ロゴス「エアマジック」とは
「エアマジック」とは、キャンパーにはおなじみのメーカー・ロゴスが手がけるエアー式のシステム。数種類のテントとタープがラインナップされています。
ポンプで空気を送り込むというシンプルな方法で設営できることから、初心者キャンパーを中心に注目されているシリーズです。
今回ピックアップするのは「グランベーシック エアマジック リビングハウス WXL-AI」。エアマジックシリーズの大型2ルームテントです。以下、当記事内では「エアマジック」と略して呼びます。
設営すると長さ630×幅380×高さ215cmというゆったりサイズに。充分すぎる大きさで、かつエアー式というインパクトが話題を呼び、巷にはさまざまな噂や口コミが広がっているようです。
エアマジックにまつわる5つの噂
エアマジックにまつわる噂、それは次の5つです。
①約8分で設営できるらしい
②インナーテントが有能らしい
③エアー式なのに風に強いらしい
④炎にも強いらしい
⑤穴が空いても平気らしい
メーカーが公式に発表している仕様が「本当かよ」と懐疑的に噂になっているようです。それではエアマジックを実際に設営し、噂を検証していきましょう! もちろん安全上の理由や気象条件により、しっかり検証できない噂もあったことを予めご了承ください。
噂の検証① 大型テントなのに約8分で設営できるらしい!?
まずは部品構成をチェック
専用の収納袋から中身を取り出し、当製品を構成する部品をすべて並べてみました。フライシート(奥)とインナーテント(手前)、それに小袋が2つ。付属のポンプは、収納袋に一緒に入れることが可能です。
小袋の中を見てみましょう。長い方の小袋にはキャノピーポールとフレーム、短い方にはペグとハンマーが。キャノピーポールが付属するのは嬉しいですね。フレームは窓の雨よけに使用します。
設営の下準備を
まずフライシートを広げます。全体の向きは、入り口が風下になるように。そうすることでテント内部に風が入ることを防ぎ、強風時に飛んでいってしまう危険を避けてくれます。
ちなみに公式サイトから推奨されている設営人数は2人以上です。
広げたフライシートをペグで仮止めしておきます。設営の途中で風に飛ばされたら、大きさが大きさだけに周囲の大迷惑に……。仮止めってついサボりがちですが、重要な工程です。
空気入れは、女性が(ほぼ)ひとりでチャレンジ!
では実際に空気を入れてみましょう。体格のいい男性キャンパーが「ひとりでできた!」とドヤ顔をしても説得力がないので、女性に挑戦してもらいます。
フレームとなるチューブには空気穴が付いています。空気穴は全部で4箇所あるんですが、空気の注入にはどの穴を選んでもOK。中心のつまみが伸びた状態だと弁が働き、空気が逆流しません。
空気穴にポンプの先端を刺し、回すことでガッチリ固定されます。ここは初見でも分かりやすく、子供にも教えやすい原理かと思います。
さあポンピング開始! 本当に8分で完成するんでしょうか……?
チューブが折れていると、そこで空気が止まってしまうので、サポート役がチューブを持ち上げながら空気を入れていきます。
終盤にさしかかり、ポンプがだいぶ重くなってきたようです。しかしヘルプを求めるほどではないらしく、最後まで女性の力でやり遂げることができました。
空気の入ったチューブが力強いフレームとなり、フライシートが見事に立ち上がりました! クルマ2台分の幅、6mを超える奥行き、そして2m以上の高さ!
エアー式でなければ金属のポールを何本も通して、数人がかりで持ち上げて……という重労働が必要なサイズです。
フレームのチューブはパンパン、というかカッチコチです。想像していたよりも頼もしい!
設営にかかった時間は9分39秒66。噂されている8分を超えてはしまいましたが、初めての設営でこのタイムなのですから、慣れてくれば8分を切るのは余裕でしょう。
フライシートを広げる時間、ペグダウンして仮止めする時間を含めても、20分ほどで設営できました。ここまで大型のテントを初見で20分という数字は、かなり驚きです。
設営の仕上げ
空気穴にねじ込み式のキャップを。弁が効いていて空気が漏れにくい構造ではあるのですが、しっかりと締めました。キャップは紛失しないよう紐が付いていて、外してもぶら下がるだけでその場を離れません。
こちらの空気をせき止める機構は、エアマジックの特長である「TUBE DIVIDED SYSTEM」。ロックすることにより、万が一チューブに穴が空いても、全体が倒壊することを防ぎます。全6ヶ所あるのですべてをロック!
フレームをスリーブに通して、窓の上に雨よけを。もしこの部分もエアー式だったら天才的なテントでしたね。今後の進化に期待です。
雨よけにより、多少の雨でもメッシュ状態にしておける窓ができました。エアマジックのフライシートは、入り口も窓もすべてメッシュでできます。虫の多い夏でも快適に過ごせそう。
キャノピーを上げて完成! 威風堂々とした姿です。このままスクリーンとして使用してもいいし、付属のインナーテントを取り付ければ、2ルームテントになります。
噂の検証② インナーテントが有能らしい
有能と噂されるインナーテントを取り付けましょう。方法は2ヶ所だけペグダウンし、あとは各フックを引っ掛けるだけというシンプルなもの。奥→手前の順で作業して完了です。
インナーテントを設置しても、じつにゆったりとしたリビングスペース。それほどギアを持って行かなかったので、寂しさの漂うイメージ写真となりました。大人4人で狭く感じることはまず考えられず、8人での食事でも問題ないかと。
……おや、インナーテントのポケットに小物を収納するポケットがありますね。
ポケットが最高に便利
インナーテントの前面にある4つのポケット。これがとてつもなく便利! キャンプ時には「小物を置きたい場所」がとかく不足しがちなので、リビングスペースからすぐに手を伸ばせるポケットは大活躍です。
洗面用具などの小物はもちろん、カメラやモバイルバッテリーを入れておくのに最適。地面に直接置きたくないもの、かといってリュックにしまいこんでおくと面倒なものってけっこうありますよね。何が入っているのか一目瞭然なのも高ポイントです。
大人4人は余裕の寝室
インナーテントの広さは、入口側から見て幅320×奥行き210cm。大人4人でもゆったりと寝ることができます。大人4人+子ども2人のファミリーキャンプでは、持て余してしまいそうな広々スペース。
徹底された風通しの良さ
大きな入口は全体をまるごとメッシュにすることも。写真は左側の入口だけをメッシュにした状態です。入り口が2ヶ所あるという仕様も、キャンプスタイルによっては便利かもしれません。
フライシートもそうでしたが、ファスナーによって開けられたシートはポケットに収納できます。くるくると丸めて上部でフックするスタイルよりもだいぶラクチンで、かつスッキリとしたビジュアルに。こういう心遣いも嬉しいですね。
側面の窓も背面の窓も、すべてメッシュにすれば風通しバツグン! 夏の夜、テント内が暑くて寝苦しいのは誰もが経験する「夏キャンプあるある」ですが、できるだけ暑さを軽減する構造となっています。
下から空気を取り込むのが、暑い時期の風通しのポイント。インナーテントの隅っこにある小窓と、呼応するようにフライシートにも小窓が付いています。ここから外の涼しい空気を迎え入れ、側面や入り口のメッシュから暑さを逃がすことでしょう。
小物の管理がしやすいポケットと、換気のしやすいたくさんの小窓……これは噂通り、有能なインナーテントだと言えそうです!
噂の検証③ 軽いエアー式なのに風に強いらしい
快適キャンプには程遠い天候でも……
残念ながら、この3つ目の噂はしっかりと検証することができませんでした。
空の色を見てもらえばわかる通り、できるだけ悪天候を狙って設営したんですが、それほど強い風が吹いてくれなくて……。しかし側面の膨らみとキャノピーの様子から、決して快適にキャンプできる風ではないことをご確認ください。
それほど強い風ではなかったので個人の感想の域を出ませんが、エアマジックがスリーブ式に比べて、風に弱いと感じるような揺れ方、歪み方はしませんでした。
というのも、横4本のチューブに対し、縦に1本梁型のチューブを通すことでテントの強度をアップしているエアマジック。この梁型の1本が、風による揺れを大幅に減少しているようです。
噂の検証④ 炎にも強いらしい……?
幕の下で焚き火OK?
難燃性の素材を採用しているそうで、炎にも強いらしいという噂が。さっそくキャノピーの下で焚き火を……と、それは絶対にNG!
難燃性というのは、火の粉が当たっても大丈夫という意味ではなく、万が一火がついても「燃え広がりにくい」という保険的機能の意味なんです。
平和なキャンプ場で実際に燃やすわけにもいかなかったので、参考動画をどうぞ。
難燃性を過信することなく、安全な距離を確保して焚き火を楽しみましょう。
噂の検証⑤ 穴が空いても平気らしい!?
わざとバルブを開けてみた
最後は、もしもフレームのチューブに穴が空いても、全壊することはない! という噂を検証しましょう。
実際にチューブに穴が空いてしまったシーンを想定して、4つある空気穴のうち、1ヶ所をわざと開けてみることに。キャップを外し、中央のつまみを押し込めば、弁が無効になって空気が放出されます。
ものすごい風圧とともに、一気に空気が逃げ出しました。いかにパンパンに空気が詰め込まれていたのかがわかります。
ちなみに顔を近づけた状態で開けるのは危険。これは撤収時に空気を抜くときも注意が必要ですね。
該当する空気穴のあるチューブが、ヨレヨレにしぼんでいきました。しかし見てください。他のフレームには影響がなく、全体がしぼむ気配はありません!
他のチューブに影響なし!
空気の抜けたフレームをよそに、他のフレームはいまだカチコチ状態のまま。これならキャンプ中に穴が1つぐらい空いても、撤収を余儀なくされることはなさそうです。
設営時にロックした「TUBE DIVIDED SYSTEM」。これのおかげで、ひとつのフレームから空気が漏れても、他のチューブへの影響を遮断しているようです。
設営時には「面倒だな」と感じたこのロックですが、マストな工程であることがよくわかりました。
そもそもエアマジックのチューブは何重ものカバーに守られていて、本気でナイフでも突き刺さない限り、穴が空くことは考えにくいかと。チューブはエアー式の要ですから、設計上、厳重に守られています。
ちなみに収納はどうなの?
じつはもうひとつ、「撤収が鬼のように大変」という噂も。どうせ撤収するので検証項目には挙げませんでしたが、はたして本当に大変なのかどうか……。
実際に収納した結果、スリーブ式の大型テントよりも大変だということはないような……。むしろ噂によって苦労を覚悟していただけに、拍子抜けだったレベルです。
しかしこれはテントの扱いに慣れたスタッフの場合。初心者はエアー式うんぬん以前に、大きさ自体に苦労するかもしれません。
エアマジックはどういうキャンパーにおすすめ?
重さ対策ができるかどうか
重さは約28kg。手に下げて持つ、までは女性でも問題ないと思いますが、運搬するとなると簡単ではありません。キャリーを使うか、写真のように2人で持ち運ぶ必要があるでしょう。
車を横付けできるサイトでない限り、重さへの対策が必要です。
積載できるかどうか
スリーブ式の大型2ルームテントと同様、遠慮なく車の荷室を占領します。「ポールがほぼ無いのだからコンパクトなのでは?」と甘い予想をしていた自分が恥ずかしいです。
本体とフレームで収納ケースが2つに分けられた方が積載しやすいものですが、エアー式ゆえどうしても本体が巨大になってしまいます。愛車の積載事情と相談する必要がありそうですね。
設営の簡単さと、エアー独自の頑丈さは見逃せない!
それでは、今回の5つの噂の検証で分かったことをまとめてみましょう。まず、8分という設営時間に嘘はなさそうでしたし、ポンピングで設営できてしまう手軽さは見逃せません。なにしろ「このポールどこに通すんだっけ?」がありませんから。
それに想定以上だったのが、チューブの頑丈さと「もし穴が空いたら」問題を解消しているロゴスの独自システム。この安全性の高さはエアー式ならでは。
大型2ルームテントの選択肢にエアー式を加えるのも、そろそろアリではないでしょうか。
ロゴス グランベーシック エアマジック リビングハウス WXL-AI