老舗アウトドアセレクトショップ『ハウディー ドゥーディー』。その成り立ちに迫る

雑誌「HUNT」とのコラボレーション企画第15回。神戸を中心に全国に店を構える「ハウディー ドゥーディー」をHUNT編集部が取材した内容をお届けします。


ヴィンテージルアーと鹿と洋服。

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入舩 郁也さん 兵庫県神戸市出身。2000年にアパレルショップを始めて以来、ファッションブランドの設立、飲食店経営など、多角的な方面で活躍。時計修理技師の父の姿を見て、モノを大切に使うことの重要性や、資源の有効活用について考える事も多く、その理念を商品作りに反映させている。http://merican-hq.com/
入舩郁也さんが代表を務めるメリケンヘッドクォーターズは、洋服屋を4店舗、飲食店を2店舗構え、加えて2つのファッションブランドを展開している企業。これだけ店を多角展聞していると、店を転がしているイケイケの会社かと思われるが(誰も思っていない?)、そんなことは無く、むしろ、社会貢献を会社のテーマとし、人にも、洋服にも、自然環境にも真摯に向き合っている、一本筋の通った企業なのである。

それまでアパレルの企画として働き、洋服の企画をしていた入舩さん。彼は2000年に脱サラし、生まれ育った神戸・元町に、フィッシング&ハンティングの世界観をファッションに落とし込んだセレクトショップ『HOWDY DOODY』を開いた。

その20㎡程度の小さな店には、国内外からセレクトしたカジュアルウェアが販売されており、至る所に入舩さんの趣味でもあるヴィンテージルアーがディスプレイされている。
02 アムコのヴィンテージ・タックルボックスに収められた、入舩さんの釣り道具(一部)。彼は、ヴィンテージヘドンの中でも、ウッドからプラスチックに変わった時の1940〜50年代のものや、ミッドセンチュリーの時の、スペースチックなものがお好きなのだという。
「その当時、趣味なのか仕事なのか、僕はアメリカに滞在して、コレクターの家に行ったり、僻地のショップまで行って、珍しいヴィンテージルアーを買い付けてたんです。それで、どっちがついでか分からない状態で、洋服も仕入れては店で販売していました」

入舩さんは当初からオリジナル商品を展開していたものの、当時はヴィンテージルアーの販売がメインだったという。しかし、次第に店も繁盛し、2008年にブランドを立ち上げた頃からは、もっとファッションを提案しようと、現在のように洋服主体の品揃えになったのである(とは言え、その品揃えは健在)。



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UNRIVALED SHIRTS B.D. 立体的なパターンを用いたシャツは、縫い目までなめらかな4本針フラットシーマミシンで縫製するなど、着心地を重視して作られる。また、姫路に伝わる「白鞣し」という特殊な鞣しを用いて鞣された鹿革を二重に張り合わせ、加工してボタンに用いている。\15,120
入舩さんが立ち上げたブランドは2つ。1つは、物資が少なかった第二次大戦時に生まれたディティールを用いた、着心地の良い日常服を提案する『ボガボガ マリネラ』。もう1つは、“ひと・もの・世代を繋ぐ循環線としての役割を果たす”というテーマのもとに、鹿革を活用したアイテムも手掛ける『ボガボガ ループライン』。いずれのブランドも、パターン、生地、部材、果てはミシンのテンションにまでコダワリを持ち、丁寧に日本で作られている。

弊誌としても気になるのが後者の“ループライン”。入舩さん達は、実に8年も前から鹿革をファッションに取り入れていたのだ。

「昔から釣りで山に入った時、猟師さんを見かけることが度々ありました。それで興味を持って猟師さんの話を聞いているうちに、頭数管理の為に鹿を駆除するものの、その肉や皮が有効活用されていない事実を知ってショックを受けました。それで、僕に何か出来ることはないかと思った時、やはり服しかないなと思い、数年の間試作を繰り返して、やっとブランドを立ち上げたんです」

入舩さんは、兵庫県の猟友会から獣害駆除で獲れた日本鹿の皮を購入するルートを確立し、原皮から製品まで仕上げている。同ブランドでは、鹿本来の柔軟性と軽さを活かすため、バッグやシューズに用いられる革はオイル鞣し(動物性の油を使って皮を舐めす方法)、革ボタンに使っている白い革は白鞣し(塩と菜種油で揉み上げ、天日にさらして仕上げる方法)を用いることで、環境負荷のかからない製品づくりにも気を配っているという。
05 OIL I DEERSKIN 白鞣しとは対照的に、重厚感やワイルド感を感じる、着色した鹿革のバッグや小物類。本州鹿の革特有の柔軟性と軽さを活かす、同社別注のオイル鞣しレザーを使用。ショルダーバッグ\27,864、クラッチ\15,984、コインケース\7,344、小物入れ\8,424。
06 INDIGO POSTMAN ライニングの一部には、色移りしない白鞣しの鹿革を使用したポストマンシューズ。アッパーは染色堅牢度が高く、長い間冴えた藍色を楽しむ事が出来る藍染レザーを使用している。藍色に白が映える、爽やかな一足はどんなパンツにでも合わせやすい万能選手\14,0400。
「僕は人に感謝しながら、されながら仕事をしていきたいと思っています。ボガボガ ループライン(= 行け行け 循環線)という名前に込めた思い通り、みんなが幸せになって、一つの輪になれれば良いですよね」

鹿革を扱いながらも、鹿を丸ごと一頭活用出来るのが理想と考えていた入舩さんは、鹿肉を料理として提供しようと、3年前に鹿肉専門のレストラン『鹿鳴茶流 入舩』をオープン。ジビエ=敷居の高いイメージを払拭する為、手頃な価格でオリエンタルフードとして提供し始めた。店内は日本の和竿がディスプレイされていたり、テーブルや椅子は、革の鞣しで使われる木の樽をリサイクルしたモノであったり、普通の飲食店とは違う遊び心がある。そこには、洋服を試着するように気軽に楽しく鹿肉を食べてもらい、その美味しさを知ってほしい。そんな入舩さんの思いが込められているのだ。

「鹿革と同様に、店で扱う鹿肉は兵庫県で管理捕獲された日本鹿で、所定の施設で処理したフレッシュなお肉を仕入れています。管理捕獲なら一年中安定してお肉を仕入れることが出来ますし、冬が厳しい北海道のエゾジカと違って、日本鹿は一年を通して味が安定しているんですよ」

兵庫県には13万頭の鹿が生息しているとされ、その農林被害は約3億円に上る。その為、県は年間目標を3万5千頭に設定している。実際に兵庫県内では、管理捕獲で年間1万6千頭を殺処分しているが、その中で有効活用されているのは僅か2〜3千頭だけだという。

会社としても積極的に鹿を活用しているが、1社だけの取り組みだけでなく、社会全体として活動しなければ状況は変えられない。そう考えた入舩さんは、兵庫県で獲られた鹿をすべて有効活用するべく活動する団体『ひょうごニホンジカ推進ネットワーク』への参加を決めた。

最近では鹿肉料理と加工のPRイベント『文鹿祭』を企画し、成功させた入舩さん。彼自身は、流れに身を任せてやって来た結果が今なだけだと話すが、その流れをつかみ、行動するというのが、多くの企業には出来ないのだ。彼を見ていると、より良い社会を作っていくのは、行政ではなく、企業や入舩さんのような個人なのだという気がしてくる。



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10 港町・元町ならではのマリンテイストを交えながら、フィッシング、ハンティング、ワーク要素のあるウェアをバランスよく展開。ベーシックで着心地の良い洋服が多いため、お客さんの年齢層も幅広い。ディスプレイの中には、ヘドン・ミュージアムでも見ることのできない、ヘドン社の永遠勤務を表彰する社員バッジなどもあり、ヴィンテージを求めて来店する玄人もチラホラ。
11 『鹿鳴茶流 入舩』にディスプレイされている和竿の多くは入舩さんとお父様の私物。釣りに夢中になったのも、お父様の影響が大きいという。
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店内の天井には、入舩さんの好きな『ラッキー13』のレアカラーをはじめ、ウン十万クラスの希少なヴィンテージヘドンが何気なくぶら下がっている。また、ルアー自体もさることながら、これまた博物館級のトランプや、ミニカー、置時計などのアド物も見もの。勿論、その世界観に沿うようなファッションも提案しており、セルビアのメーカー、TIGARのラバーブーツも展開。
08HOWDY DOODY
address:兵庫県神戸市中央区元町通3-9-8
tel:078-391-1355
営業時間:11:00〜20:00
https://www.facebook.com/mhq.howdydoody/


メリケンヘッドクォーターズが誇る、粒ぞろいの名店

〜ih&blvd.KOBE

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21 一号店である東京店同様、店内はメンズ・レディス両方の洋服を販売。本誌では男性寄りに品物を紹介したが、同社のブランドは女性向けの商品も多く作られている。入舩さんはレディスブランド出身で、彼が手がける洋服は女性にも好評だ。
港町・神戸からNEW WORKを提案しているブランド『bogaboga Marinera!』、鹿革の活用をはじめ、社会貢献を目的としたものづくり、ハンティングモチーフの『boga boga Loopline』等、メリケンヘッドクォーターズのオリジナルをフルラインナップで揃える神戸の旗艦店。年齢やカテゴリー、テイスト問わず、ユニセックスで展開。三宮駅、元町駅のどちらからでも歩いてアクセス可能な好立地に店を構えている。

address:兵庫県神戸市中央区三宮3-2-8
tel:078-599-8605
営業時間:11:00〜20:00
https://www.facebook.com/mhq.h.blvd.kobe

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日本の狩猟鳥獣をテーマにしたTシャツ。フロントにはアルファベット、裏返すとイラストが描かれており、着なくなった時に裏返して縫えば、クッションとして再利用出来るという逸品。各\6,372
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定番のショールカラーデッキジャケット。原糸の選定、糸の撚り、生地組織を研究して辿りついたオリジナルのスウェットは、吊り編み機でゆっくりと、ふんわりと編み上げられる。\19,440
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〜ih&blvd.TOKYO

2010 年にオープンした、同社初の旗艦店。『〜 ih』はハイカラ、『blvd.』は大通りの意味で、海外と日本の文化が往来する大通りのような役割を果たしたいという想いが店名になっている。最寄は都立大学駅という、業界人の多い立地に店を構え、洋服をはじめ鹿ハムやミートローフ(加工肉)、鹿肉(冷凍)の販売まで展開している。

address:東京都目黒区八雲1-5-19
tel:03-6421-1176
営業時間:11:00〜20:00 水曜日定休
https://www.facebook.com/mhq.h.blvd.tokyo/

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〜ih(Haikara)

同社唯一のレディースセレクトショップ。シンプルなスタイルの中に面白みのある服を国内外からセレクト。自社ブランドのレディースアイテムもカットソーを中心にラインナップしている。店名は、“海外のモノだけど日本に馴染むもの”、“日本のモノだけど海外の蚤の市で売っていてもおかしくないモノ”という、港町らしいコンセプトからきている。

address:兵庫県神戸市中央区元町通3-9-16
tel:078-332-5305 営業時間:11:00〜20:00 水曜日定休
https://www.facebook.com/mhq.haikara

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G.G.C

10種類以上のビールやマイスターの手作りソーセージが人気のドイツ料理店。1976年創業の老舗で、店内は昔ながらビアバーといった雰囲気。場所はハウディドゥーディーの向かい。ドイツよりリーファーコンテナで輸入した樽生ビールや、本場の伝統家庭料理など、現地そのままの味わいを提供。遠方からや長い間通い続ける顧客も多いという。

address:兵庫県神戸市中央区元町通3-12-8
tel:078-391-1833 営業時間:17:00〜23:00 水曜日定休
https://www.facebook.com/mhq.ggc

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鹿鳴茶流 入舩

海外にある日本料理屋をイメージした、オリエンタルな雰囲気の鹿肉専門レストラン。脂肪が少なく、鉄分ミネラルが豊富な鹿肉をもっと日本で気軽に食べてもらえるよう、親しみやすい価格で提供している。また、100 年以上前のヴィンテージ和竿や浮を、アート作品のようにディスプレイしている店内も見もの。

address:兵庫県神戸市中央区元町通1-9-8
tel:078-321-0295
営業時間:11:00〜15:00、
17:00〜23:30(金・土は24:00まで)
水曜日定休
http://rokumeisaryu.com/

写真:Yoichi Sakagami、Hiroyuki Haneta(wear) 文:Junpei Suzuki

HUNTvol.14の特集は「ニッポンのブランド」。全国に散らばる多種多様なブランドを取材しています!

紹介されたアイテム

HUNT Vol.14

HUNT Vol.14

¥1,080 税込

HUNT編集部

HUNTは自然を愛し、モノを大事にする大人に向けたライフスタイル&ファッションの雑誌。アウトドア趣味を楽しむ方や、山暮らしの達人を取材し、往年のアウトドアにヒントを得た男心くすぐる洋服やギアも多数紹介する。雑誌は2月、5月、8月、11月の月末に発売!

 

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