ネイチャークラフト作家の長野修平さんに聞く
まず、この4本のなかでもひときわ異彩を放っている「ロンボ」についてお話を伺ったのは、ネイチャークラフト作家の長野修平さんです。
モーラナイフのアンバサダーは、世界で12人いるといわれていますが、アジア圏では長野さんが唯一のアンバサダーです。何やらこの「ロンボ」の開発にも関わっているとの噂も聞いたので突撃してきました。
今回、「ロンボ」の開発にも関わった?
開発というほどの大袈裟なものではないのですが、2年半ぐらい前にモーラナイフからメールが来て「アウトドア用のクッキングナイフについてどう考えている?」と聞かれたので、レポートみたいなものを提出したんです。
そうしたら数か月後に「じつは今、アウトドアクッキング用ナイフを作るという案があって、いくつかプロトタイプを送るから使ってみてくれないか」と言われたんです。
その後、いろいろなタイプのナイフが送られて来ました。そのなかで、「どれが一番良い?」という話になって、家の台所だけではなく、野外などで使ってみた感想をフィードバックして……というやりとりを繰り返しました。
ステンレスについて
日本は湿度が高いので、ブレードは「ステンレス」でないとダメだと伝えました。鉄の刃を錆びさせないように、非常に手間をかけてナイフを守りながら使う、という考え方もありますが、道具をあんまり大事にしすぎるのは、少し違うかなと思うんです。
どちらかというと、自然を楽しむために野外に来るのであって、道具の手入れをしに来ている訳ではない。なのでちょっとぐらい野蛮に、やんちゃに使っても、永く使えるものが好きなんですよね。
そういった意味では、やはりステンレスのほうがいいと思います。錆をいちいち気にしていたら、雨が降って来てもすぐにしまわなきゃいけないので……。
シースについて
「シース」と「グリップ」は、最初は樹脂でもいいかなといっていました。なぜなら、樹脂のほうが管理がラクかなと思ったからです。ただ樹脂のシース内に湿気がこもりやすく、シースは刃が錆びやすいというデメリットもあります。
一方で木のシースというものがあって、これはスウェーデンの木工家の「Jogge」さんという方からもらったものなのですが、白樺の皮のシースで出来ています。
ここにオイルを染み込ませておくとまったくサビないので、オイルが染み込む感じの素材だといいなという話をしたうえでいろいろと試行錯誤した結果、素敵なレザーシースが出来あがりました。
グリップ(ハンドル)について
グリップも樹脂のほうが維持は楽かなと思っていたのですが、ホワイトアッシュのウッドでくるとは思いませんでした。
ホワイトアッシュは重みももちろんあるし、色もきれいなのですが、とにかくねじれが少ないのが特徴ですね。
刃は片刃でできている?
片刃に近いけれど、一応両方から刃はつけてありますが、これはあくまでも片刃に近い両刃という感じです。
元々ついている刃を私は信用していません。なぜなら、刃物は基本的に研ぎながら自分に合わせていくものなので……。というのが実際に長くいろいろなナイフを使っていてとても感じていることですね。
それから、手と刃の間にあるフィンガーガードのような物があることで、いろいろな高さや姿勢で物を切るのが、すごく楽になります。物を切るときに、手が当たらないで使えるんです。
微妙なカーブについて
また、刃が多少カーブしているので細かく切っていくこともできるし、千切りみたいなものもできます。
先端を押し付けて切ることも出来ますし、とにかく手が当たらずに切ることもできます。このナイフはどこでも切ることができるので、使いやすく非常に便利ですよ。
UPI ナイフ&ブッシュクラフトインストラクター越山哲老さんに聞く
残り3本のお話を伺いに行ったのは、過去の動画でも詳しくモーラナイフについてご紹介してくださっている「UPIナイフ&ブッシュクラフトインストラクター」の越山哲老さんです。
普段から使っているナイフは「ガーバーグ」で、今回のナイフと方向性が違うと感じているとのことでした。その特徴など、越山さんが思うことを詳しく伺いました。
越山さんが登場する動画はこちら
「フィン」について
ーまず、詳しく「フィン」について越山さんが思われることをお伺いできますか?
「フィン」以外の3モデルに共通しているのですが、1500年ぐらい前のバイキング船から見つかった「プッコ」という北欧のナイフがあって、その辺がベースになっているということです。
「フィン」は形があんまりドロップしておらず、とくに「プッコ」に近いかなという印象でした。サイズは中指ぐらいなので、(越山さんの場合)すごく小回りが効くと思います。
フルタングでここまで小さいのはあまりないので、欲しくなる一本ですよね。
「ルーク」について
ー次に「ルーク」について、詳しく見ていきましょう。
「ルーク」はどのようなナイフ?
モーラナイフの人気モデル「ガーバーグ」と比較すると、シャープな方向にいったのかなと感じます。「ガーバーグ」以上に強いナイフというのは、多分モーラとして必要ないのではないでしょう。
ファイヤースターターも使えるので、ある程度頑丈さをキープして、シャープな方向を狙ったのかなと。
ナイフはゼロコンマ何ミリの角度や、厚みが非常に重要なんですよね。ほんのちょっとの誤差で切れ味が変わってくる。その違いが楽しめるナイフなんじゃないかなと思います。
「ウィット」について!
最後に「ウィット」について解説していただきます。「ルーク」と似ていますが、どこか違うのでしょうか……。
「ルーク」と似ているが、違うポイントは?
これはね、どこが違うと言われると難しいんですが、「ルーク」と比較すると、刃先が短く、先端の角度がやや下方向に落ちてるんですよね。
重ねて比べるとこんな感じ。ドロップポイントが「ルーク」よりは下がっているし、ハンドルの形は大きく異なっているので、「この違いを楽しんで〜」ということなのでしょう(笑)
ハンドルも違うの?
ハンドルは、「フィンガーガード」と呼ばれる指の引っかかりがなく、ルークより薄くなっています。薄いナイフは持ち方を変えながら使うことができるためハンティングナイフに多くみられる特徴ですね。
ナイフと付き合っていくこと!
用途がナイフによってそれぞれ違うのが良くわかりました。それでは、キャンパーが選ぶとして、どのナイフが合うかなど、おすすめのナイフを越山さんにお伺いしました。
最後に、キャンプにはどれがおすすめ?
たとえば、丈夫なナイフをすでに持っている人がいれば「ルーク」ではなくて、「フィン」をおすすめします。一気にサイズダウンしてみるとか。
買い替えじゃなくて、違うサイズ、違う鋼材を選ぶ、という考え方が良いのではないでしょうか。
ナイフに求めることのベクトルを違う方向に振ると、新しく学ぶことが多分出ると思います。持っていけるのであれば、一番頑丈なもの、小さもの、シャープなもの、遊べるものを全部フィールドに持っていきたいですね。