドからも直接出入りが可能です。
クク2
小杉さん:リビングスペースが大きい「クク2」の方は、リビングから直接出入りが可能です。
その代わり、インナーテントのサイドパネルからは出入りできず、メッシュパネルに切り替えれば通気できる窓になっています。
ゼインアーツらしさと利便性が共存する「バックパネル」
小杉さん:後方パネルのフレームとインナーテントは、「ゼクー」などでお馴染みの、内側へと傾斜した形状、ドアを開けた状態でも雨が入りにくいです。
また、ゼインアーツらしいデザイン性と、初めてテントを使う方でも違和感のないデザインとのバランスも考慮。内側へ切り込む形にはせず、サイドウォールを出して後室のある設計にしました。
画像はクク1のバックパネル
画像はクク2のバックパネル/メッシュクローズ時
小杉さん:なので、インナーテントの後方にも靴を置いたり、ちょっとしたギアを置けるスペースがあります。
出入りするにはやや小さいドアパネルですが、夜間トイレに行くときなんかに、手前側の人を起こすことなく、後ろからそっと出ることもできて便利です。
それぞれ、どんなスタイルにマッチする?
シンプルかつフレキシブルな「クク1」
小杉さん:「クク1」は、あくまで寝室が主体の1ルームテント。前室部分は4人用リビングとして使える広さはありません。
ただ、例えばデュオキャンプの朝に2人でコーヒータイムを楽しむなど、ちょっとした作業をするくらいのスペースはあります。
小杉さん:リビングを拡張したい場合は、別売りのサブポールでキャノピーを跳ね上げることも可能です。
なので、テント自体は「寝る場所」としての機能があれば十分、広いリビングが必要ならタープを貼る、といったシンプルかつ臨機応変なスタイルにマッチするかと思います。
冬のお篭りスタイルにも対応する「クク2」
小杉さん:一方の「クク2」は、2ルームテントとして4人で過ごせるリビングスペースもしっかりと確保しています。
室内高も最大210cmあるので、立ったままでもストレスなく移動や作業が可能です。
小杉さん:夜に寝るだけではなく、日中も長い時間、快適に過ごせる空間を想定しているので、冷気の侵入を防ぐスカートが全周に付いているのも「クク2」の特徴です。(クク1にスカートはありません)
冬の寒い時期のお篭りスタイルに、またインナーを外せば大型シェルターになるので、グループでの宴開幕などにお使いいただくのにも最適です。
低価格を実現できた理由とその背景とは…?
──ズバリ、低価格を実現できたポイントとは?
小杉さん:この価格を実現できた最も大きなポイントは、流通の方法です。今回の新作テントは、EC=通販限定での販売となっています。
ゼインアーツ公式ストアでの通販に限定することで、流通がものすごくコンパクトになって、中間コストを大幅に減らせます。それがコストダウンの大きな理由です。
小杉さん:ゼインアーツの製品を、価格がネックとなって買えない方がいるのであれば、こんな方法、こんな買い方ならどうですか、という新たな提案ですね。
EC限定販売で、より買いやすい状況=お求めやすい価格が実現できるのなら、ひとまずトライアルとして一回やってみようと。
もちろんデメリットも
小杉さん:ただ、その反面大きなデメリットも。全国のショップに並ばないので、目に触れる機会が圧倒的に減り、我々が訴求する状況もグッと狭まります。
ですので、より多くの人たちに届けたい気持ちが出発点ではあるんですが、正直、私自身も結果が予測できない側面があります。
──素材やスペック面でコストダウンを図った部分は?
小杉さん:フレームはいつもと変わらず6000番台のアルミ合金を使っています。大きく変わったのは生地です。
小杉さん:今までのテントは、シリコンコーティングの高強度で軽量な高スペック素材で、格子状のリップストップナイロンという生地を使っていました。
ですが今回は、ごく一般的なポリエステルタフタ素材で、環境に負荷のないフッ素コーティング生地です。
いわゆる一般的なメーカーさんと同じ生地を使ったのが、素材面で唯一コストダウンを図った部分です。これまでハイスペックな生地だったのを一般的なテントに使われる生地にしただけで、低品質な生地ではありませんのでご安心を。
──新作テントはどんな人に届けていきたい?
小杉さん:我々が提供するプロダクトは、キャンプや自然を楽しむだけでなく、野外での生活体験を通して、生きる力を養うことにも直結していると思っています。
なので、社会情勢による物価高騰の影響を受け、キャンプギアも買いにくくなり、自然に触れる機会が遠ざかっていく事態を、なんとかしたいという思いがありました。
そこで、流通を見直してコストダウンを実現したのですが、それによって、キャンプを始めたいけど価格がハードルになっていた方にも、届けていきたいですね。
そして、より多くの人たちに使っていただき、キャンプを楽しみながら生きる力を養うということを、積極的におこなっていただければと考えています。
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ブレない思いが結実した、ワンランク上の“激安”
“激安”の言葉通り、破格のお値段だった「クク1」と「クク2」。しかし、実際にスペック面でグレードダウンした部分は生地のみ。
筆者的には、その他の魅力が補って余りあるテントだと感じました。欲を言えば、別売で2人用などインナーテントのサイズ展開があれば、より使用シーンの幅が広がる気がします。
細部までキャンプビギナーへの配慮も行き届き、より多くの人へ届けたいという、ブレのないブランドコンセプトが結実したと言える、新作テント2種。
発売は2024年春頃を予定しているそうですが、気になる人は2024年1月に開催される、下記の「3ブランドのテント体験会」で、実物をチェックすることができるそうです。
3ブランドのテント体験会が2024年1月に東京・大阪で開催!
「クク1」「クク2」の発売に先駆け、小杉さんが手掛ける3ブランド、yozora・SABBATICAL・ZANE ARTSのテント体験会が開催!
今回の新作も含め、実際に見て感じて比べることができます。
さらに東京会場では、20日(土)の16:30からスペシャルトークも! 小杉さんとほぼ日代表の糸井重里さん、そしてもう1人、スペシャルなシークレットゲストが参加されるとのこと。ぜひ、この機会をお見逃しなく!
【 東京 】
⚫︎開催場所:新宿住友ビル 三角広場(新宿区西新2-6-1)
⚫︎日時:2024年1月20日(土)11:00〜19:00、21日(日)11:00〜17:00
⚫︎入場:無料
※20日(土)16:30~17:30はトークショー開催のためテントの中に入ることはできません。予めご了承ください。また、トークショー終了後から19:00までは、会場の照明を落とし、 ランタンの灯りを頼りに夜のテントを実感していただけます。
【 大阪 】
⚫︎開催場所:クリエイティブセンター大阪(大阪市住之江区北加賀屋4-1-55)
⚫︎日時:2024年1月27日(土)11:00〜17:00、28日(日)11:00〜17:00
⚫︎入場:無料