撮影:筆者
スウェーデンの名ブランド、100年目の集い

1925年にスウェーデンで創業した「トランギア」。100年の節目を迎えた今も“変わらない道具”を作り続けているブランドです。
アルコールバーナーを中心に、風を防ぐ構造を備えた調理器具「ストームクッカー」や、日本で大人気となった「メスティン」など、シンプルで壊れにくいギアがその象徴です。

2025年10月、埼玉県ときがわ町「キャンプ民泊NONIWA」で開かれた100周年イベントには、多くのファンが集まり、トランギアの原点とこれからを語り合いました。
1番の目玉はトランギアCEOによるトークライブ

北欧・スウェーデンで生まれ、今年で創業100周年を迎えた同ブランド。そんな節目の年にイベントに登場したのが、現CEOのマグナス・ライデル氏です。

元は自動車エンジニアとしてキャリアを積んだ彼が、同社の社長に就任して8年。「いいものを静かに作り続ける……」という、哲学を語ってくれました。
以下は、トークライブで特に印象に残った部分を紹介します。
1950年代に生まれたストームクッカーの原点

1950年代、スウェーデンで「2週間のホリデー制度」が始まった頃、アウトドアショップからの要望で誕生したのが、名作「ストームクッカー」。
コンパクトで頑丈、そしてどんな天候でも安定して使える構造は、今もほとんど変わっていません。
「アルコールバーナーの静かな音が好きなんです。リラックスして料理ができる」とマグナス氏は語ります。
日本の“メスティンブーム”に驚いた理由

日本でのメスティンブームについて尋ねられると、「最初は何にそんなに使うの?と驚きました。 お米を炊くために使うなんて、スウェーデンでは想像もしませんでした」と一言。

現地ではもともと“小物入れ”のように使われていたメスティン。 日本のブームをきっかけに、スウェーデンの人々も料理に使うようになったといいます。
「日本のユーザーの要望やクレームが改良のきっかけになりました」と、 現在も金型や工程の見直しを続けています。
コピー品が増えても「良いものを作り続けるだけ」

メスティンやケトルの人気に伴い、世界中で類似品が増加。そのことについてマグナス氏は静かに語ります。
「似たものが出てくるのは大変だけれど、それは私たちが良い製品を作っている証。だからこそ、私たちは“本物”をつくり続けることに意味がある。」
環境への配慮と、“スウェーデン製”を守る理由

現在も生産拠点はスウェーデン・トロングスビーケン。
創業当初から環境保全への意識は高く、「プラスチックを減らし、箱も緩衝材も紙。すべてリサイクル可能な素材を使う」とマグナス氏。
小さな会社だからこそ、ひとつひとつの製品を自分たちの手でつくることを大切にしています。
「コアな製品はこれからも自分たちで作り続けたい。でも時代やニーズに合わせて、近隣の工場と協力していくことも考えています」(マグナス)
どことなく日本と通じるこの精神が、日本でトランギアが愛される理由の一つなのかもしれません。
100年経っても変わらない、“静かにいいものを”

「トランギアは小さな会社です。でも、環境とものづくりへの誇りはどこにも負けません。」(マグナス)
派手な拡大ではなく、“いいものをつくり続けること”を選んでいます。
休日にはフライフィッシングやハイキングを楽しむというマグナス氏。愛用ブランドはルンドハグスやフェールラーベンなど、同じく北欧の老舗たち。どのブランドにも共通するのは「自然に寄り添い、長く使えるものを作る」という信念です。
静かに燃える、北欧の炎をこれからも

トランギアの製品は、最新でも派手でもない。けれど、どんな時代も、どんな場所でも、静かに信頼され続けてきた。マグナス氏が最後に語った言葉が、その理由を物語っています。
「私たちはこれからも、静かに、良いものを作り続けていきます」。
ここからは当日のイベントの様子をお伝えしていきます。
トランギア製品のプロによるワークショップ

ヤンニ・オルソンさんのトークショー&フィーカ体験では、フィンランドの定番となっている文化FIKA(フィーカ)を丸ごと体験。フィーカとは、飲み物やお菓子と一緒にゆったりとした時間を過ごす北欧の文化です。

フィンランド人の心のオアシスと言っても過言ではないフィーカは、おやつを持ちよりみんなで焚き火を囲む。
これは幼稚園くらいの小さい頃から当たり前に行われることだそうで、ビジネスの世界でも毎日必ず必ずおこなうほど。
ただ焚き火を囲むだけでなく、現代の日本ではなかなか味わえない人との距離感とゆったりとした時間を過ごす大切さを味わえました。

真島辰也さんによるオリジナル革アイテム制作ワークショップでは、ストームクッカーのバンドを牛革で作成。

どこにも売っていない本革で作ったオリジナルバンドは、自分のストームクッカーがさらに愛おしくなります。

関根千種さんのストームクッカー料理ワークショップでは、ストームクッカーを使った料理体験。
ミートボールと冷凍フライドポテトを使ったフィンランドをイメージした料理を作ってくれました。


自分ではなかなか思いつかない食材の組み合わせは、こういったワークショップだからこその体験。お腹も心もとてもいい刺激になりました。

こちらはTrangia製品のタイムアタック・スタッキングチャレンジ。
初見でどれだけ早く収納できるかという楽しいコーナーも。大人が本気で遊ぶチャンスは、こういったイベントならでは。
歴代製品や100周年記念アイテムも

会場内には歴代モデルと、100周年を記念したカラー(Cloudberry /Northern Pine/Power Pink)のストームクッカーの展示も。
それぞれのカラーにはスウェーデンならではの想いが込められており、ぜひイワタニ・プリムス公式のトランギア特設ページで確認してみてください。
特設ページはこちら

100周年を記念した限定アイテムのなかには、スウェーデンをイメージするデザインが彫刻されたメスティンも。このアニバーサリーイヤーでしか手に入らない限定デザインなので、気になった方はぜひ早めにチェックを!
変わらない」を誇れる時代に
トランギア100年が残したもの

100周年のイベントは、ブランドの歴史をたどる場であると同時に、「長く使うことの豊かさ」を思い出させてくれました。ストームクッカーもメスティンも、派手ではない。でも、そこには確かな信頼が宿っています。
トランギアが100年で示したのは、新しさよりも“変わらないこと”の強さ。静かに続けてきたその姿勢こそ、これからの時代にこそ輝く価値なのだと強く感じました。



