ドームテントの“始祖”、見せてもらいました!

風に強くタフで、居住空間の広いドームテント。筆者は、2025年11月1〜3日にかけて、そんなドームテントが大集合するイベント「DCM(ドームキャンパーズマーケット)」に参加してきました。
会場は、時折強い風が吹く、宮城県随一の人気のフィールド、吹上高原キャンプ場。そこには、マニアたちのドームテントがずらりと並び、圧巻の光景が広がっていました。
今回紹介するのは、その中で存在感を放っていた、ドームテントの”始祖”と言われる、とあるテント。
ザ・ノース・フェイス「オーバルインテンション」

そのテントについて解説してくれたのは、このイベントを主催する、大のドームテントマニア、KUMAさん( @kuma560_kuma560)。多数のレアなドームテントを所持し、仲間たちの珍しいテントも数多く見てきたこともあり、深い造詣を持ちます。
オーバルインテンションとは?

「オーバルインテンション(Oval Intention)」は、ザ・ノース・フェイスが、1970年代に誕生させた、世界初の自立式ドームテントです。
現在のドームテントの基本となる、「クロスしたポールで自立する構造」を初めて実用化したモデルで、ドームテントというカテゴリ自体の“原点” と言われています。
その背景には、著名な建築家、バックミンスターフラー博士 が提唱した「ジオデシック構造」の思想があります。

ジオデシックとは、構造材を最小限にしながら、三角形を組み合わせて球体に近い強靭な構造を作る建築手法のこと。
軽くて強く、効率的な空間を生み出すこの技術が、テントの世界に応用された最初のモデルこそ、この「オーバルインテンション」でした。
KUMAさん:設営のしやすさ、風への強さ、空間の効率性──今では当たり前の価値観ですが、そのほとんどがこのモデルから始まったものだと言っても過言はないです。
テントに革命を起こした“クロスフレーム自立構造”

ポールをクロスさせて自立させる構造は、設営をラクにしただけでなく、そのまま耐風性と居住性もまとめて底上げしてしまう画期的な仕組みでした。
KUMAさん:今でこそ当たり前の構造ですが、当時としては本当に革命的だったでしょうね。ペグを打たなくてもテントが立つという発想がそれまでのテントになかったので。

テントを構成する6本ジュラルミン製のポールはアメリカの軍用テントのポールから、ロードバイクのホイールまで手がける、イーストン社のもの。
「メイドインUSAのイーストンポールはコストが高いので、最近のテントでは見かけなくなりましたが、強度としなやかさに定評があり、この時代のアメリカのテントにはよく使用されていました。
70年代とは思えない造形美と空間設計

オーバル形状の張りは計算されつくしていて、フレームの曲線がつくるフォルムは、実用ギアというより“建築作品”。ヴィンテージ市場で高い人気を保ち続ける理由もここにあります。
KUMAさん:僕が好きなのは、構造的な美しさなんです。使っても眺めても楽しい。機能とデザインが両立してるのが素晴らしいですよね。
なかにはこんなバリエーションも!

80年代には「オーバルインテンション」を改良した「ポールスリーブオーバルインテンション」というモデルも登場していました。
KUMAさん:「オーバルインテンション」との最大の違いは、その名の通り、追加されたポールスリーブにあり。これにより、ポールや交差部への負荷を減らすことに成功しています。
実は今買える!?現代版としてアップデートモデルが登場

実は最近、ザ・ノース・フェイス がこの「オーバルインテンション」の50周年を記念し、リニューアルモデルを発売。
オリジナルの象徴的な丸みのあるシルエットを忠実に残しつつ、現代スペックでしっかり進化しています。

素材には、「バイオポリエステルジオデシックリップストップ」という二酸化炭素を加工した環境配慮型循環素材を使用。裏面にコーティングが施されていて、日光の遮蔽率もしっかり高められています。

弱点だった換気性能も改善され、ベンチレーションの位置や構造が見直されたことで、夏場も快適に使える仕様に。ホワイトカラーのフライシートも特徴的ですね。
造形と思想はそのままに、使い勝手は現代テント。まさに“過去と現在をつなぐ特別な一張り”です。
フロアサイズは295×205cm、3名横になれるサイズ感です。気になる方は公式ページをチェックしてください。
あなたのドームテントのDNA、ここにあり!

今回の取材で見えてきたのは「オーバルインテンション」はドームテントという文化を作った原点そのものだということ。
今でこそ当たり前の機能や構造も当時としては、革命的で、現在でも通用しているのがすごいですよね!
張るだけで、ギア好きの会話がはじまりそうな一張り。「実はこれ、世界初のドームテントなんですよ」そんな一言が似合う、唯一無二の存在でした!




