16年ぶりのフルモデルチェンジで何が変わった?

日産の高級ミニバン、4代目『エルグランド』は、2026年7月16日に発売されました。実に16年ぶりのフルモデルチェンジとなります。
日産の諸事情があって、エルグランドのフルモデルチェンジが先送りにされ続け、日本の高級ミニバンはトヨタ『アルファード&ヴェルファイア(一般に”アルヴェル”と呼ばれている)』一強の市場となってしまっていました。

新型エルグランドは、ライバルのアルヴェルにはない電動駆動四輪統合制御技術『e-4ORCE(イーフォース)』と『インテリジェントダイナミックサスペンション(IDS:電子制御ショックアブソーバー) *』を採用。この2点が今回のフルモデルチェンジで、最新技術面でのハイライトとなるでしょう。
* 電子制御サスペンション(略称:電サス、電制サス)や電子制御ダンパーなどとも。ショックアブソーバー(ダンパー)は、筒の中に封入されたオイルの移動抵抗を使って、繰り返されるスプリングの伸縮を収束させる装置。
e-4ORCEは、前後輪の駆動力と四輪のブレーキを統合的に電子制御するシステムで、例えばコーナリングのとき、カーブの内側の車輪は軽くブレーキをかけ、外側の車輪には駆動力をかけてスムーズかつ安定した走行ができるようになります。

よりわかりやすいイメージ動画が、試乗会のときのプレゼンテーションで紹介されていました。その動画はこちらからチェックしてみてください。
また、e-4ORCEの仕組みを、e-4ORCE開発担当者がわかりやすく解説してくれました。その動画はこちらからチェックしてください。
「車酔いを軽減!」そのわけは?
日産は、新型エルグランドについて「車酔いを軽減」したというポイントも強く訴求していました。
車酔いは、身体の揺れ、特に頭部の揺れが主な原因のひとつとなっています。
この車酔いの軽減に貢献しているのが、インテリジェントダイナミックサスペンションです。
これは、クルマの動きや操作を検知して100分の1秒毎に演算してサスペンションの減衰力(スプリングの伸び縮みを素早く収束させる力)を即座に可変させる電子制御ショックアブソーバーを採用して、乗員の身体の揺れを抑えてくれます。

インテリジェントダイナミックサスペンションの仕組みを、e-4ORCE開発担当者がわかりやすく解説してくれました。その動画はこちらからチェックしてください。
V8エンジン並み!計525N・m!電動四輪駆動「第3世代e-POWER」採用
パワートレイン(動力源と動力を伝える装置全体)もアルヴェルとは異なります。
アルヴェルもエルグランドもハイブリッドを採用していますが、その構造は大きく異なります。新型エルグランドはシリーズ式ハイブリッド(*)の『e-POWER』を採用しています。
*シリーズ式ハイブリッド:エンジンは発電専用で駆動力は100%モーターとする方式。

新型エルグランドは新開発の発電特化型ターボエンジン(ZR15DDTe型・直列3気筒1.5Lガソリン)を採用した第3世代e-POWERです。
フロントモーターは最高出力151kW(205PS)・最大トルク330N・m、リアモーターは100kW(136PS)・195N・m、前後モーター合計トルク525N・mを発生するという、V8ガソリンエンジン並みのスペックを発揮しています。
このほか、日産ならではのハンドルやアクセルから手足を解放して走行可能(*)な運転支援システム『プロパイロット 2.0』なども採用しています。
*システムの作動には条件があります。作動中は即座にドライバーが運転操作可能な状態であること、常に安全運転のための前方や周囲の車両等への注視は必要です。
「舌を巻いた」新型エルグランドの走りとは?
新型エルグランドに乗り込み、ドアを閉めて5秒で気が付いたのは、まるで別世界に移動したような静けさでした。一緒に試乗会に参加したモータージャーナリストも「防音室にいるみたい」と感想を語っていました。

運転を開始して30秒、独特な乗り心地の良さに気が付きました。
まるで大型船のような、ゆったりとした乗り心地ですが、安定飛行する飛行機のような車体の揺れを感じさせないものでした。
この乗り心地は、今までに体験したことがないもので、わかりやすい比喩が難しく、何か別世界の乗りものに初めて乗ったような気持ちにさせました。
ワインディング(勾配と急カーブが続く峠道など)を走行すると、下手なスポーツカーより速いんじゃないかと思うほど、高い安定性を保ちつつぐいぐい曲がっていきました。
あまりにもよく曲がるので「タイヤのほうが負ける」とも感じました。実際に新型エルグランドを買って走る方、調子に乗って飛ばしすぎないように注意していただきたいですね。

タイヤは新型エルグランド専用に開発された『ヨコハマ ADVAN V6(235/60R18)』を、専用18インチ軽量アルミホイールと組み合わせて装着されています。
日産開発担当者は「強大なトルクと2.4トンという車重に耐えつつ、良好な乗り心地と低燃費を高い次元で融合したタイヤとアルミホイールは、購入後ほかに変えずに乗っていただきたい」と語るとともに、新型エルグランド開発時に注力したポイントのひとつだったと教えてくれました。
高級ミニバンなので荷室は控えめ

ご覧の通り、3列目シートの後方には荷室がほとんどありません。3列目シートは跳ね上げ式で荷室を確保することができますが、しっかりとした乗り心地を提供するためのシートは大きく、荷室空間は限定的です。

大荷物のテント泊キャンプというよりは、厳選したギアで行くスマートなキャンプや、グランピング・車中泊などに向いているかもしれません。
価格は689.7万円から。ボディカラーはホワイトが一番人気
新型エルグランドのグレードは『X e-4ORCE』(689万7,000円)と『G e-4ORCE』(757万9,000円)のシンプルな2本立て。
加えて、日産モータースポーツ&カスタマイズ(NMC)が手がけるカスタム仕様として、『AUTECH LINE』(Xベース)、『AUTECH』『AUTECH LINE G-spec』『VIP』(いずれもGベース)などが用意され、最上級となる『VIP e-4ORCE』は869万8,800円です。
最も売れているグレードは『G e-4ORCE』の構成比57%となっており、日産の想定より高い水準で推移しているとのことでした。
ボディカラー一番人気はホワイト

ボディカラーは『プリズムホワイト』が一番人気で構成比40%、続いて『ミッドナイトブラック』の32%となっています。

新型エルグランドの発表時は『FUJI DAWN(フジ ドーン)/至極(シゴク)』の2トーンをコミュニケーションカラー(クルマのコンセプトや魅力をわかりやすく伝えるために設定された主役となる色)として露出の中心となっていましたが、現在は、プリズムホワイトが公式HPに多く登場したり、紙のカタログの表紙を飾ったりといった変遷があります。
この点、日産開発担当者は、「新型エルグランドは発表から発売まで約半年ほどの日数が経過していることもあり、見せ方を変えてみた」と語っていました。
確かに、新型エルグランドはボディカラーが変わると印象が大きく変わります。特徴ある顔付きですが、ホワイトだと落ち着いた雰囲気です。これは、ファミリーカーとして購入するとき、家族に受け入れられやすいでしょうね。
ほかにもたくさんお伝えしたいことがありますが、記事本文はここまで。次のページで43枚の画像を置いておきますので、新型エルグランドを隅々までチェックしてみてください!
【動画】新型車メディア試乗会の裏側を紹介!
執筆後記
日本の高級ミニバン市場の先駆けは、日産エルグランド(1997年5月発売)でした。初代エルグランドの爆発的ヒットを見たトヨタは、2002年5月の初代アルファードを市場投入。しばらくは良きライバル関係にありました。
そう、エルグランドは「元祖高級ミニバン」なのです。
今回の試乗会の冒頭のプレゼンでは、「プレミアムミニバンの再創出」「日産ブランド復権の象徴」というキーワードが用いられ、エルグランドの開発に日産が持つ最新技術と知見を余すことなく詰め込んだ熱意あるクルマとなっていることを強く感じさせました。
走りのフィーリングや乗り心地などの感じ方には個人差がありますが、筆者は新型エルグランドが高級ミニバンの中で最も走りと乗り心地が良かった、アルファードを超えたのではないか、と感じました。
セールスも好調のようです。今後の日産に期待が高まった試乗会でした。

