画像:特記事項ない場合はすべて筆者(宇野 智)撮影
Kia「PV5」ってどんなクルマ?
「PV5(ピー・ブイ・ファイブ)」は、韓国の自動車ブランド「Kia」のBEV(バッテリー式電気自動車。以下「EV」)です。

※ブランドの解説は少し長くなるので、本記事末尾に「豆知識」として略歴を記載します。
このクルマは、5人乗りのMPV(*)「パッセンジャー」と、2人乗りの商用バン「カーゴ」をラインナップ。基本構造やモーター、バッテリーなどのパワートレイン系は2モデルとも共通です。
(*)多目的車。少し語弊があるがわかりやすく言えばミニバン。
また、両モデルともバッテリー容量(航続距離)の異なるグレードが設定され、モーター最高出力も異なります。
PV5カーゴは、現在の「普通免許(車両総重量3.5t未満かつ最大積載量2t未満)」で運転できます。
Kia PV5 グレード別主要スペック
| ロングレンジ | スタンダード | |
| バッテリー容量 | 71.2kWh | 51.5kWh |
| 航続距離 | パッセンジャー 521km カーゴ 528km | パッセンジャー 377km カーゴ 379km |
| モーター最高出力 | 120kW(163PS) | 89kW(121PS) |
| 最大トルク | 250N・m | 250N・m |
今回はあえてカーゴを選択
ノーマル状態で車中泊するなら、カーゴよりパッセンジャーのほうがおすすめです。パッセンジャーには、Kia正規ディーラーでもあるトイファクトリーから専用ベッドキットが販売されています。

Kiaの試乗車にベッドキット設定車がなかったということもありましたが、筆者の最大の興味は「キャンピングカーのベース車両としてのPV5カーゴの素性」でした。
(参考)PV5パッセンジャーの車中泊仕様
Kiaから提供いただいた「PV5パッセンジャー」車中泊仕様の画像を参考として置いておきます。



【注意】荷室は居住スペースではない
今回は、ノーマル状態のPV5カーゴで車中泊しましたが、Kia担当者から「PV5カーゴは、キャンピングカーなどのベース車両としては最適ですが、荷室で人が過ごすことは想定していない」との説明を受けました。そのため、Kiaは荷室での車中泊を推奨していません。

今回の車中泊の前に、前席と荷室の隔壁周辺に空気の通り道があることを事前に確認したうえで、筆者の判断と責任で車中泊を実施しました。
また、車中泊時のエアコンは外気導入モードにし、車室内は常時外の新鮮な空気を車内に取り込む状態にしています。
ちょうどいいサイズ
PV5のボディサイズは、全長4,695mm×全幅1,895mm×全高1,925mm。
トヨタ「ハイエース」の一般的・標準的なサイズ(*)のモデルと比べると、全長は同じ・全高ほぼ同じ(PV5のほうが5.5cm低い)、全幅はハイエースより20cm広い、となります。

標準的なハイエースが「4ナンバー」であることに対して、PV5カーゴは全幅の関係から「1ナンバー」になります。
この点、維持費の面で影響が出やすいのは、高速道路の料金です。今回のPV5カーゴは普通貨物自動車として「中型車」の高速料金(NEXCO各社などにおいて)、比較対象の4ナンバー・ハイエースは小型自動車として「普通車」となります。中型車は普通車より20%割高の料金となっています。

最大積載量は、ハイエースが1t(2名乗車時)に対して、PV5は、550kg(ロングレンジ)・650kg(スタンダード)と少なくなっています。
このスペックにおいては、PV5のほうが劣っていますが、この点、キャンパーや車中泊仕様のベース車としては、逆に功を奏しているのではないかと筆者は感じています(後述します)。
*トヨタ ハイエースにはさまざまなボディタイプがあります。本記事で「一般的」「標準的」と表記する場合は「ロング・標準幅・標準ルーフ」を指します。
Kia PV5・トヨタ ハイエースボディサイズ比較
| Kia PV5 カーゴ | トヨタ ハイエース SuperGL ロング/標準幅/標準ルーフ | |
| ナンバー | 1ナンバー | 4ナンバー |
| 全長 (mm) | 4,695 | 4,695 |
| 全幅 (mm) | 1,895 | 1,695 |
| 全高 (mm) | 1,925 | 1,980 |
| ホイールベース (mm) | 2,995 | 2,570 |
| 車両重量 (kg) | 1,910/ロングレンジ 1,830/スタンダード | 1,930/ディーゼル2WD 1,770/ガソリン2WD |
| 乗車定員 (人) | 2 | 2/5 |
| 最大積載量 (kg) | 550kg/ロングレンジ 650kg/スタンダード | 1,000kg/2人乗車時 850kg/5人乗車時 |
PV5のサイズ感、キャンパーや車中泊仕様のベースとしては「ちょうどいい」と思います。
最小回転半径(小回り性)は、ハイエース(ロング/標準幅/標準ルーフ・2WD)の5.0m(4WDは5.2m)に対して、PV5は5.5mとなっています。
PV5は車幅が広いので、小回り性はハイエースに軍配があがりますが、筆者が試乗した感想では、実際の走行シーンにおいては問題にならないと言えます。
真夏の車中泊徹底検証結果は?
真夏の車中泊徹底検証結果は、文句なし!最高でした!
その最大の理由は「エアコン付けっぱなしOK」だからです!

EVには「アイドリングストップ」の概念すらありません。エンジンがないですから。
バッテリーが持つ限り(充電スポットまでのバッテリーは残しておく必要はありますが)、エアコンをはじめ、さまざまな電気製品を好きなだけ使うことができます!
そもそも、EVはキャンピングカー・車中泊仕様のベース車両として相性がとてもいいのです!
一晩でどれだけバッテリーを消費した?
今回は新東名高速「岡崎SA(愛知県)」で車中泊をしました。深夜でも気温28℃で湿度が高く、不快指数も高めな熱帯夜。

一晩中、約8時間エアコン(設定温度23℃・外気導入モード)を稼働させた結果、バッテリー残量表示は70%から62%へ、8ポイントの低下でした!
試乗車のバッテリー容量は51.5kWh。バッテリー総電力量の8%を単純換算すると、約4.12kWh相当、1時間あたりでは約0.52kWh相当です。
参考までに、環境省の「家庭CO2統計」によると、単身・若中年世帯の電力消費量は1日平均に換算して約6.1kWh。今回の約4.12kWhは、その約7割に相当します。住宅全体と車内では条件が異なるため単純比較はできませんが、消費電力量の規模感をつかむ目安にはなるでしょう。

広さは申し分なし!
PV5カーゴの室内寸法は、長さ2,255mm×幅1,565mm(*)×高さ1,520mm。ハイエースの標準タイプの室内寸法は、長さ3,000mm×幅1,520mm×高さ1,320mm(2WD・2名乗車時)。
*諸元表では室内幅1,450mm(タイヤハウスの出っ張りのため)。

室内高が20cmもPV5のほうが高いのは、フロアを低くフラットにできるEVならではの構造からと言えます。

ハイエースは、運転席の真下に前輪がある「フルキャブ」に対し、PV5は運転席の少し前(短いボンネットの下)に前輪がある「セミキャブ」という構造上の違いがあり、これが荷室の長さに影響しています。
荷室をより広くとれる構造のフルキャブのハイエースのほうが室内長が75cm長くなっています。
ただ、PV5はハイエースよりもホイールベース(前輪と後輪の距離)が425mm長いつくりになっています。これが、まっすぐ走る際の安定感や、前後の揺れを抑えるうえで有利に働いています。
バンとは思えない良好な乗り心地!
PV5カーゴの運転を始めて30秒もしないうちに気が付いたのは、乗り心地の良さです。

前述した長いホイールベースだけでなく、サスペンションのセッティングもバンにありがちなゴツゴツ感を感じさせない柔らかさがあり、「これ、本当にバン?」と疑ったほどでした。
試乗時は空荷です。バンなどの貨物車は空荷で走ると、後輪のバネが固いのと、荷重に耐える設計の固い貨物車用タイヤ(さらに指定空気圧も高い)のため、段差を超えると後輪が跳ねるなどのバタつきと突き上げるような衝撃を感じる傾向にあります。
しかし、PV5カーゴは、足の固さや突き上げ感をあまり感じません。荒れた路面で「あ、タイヤが固いな」とは感じましたが、ほとんどのシーンにおいて乗り心地のいいミニバンのような感覚でした。
これは、最大積載量は650kgないし550kgという比較的積載重量が少ないことで、足まわりを固く締め上げる度合いも少なくなり、長いホイールベースやシートなどの要因も相まって乗用車感覚に近い乗り心地となったと推測しています。

試乗後、Kia担当者にこの感想を伝えると試乗後、Kia担当者にこの感想を伝えると「我々が乗っても、パッセンジャー(ミニバン)とカーゴの足の違いに気が付かないレベル」とのことでした。なお、サスペンションのセッティングについて広報担当に尋ねると「パッセンジャーとカーゴはサスペンションのセッティングをそれぞれ専用のものとしている」とのこと。
つまり、重い荷物に耐えるカーゴ専用の足回りでありながら、乗用車レベルの快適さを見事にチューニングしているという証拠ですね。
操縦安定性・ハンドリングも素晴らしい!
EVは基本的にフロア下にバッテリーを搭載するため、重心が低くなり、操縦安定性の良さに貢献する構造となります。

PV5カーゴは、車高が高いバンですが、重心は筆者の経験・感覚からすると、ガソリンの乗用車と同程度かそれより低いレベルと感じました。
試乗時に峠道を何度かとおりましたが、バンとは思えない軽快で素直なハンドリングに驚きましたね。

