次の砂漠キャンプ場へ

地平線から太陽が昇り、白砂漠を煌々と照らし出す、まばゆい朝を迎えました。相変わらず周囲は音ひとつなく、砂漠ならではの静寂に包まれています。
まだ残っていたピタパンとクリームチーズで簡単な朝食をとり、次のキャンプ地へ向かう準備を始めました。来た道を寸分違わずに引き返し、無事にハイウェイへと戻ることができました。

白砂漠から車でおよそ30分ほど走った場所にあるのが、世にも珍しい「クリスタルマウンテン」(地図)です。名前から宝石のようなものを想像しがちですが、実体は鉱物である石英(クォーツ)。車を降りて山の周辺を歩いてみると、地面のあちこちにクリスタルが露出し、落ちているのが確認できます。

クリスタルマウンテンも白砂漠と同様、数千万年前には海の底にあった場所です。その後、地殻変動や火成活動によって地下深くに存在していた鉱物層が地表近くまで押し上げられ、長い年月をかけた風化と侵食によって、現在のような不思議で幻想的な景観が形作られました。
砂漠に温泉?オアシスでまさかの神体験

白砂漠へ向かう途中、車で通り過ぎたオアシス都市バウーティー。実はこの町には、「砂漠なのに温泉が湧いており、しかも誰でも無料で入浴できる場所がある」という話を聞き、立ち寄ってみることにしました。
町のメインストリートから少し外れた場所には、青空天井の開放的な温泉があり、誰でも自由に入れるようになっています。私たちは車の中で水着に着替え、しばらくキャンプ続きで体を洗えていなかったこともあり、まるで飛び込むような勢いで湯船へ。

湯加減はちょうど良い約40℃。まさか砂漠のオアシスで、こんな温泉体験ができるとは思ってもいませんでした。キャンプの疲れを一気に癒やしてくれる、私たち親子にとって忘れがたいひとときとなりました。

果てしない砂漠の旅を続けていると、ガイドのいない個人旅行ということもあり、食料や水を十分に積んでいても、どこか不安がつきまといます。
オアシス都市バウーティーを出発した後は、カイロ方面へ戻るため、再びハイウェイを進むことにしました。


とはいえ、砂漠を貫くハイウェイ沿いには、町がなければショップやガソリンスタンドもほとんど見当たりません。視界に入るのは、どこまでも続く砂漠の風景と走り去るトラックだけ。ごく稀に、悠然と歩くラクダの姿を目にすることもあります。
そんな景色の中を走りながら、日本にいる頃から目星を付けていた「砂漠の湖」にあるキャンプ場を目指して、さらに車を進めていきます。
砂漠の城塞都市のようなキャンプ場に到着
Qatrani Camp(エジプト・ファイユーム)

カイロ方面へ向かうハイウェイを離れ、モエリス湖へと続く道へ進みます。やがて両側に小高い砂山が連なる道となり、そのまま車を走らせていると、ふいに道路から一本の脇道が伸びているのが見えました。
「どうやらここから入るのだろうか」と思い、そのまま進んでみることにします。

しばらく走ると、突然、藁のような素材で作られたゲートや人工物が現れました。本当にこんな場所にキャンプ場があるのだろうかと、不安を抱えながら進んでいたこともあり、その入口を目にした瞬間、心の底からほっとしました。雰囲気はまるで忘れ去られた砂漠の古都のような情景です。
キャンプ場の名前は『Qatrani Camp』(地図)で予約は事前にWhatsAppで予約しておくのがおすすめです。

入口を入ると、若い男性が一人で留守番をしていました。事前に予約をしている旨を伝えたものの、どうやら情報共有がうまくいっていなかったようで、「何泊か」「何人なのか」といった質問を受け、オーナーらしき人物に電話で確認する場面もありました。正直なところ、「本当に大丈夫だろうか」と少し不安になります。
しかし最終的には問題なく手続きが完了し、料金を支払って無事に中へ通されました。料金はテント泊で2名、1泊1000エジプトポンド(約3000円)ほどでした。

キャンプ場の中は、周囲が砂漠の大地であるにもかかわらず、設備がしっかり整っています。バンガローや常設テント、管理棟、炊事場、トイレ、ファイヤーピットなど、必要なものはほぼ揃い踏み。
周辺にはキャンプ場以外に何もない環境だからこそ、この設備のありがたみが一層身に染みました。

肝心のテントは、景色の良い高台の端に設営することにしました。写真では崖のようにも見えますが、実際には下は段々状になっており、万が一足を踏み外しても危険はありません。息子が誤って落ちてしまっても問題ないと判断できる場所でした。

展望は申し分なく、砂漠と湖を一望できる、まさにスーパービューポイント。贅沢そのもののロケーションでのキャンプとなりました。
このときは夏のため日中は刺すような暑さですが、夜になると気温は20℃前後まで下がり、ひんやりと心地よくなります。この日は風もほとんどなかったため、思い切ってフライシートを外し、展望を最大限に楽しめるインナーのメッシュ生地だけでキャンプをすることにしました。
しかし、この後に肝心なことを一つ忘れていたことに気づきます。
翌朝、ちょっとした悲劇が待っているとは、このときはまだ知る由もありませんでした……。
キャンプ場に到着したのは夕方5時頃。そこから景色は、夕暮れから夜へと刻々と表情を変えていきます。広大な風景を見渡せる場所に、キャンプ場備え付けの椅子と机を並べ、息子は夏休みの宿題に取り組み、筆者は夕食の支度を始めました。
気がつけば周囲はすっかり暗くなり、キャンプ場内ではトイレと管理棟から漏れる、かすかな明かりだけです。不思議なことに、砂漠の夜はまったく怖さを感じませんでした。無風で、音ひとつしない静寂に包まれていたからか、まるで音のない砂浜に佇んでいるような、不思議な感覚になります。

満天の星空の下、息子とエジプトでのキャンプの思い出を語り合いながら、息子の大好物であるパスタを食べ、この日は静かに眠りにつくことにしました。
やらかした。砂漠キャンプ最大のミス

東の地平線から太陽が昇り、強烈な日差しを浴びながら、息子と二人で砂漠の朝を迎えました。起き上がってすぐ、ある異変に気づきます。テントの中も、そして自分たちの体も、砂だらけではありませんか。

そうなのです。メッシュ生地は目が細かいとはいえ、さすがに砂漠の砂は簡単に通り抜けてしまいます。無風だと思っていましたが、どうやら夜の間にそよ風程度の風は吹いていたようで、テントの中だけでなく、私たち自身も見事に砂まみれになっていました。
アウトドア経験があるとはいえ、砂漠の「砂」への配慮が足りなかったのは、完全に自分の反省点です。それでも、砂だらけになりながら親子二人で笑い合い、テントの外へ出て朝日を全身に浴びました。
世界のどこにいても、やはり太陽は偉大です。その光を受けると、不思議と全身に力がみなぎってくるのを感じました。

朝日を浴びた砂漠の景色があまりにも素晴らしく、息子と二人でしばらく歩いてみることにしました。このキャンプ場には明確な境界線がなく、どこまでも歩いていけそうな開放感があります。とはいえ、10分ほど歩いたところで、来た道をそのまま引き返しました。

日本では決して見ることのできない景色を前に、二人で言葉を交わしながら、その一瞬一瞬を噛みしめるように歩いた時間は、とても貴重なもの。テントに戻ると、残っていた食材のインスタントラーメンで簡単な朝食をとり、撤収の準備に入ります。
こうして片付けを終え、今日はカイロへ戻ることにしました。
そう、エジプトでのキャンプは、この日で最後です。
「エジプトでキャンプ」意外とアリです

エジプトでの壮大なキャンプ旅、いかがでしたでしょうか。
「エジプトでキャンプ!?」と、あまりにも常識外れだと感じた方も多いかもしれません。しかし、意外と“アリ”だと思いませんか?
よく聞かれることですが、世界中どんな国にも、必ずと言っていいほどキャンプ場は存在します。せっかく「キャンプ」という趣味をお持ちなのであれば、興味のある国を旅しながら、キャンプで過ごしてみるのもひとつの楽しみ方ではないでしょうか。最初は、ホテル半分・キャンプ半分といったスタイルでも十分に楽しめるはずです。
前編・後編にわたってエジプトでのキャンプ体験をお伝えしてきましたが、実は今回ご紹介できたのは、エジプトキャンプのほんの一部に過ぎません。またあらためてエジプトを訪れ、より一層パワーアップした自分たちで、エジプトキャンプに再挑戦したいと思います。





