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【開発者に聞く】あのogawaがコスパテントを発売。新作「アルテミス」が即完売したワケ(2ページ目)

老舗ブランドがなぜ今このテントを?

Ogawaの大木さん

今回話を聞いたのは、キャンパルジャパン株式会社の商品企画部・デザイナーの大木秀樹さん。東京・新木場にある直営店「ogawa GRAND lodge 新木場」にて、実物のアルテミスを前に取材に応じてくれました。

大木 秀樹さん

20年間、広告業界でデザイナーとして活動した後、キャンパルジャパンに転職。

当初はカタログ制作などのグラフィックデザイン担当として入社したものの、現在はテント開発をはじめ、ギアやアパレルの商品企画や広報・宣材写真の撮影など、ogawaのデザインに関わる幅広い業務に携わっている。

「アポロン」や「グロッケ」も、大木さんがデザインした代表的な商品。

アルテミス開発のきっかけは?

Ogawaの大木さん

開発の出発点にあったのは、より多くの人にogawaのテントを手に取ってもらうための“入口”を作りたいという思いでした。

大木さん:最初は、本当にエントリーモデルのようなテントを作りたいという話があったんです。他社さんでも価格を抑えたモデルが出ていますし、うちもそういうものを作らないといけないんじゃないか、というところから始まりました

ただ、開発を進めるほど、単純に価格だけを追うことへの違和感も出てきたといいます。安くするために削りすぎてしまえば、ogawaが大切にしてきた品質や使い勝手まで失われてしまうからです。

ogawa アルテミス

大木さん:開発を進めていくうちに、「ここはこうしたいよね」「これは残したいよね」という部分がどうしても出てくるんです。価格ばかりを追いかけると、結局“ogawaらしさ”ってどこにあるんだろう、となってしまう

そこでアルテミスを、“エントリーモデル”ではなく、“ベーシックモデル”として位置づけることになりました。

“ベーシックモデル”に込めた意味は?

Ogawaのロゴ

大木さん:価格はある程度抑えているけれど、ogawaらしさはちゃんとある。デザインも踏襲していて、素材や機能にも妥協しない。この価格でも、このクオリティ以下のものは作りませんよ、という宣言みたいなものですね

市場全体で見れば、アルテミスは最安値を狙ったテントではありません。それでも、ogawaの品質を知っている人ほど、「この内容で6万円台なら」と感じてくれるはず。

Ogawaの大木さん

大木さん:ogawaとしては比較的手に取りやすい価格帯ですし、ogawaを知っている方からすると、かなりコストパフォーマンスが良いと感じていただけるのかなと思います。

守るべき品質を守りながら、より多くの人に届く価格帯へ近づける。「アルテミス」は、その着地点になっている感じがします

発売後は、ファーストロットが完売。SNSではユーザーによる動画やストーリー投稿も広がりました。

ogawa アルテミス

大木さん:正直、何がそこまで刺さったのかは分からないんですよね(笑)。ただ、ユーザーさんの投稿を見て気になってくださった方も多かったのかなと思います。

「ogawaなのにこの価格」という驚きと、実際に設営された姿の美しさ。その両方が、話題化のきっかけになったのかもしれません。

イメージは「アポロン」の妹分

名前の由来と、アポロンとの違いは?

ogawa アポロン
出典:ogawa アルテミスの兄的存在である、ogawa定番のファミリーテント「アポロン」+ルーフフライタープ。 

「アルテミス」という名前には、ogawaの人気モデル「アポロン」とのつながりがあります。

大木さん:「アポロン」って、ギリシャ神話の太陽神なんです。その双子の妹が「アルテミス」で、月の女神なんですよ。それを知ったときに面白いなと思って。

アポロンの妹分のような存在として、「アルテミス」というモデルを作れたらいいなと、なんとなくイメージしていました

構想自体は、2022年に発売された「アポロンS」の頃からあったそう。今回、あらためて手に取りやすい価格帯のモデルを作るタイミングで、温めていた名前が形になりました。

アルテミスの開発スケッチ
開発段階のスケッチ。

ただし、「アルテミス」は「アポロン」の単なる小型版ではありません。

大木さん:「アポロン」は前後がない、シンメトリーなトンネル型です。アルテミスは前後を設けていて、後ろに向かって少し下がっていく形にしています。

後方に向かって高さを抑えることで、風を受け流しやすいシルエットに。「アポロン」のどっしりした安心感に対して、「アルテミス」はもう少し軽快な印象です

Ogawaの大木さん

生地もアポロンの210デニールに対して、「アルテミス」は75デニールを採用しています。

大木さん:でも、耐水圧や強度はちゃんと担保しています。軽さや扱いやすさも考えながら、必要なところは残すようにしました

「アポロン」の思想を受け継ぎながら、サイズ感や扱いやすさは「アルテミス」独自のものに。名前だけでなく、設計面でも“妹分”らしい一張りとして仕上げられていました。

専用タープで、誰でもできる「小川張り」へ

なぜ専用タープを?

Ogawaのアルテミス
専用タープと接続すると、テントと一体化したような姿に。

前半でも紹介した通り、「アルテミス」は別売りの専用ルーフフライタープを組み合わせることで、サイト全体の完成度が一段上がります。では、なぜ本体とは別に、専用タープまで開発されたのでしょうか。

開発の初期段階では、現在のようなタープではなく、一般的なフライシートに近いものを考えていたそうです。

アルテミス開発担当大木さん

大木さん:「アルテミス」の開発中、フロントは張り出せる(簡易タープ)機構にしたいという声がありました。

デザインのポイントで、テントの顔でもある、その個性を無くすか悩んでいるとき、同じタイミングで「アポロン」のルーフフライタープも開発していて。

それなら「アルテミス」も、ルーフフライをタープとして使える方がいいんじゃないかと思いました。

イメージを描いているうちに、これって小川張りっぽいなと。だったら本当にできるか試してみようと、テストを繰り返していきました

テントとタープを美しく連結する「小川張り」は、見た目の完成度が高い一方で、慣れていない人には少し難しい張り方でもあります。

そこで「アルテミス」では、専用タープによってそのハードルを下げることが考えられました。

大木さん:タープの設営って、初心者の方には難しいと思うんです。ダルダルになってしまう方も多いですし。

でもこれは、テント側に接続してそのまま引っ張ればいいだけ。多分、ダルダルにする方が難しいと思います(笑)

Ogawaのアルテミス

専用タープは、セッティングテープを使わず、ポール1本で連結できる構造。テントとの間にすき間が生まれにくく、見た目にも美しく収まります。

Ogawaのアルテミス

さらに、遮光性に優れたPUブラックコーティングを採用。「アルテミス」本体の魅力を引き出しながら、夏場の日差し対策にもつながるオプションとして設計されています。

ディテールに見える、価格と品質のバランス

価格を抑えるために工夫したことは?

Ogawaのアルテミス
大人2人、子ども2人程度なら、広々快適に過ごせるインナーテント。

前半で見てきた通り、「アルテミス」は6万円台ながら、メッシュやスカート、4人用インナーなど、必要な装備をしっかり備えています。では、価格を抑えるために、どこを見直したのでしょうか。

大木さん:ペグ・ハンマーなどの付属品を削ったことや生地のセレクト、メッシュの量ですね。

メッシュを使うと材料費が上がりますし、フラップも必要になるので構造としても二重になりますから。

どこもかしこもメッシュにするのではなく、必要なところに、必要なサイズを配置しました

Ogawaのアルテミス

メッシュを減らす、と聞くと快適性が落ちそうに感じるかもしれません。しかし、「アルテミス」ではフロントやサイドなど、風を通したい場所や視界を抜きたい場所に絞って配置されています。

Ogawaの大木さん

大木さん:フロントのデザインとして効く部分や、サイドのハーフメッシュなど、通気性や視界を確保しながらバランスを取っています

Ogawaのアルテミス

生地を75デニールにしたことも、軽さや扱いやすさにつながるポイントです。ただし、薄くすれば単純に安くなるわけではありません。

大木さん:これ以上薄くして強度も確保しようとすると、逆にもっと高くなってしまうんです。

薄くて強い素材を使おうとすると、コーティングなども含めて価格が上がってしまうので

必要なところは残し、見直せるところは見直す。

「アルテミス」は“装備を削って安くしたテント”ではなく、価格と品質のちょうどいい落としどころを探ったテントでした。

実店舗で拾う声が、ものづくりに活きている

ogawaは実店舗も多いです

Ogawaの看板
新木場のOgawa

ogawaの大きな特徴のひとつが、全国に展開する直営店の存在です。

今回取材の場となった「ogawa GRAND lodge 新木場」も、ブランドの世界観を体感できるだけでなく、テントの相談や設営講習まで受けられる場所になっています。

大木さん:ユーザーさんの声を拾える場所ですね。よろず相談所じゃないですけど、直接来て相談していただける。このテントはどうやって立てるのか、こういうテントが欲しいんだけど、という話も聞けます。

無料で設営講習もしていますし、そういう声が製品開発にもつながっていきます

ユーザーの声を聞き、それを次の製品づくりへ活かす。アルテミスの“ちょうどよさ”にも、そうした現場感が反映されているのかもしれません。

Ogawaの大木さん

一方で、大木さんはブランドの課題についても率直に話してくれました。

大木さん:強みは、やっぱり100年ブランドとしての品質です。プロダクトの品質には自信を持っています。ただ、弱みはPR(宣伝)ですね(笑)。

キャンプをやっている方には知っていただいていますが、キャンプをしていない方にはまだまだ知られていない。そこは課題だと思っています

ものづくりへの自信と、認知への課題感。「アルテミス」には、その両方をつなぐ役割も込められているように感じました。

“最初のogawa”にも、“次の一張り”にも

Ogawaの大木さん

最後に、「アルテミス」を通して伝えたいことを聞くと、大木さんはogawaというブランドの見られ方について話してくれました。

大木さん:ogawaって、高級テントのブランドとか、敷居が高いブランドと思われがちなんです。でも、そういうわけではないんですよね。

初心者の方にも選んでいただきたいですし、ユーザーさんの声を拾いながら商品開発をしています。そういうブランドなんだということも、「アルテミス」を通して知っていただけたらうれしいです

これは単なる“コスパテント”ではありません。設営しやすく、快適で、長く使える。ogawaが100年以上かけて積み上げてきた価値観を、現代のキャンプスタイルに合わせて再構築した、ogawaの新しいベーシックモデルです。

「このクオリティ以下のものは作らない」。

その言葉に込められていたのは、価格を抑えても守るべき品質は譲らない、というブランドとしての意思でした。

ビギナーにとっては最初のogawaとして。ベテランにとっては肩肘張らずに使える一張りとして。アルテミスは、これからのogawaを知る入口になっていきそうです。

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