「ケリーケトル」って何者?
アイルランド生まれのケリーケトル。ミルク缶のようなキュートなビジュアルで、パッと見、どうやって使うのかわからない人もいるのでは? 実はコレ、ガスなどの燃料を使わず、小枝や松ぼっくりなどを燃やしてお湯を沸かせるエコなアイテムなのです。
なんと100年以上前からこのフォルムを維持している、造形美としても完成度の高いケトル。牧場の牛乳缶のようなデザインで、見た目のかわいらしさもポイントです。
エコで料理もできる優れもの
ただのケトルではなく、上の画像のように内部が二重になっている珍しい構造。たっぷり水が入るように見えて、じつはこの外壁と内壁の間にだけ水を入れることができるんですね。
そしてファイアーベースと呼ばれるスペースで小枝などに火をつけ、ケトル中心部で焚き火をするイメージ。この煙突効果で上昇気流が起こり、内壁全体で熱するため、効率良くお湯を沸かすことができるというもの。非常に良く考えられたギアです。
ガスバーナー使いのキャンパーだったが……
筆者は「楽なら楽なほどいい」というスタンスで、普段はもっぱらガス式バーナーユーザーでしたが、最近は周りのキャンパーが「手間は増えるけどかっこいいギア」を使い始めて、なんだか自分も気になってしまい……。
ケリーケトルを購入!
そこで、どうせなら周りであまり使っている人がいないアイテムがいいと思い、ケリーケトルをセレクト! これで湯沸かしから調理まで楽しんでみます。
まずはケリーケトルを隅々まで見てみる
私が購入したのは1.2Lのモデル。まずは仕組みを理解するため、細かな特徴や作りについてチェックしていきます。それにしても、見た目がかわいい!
セット内容をチェック!
開封すると、上下のパーツが分割式でした。収納ケースもありがたい。
こちらがケトル本体。焚き火台に載せたりトライポッドで吊るせば、普通に1.2Lのケトルとしても使えそう。
ケトル中央の穴はあくまで煙突の上部。ここに水を注いでも垂れ流しです。給水するのは緑のキャップが付いたところ。
こちらはファイアーベースと呼ばれるパーツで、この上で火を起こします。一箇所穴が空いており、ここから小枝を入れたり空気を取り込むことができます。
デフォルトで付いている緑色のキャップはシリコン製のホイッスルキャップです。蒸気によって音でお湯が沸いたことを知らせてくれるという便利な仕様になったのは最近のモデルからだそう。
こちらは付け替え用のコルクキャップ。オールドスタイルで使うならこちらで。
ケリーケトル スカウト1.2L
いよいよ着火して初挑戦!
それでは満を持して、初めてケリーケトルの火入れに挑戦してみます! 購入した薪は長すぎたのでノコギリで半分にカットし、少し小割りに加工しました。
まずは基本の湯沸かしから
水は満杯まで入れないよう、指のラインくらい(挿入口から2cmほど下)を目安に入れておきます。
薪(杉)に付いていた皮を剥がし、手でほぐしたものを着火剤にして火を起こします。100年前から変わらぬ形状を維持するケリーケトルですから、現代的な着火剤を使うのは野暮というものです(と言いつつも、今回はライターを使いますが……)。
樹皮に火がついたら、小割りの薪をくべてファイアーベースにケトルを載せます。
上からのぞいて見ると、しっかり燃えてますね! 近づくと熱いので煙突をのぞくときは注意してください。
煙突上部の穴の径に入るサイズであれば、上から薪を投入できます。焚き火と違って、見えない火を絶やさないように少しずつ薪をくべるというのも意外と楽しいもの。
下部からも薪の追加は可能ですが、この穴は吸気口になっているため、入れすぎて穴を塞いでしまうと空気が送り込まれず燃えません。この日は風が弱かったので、あおいで空気を送り込むなど工夫しました。
下部からの吸気がうまくいっていれば、煙突効果でグングン燃えてくれます。ファイアーベースの穴を風上に向けるだけで、燃え方がまったく違ってきました。この火を育てていく工程は焚き火と同じような楽しさがありますね。
ホイッスルキャップが鳴き出しました! 早い! 面白がって小割りの薪を追加していたらあっという間です。時間にして6〜7分。
キャップを外して、お湯を注ごうと思ったら……ケトル全体が熱くてグローブがないとケトルを傾けられない? と焦ったのですが、ホイッスルキャップが付いているチェーンを引っ張ると、難なくお湯を注ぐことができました。考え抜かれた素晴らしい機能ですね。
見事カップスープの出来上がり。水を汲んだり小割りの薪を用意したりと、ここまで合計で15分くらい。ガスバーナーで沸かせば確かにものの数分ですが、手間がかかるという印象よりも楽しくて時間を忘れるほど楽しい!
これはケリーケトルを使用したからこそ得られる満足感です。
料理にも挑戦しました
続きまして、簡単な調理にもチャレンジします。
別売りの専用ゴトクを煙突上部にセットすることで、上部に吹き上がる熱を利用して調理もできます。お湯を沸かしながら同時に調理ができるとは、なんて効率的。
装着! といってもケトルに載っけているだけの簡単な仕組み。なので、重たいダッチオーブンなどを載せるのは注意が必要。登山用のクッカーなどであれば問題なく使えそうです。
簡単すぎて恐縮ですが、じゃがいもとベーコン炒めを作っていきます。新たな薪を投入して、まずはマヨネーズを油代わりに、クッカーのフライパンでベーコンを焼きます。
炒めたベーコンを一度取り出し、続いて、マヨネーズで和えたじゃがいもを焼いていきます。
ここで問題が! じゃがいもに火が通る前に、どうやら火力が落ちてきました。薪を追加したいところですが、ゴトクが邪魔に! 下から薪を入れると吸気口を塞いでしまうし……。
こうなる前に、小枝を用意しておいたり、ゴトクの隙間からでも投入できるくらい薪を小割りにしておけば問題なかったのでしょう。今回は一度ゴトクを外して薪を追加しました。
じゃがいもに火が通ったらひっくり返して、片面からも加熱して完成。取り出しておいたベーコンを載せていただきます。煙突上部の熱でも十分に調理できる火力が確保できることを確認。
今回はデビュー戦だったので、湯沸かしと調理を別で行ないましたが、これを同時進行していたら、いっぺんにスープと料理が完成できていたことに……。簡単な朝ごはんなど、ひとつの熱源で同時調理できるのでソロキャンプにもうってつけですね。
ケリーケトルの良さと、気になるポイント
ケリーケトル初挑戦。では使ってみて感じたことを、気になるポイントを交えながら紹介します。
ファイアーベースは火床になる
ケトルを外した状態のファイアーベース。これがなくても焚き火とケトルで湯沸かしなどは可能ですが、ファイアーベースがあるおかげで直火禁止のキャンプ場でも使用できます。
ただし、燃焼部が地面に接していますので地面へのダメージの配慮が必要です。地面の上では芝や草地では焦げてしまうため、土や砂地以外の場合には、耐熱テーブルや耐熱シートの上で使いましょう。
ロゴス たき火台シート
ユニフレーム バーナーシート 小
使用後の炭を捨てるのにファイアーベースはとっても便利。別途で焚き火台を使用しているときにも炭捨て皿のように使いたいほど。穴が開いているので、灰が落ちないようにだけ注意。
薪を短く&細くする必要がある
キャンプ場で購入した薪を使用する場合、ケリーケトル用に薪の大きさをアレンジしなければなりません。販売されている一般的な薪のサイズは長めで、1.2Lタイプだと煙突上部から飛び出してしまうのです。
湯沸かしなら問題ないですが、調理をしようとすると長くて太い薪は邪魔になります。
ケトル全体が熱くなる
キャップをきつく締めておくと、ケトル全体が熱くなるため抜くのに手間取ります。チェーンが付いているので注ぐ分には問題ないですが、軍手やグローブを持っていたほうが扱いやすいですね。
持ち運ぶのはラクちん
ファイアーベースを逆さまにすると、底部にケトルがすっぽり収まる(ハマるわけではない)ので、使用時よりは多少コンパクトになります。
専用ケースが付属しているので、車載時も安心。軽量なのでオートキャンパーなら持ち運ぶのになんら苦労しません。
不便を楽しむのがクセになりそう
100年前から変わらぬ造形美、機能美を備えたアイテムを使用している多幸感、そしてシンプルに燃やす楽しみが魅力のケリーケトル。
正直最初はガス式バーナーと比べてしまい「手間がかかるな……」と疑念がありましたが、想像以上に燃やすのが楽しく、その手間に夢中になってしまいました。
まさに「焚き火が楽しい!」というのに近い感覚。薪の配置などを考えずにただ煙突に薪を投入すれば良く燃えるので、このシンプルさも夢中になってしまう要因なのかもしれません。
アナログながら、湯沸かし器としては大変優秀なケリーケトル。お湯があると便利なこれからの季節のキャンプで重宝すること間違いなし! 次回のキャンプで使うのが非常に楽しみです!
ケリーケトル スカウト1.2L