ないモノを「集める」から「作る」へシフト

店舗運営を始めてしばらく経つと、テンプラガレージでしか買えなかったモノが徐々に大手のセレクトショップなどでも取り扱われるようになってきたといいます。
そうなるとうちみたいな小さなショップは本当に苦しくて(笑)。
そしたら雄麻が作る方にシフトし始めたんですよね。ミシンや生地を買い込んで。これもいま思うと本当に先見の明があるというか……いまでいうMYOGを2010年頃には始めてましたからね。
その頃はテンプラサイクルとテンプラガレージにお店を分けていたのですが、ぼくの方のサイクルでもオリジナルアイテムを作ったんです


それがピスト用ブレーキプレート。ブレーキを固定するためのパーツなんですが、当時は全然バリエーションがなく、純粋に欲しいモノがない!って思って作ったところ、これが意外と跳ねて
その後、テンプラガレージの閉店。テンプラサイクルの中に組み込まれ、一本化されたといいます。
雄麻が「ブランドを始めるから」と店をやめたんです。もう在庫は持ちたくないって(笑)。
その頃になるとぼくもモノづくりマインドが強くなってました。自転車の販売やカスタムに軸を置きつつも、簡単な小物から袋物などを中心にオリジナルアイテムを作って販売してました
そして大ヒットしたのが抱っこ紐の「ベイビーアーマー」とベビーカーの「ミルストローラー」でした。



2015年頃ですね。その頃、ぼくもまだ子どもはいなかったんですが、頭の中にあったのが“パパ”というキーワード。自転車屋としてママチャリならぬパパチャリを製作しました。
それと同時に考えていたのが、パパが使いたい抱っこ紐とベビーカーだったんです。そのことをバリスティクスの塚原さんに相談したら「いいね!」ってことで一緒に開発しました。
赤ちゃん用品なので、すごく気を遣って作りましたね。結果、構想から発売まで2年くらいかかったかな? 良かったのは、その間に自分にも子どもができて、自分自身でテストすることができたんです。
そうして満を持して発売したら大好評! 売れたこともそうなんですが、何よりも自分たちの生活やライフスタイルを背景にして生まれたアイテムに、たくさんの人が共感してくれたということが純粋に嬉しかったですね
その後、ナンガとの寝袋やクルマに貼り付けるマグネットなど多方面でヒット作を連発。今に至るキャンパー御用達の“自転車屋”となっていったことは、誰もが知るところです。
“自転車屋”の枠を超えて。テンプラサイクルが愛され続ける理由

キャンパーからも支持を得るアイテムを数多く生み出しながらも、決してキャンパー向けのアウトドア屋ではないと健太さんはいいます。
そりゃあそうでしょ、うちはあくまで自転車屋さんだもん(笑)。
ぼく自身が自転車業界に正攻法で入っていないので、最初の頃は苦労することもありましたけど、この仕事が好きですし、いまのぼくを作ってくれた場所でもあるのですごく大切にしています。かといって楽しいだけではやれてこなかっただろうなと思います。
目に見えない地味で面倒くさいタスクこそ、しっかりこなすべきだと思いますし、あとは挨拶ひとつから人との付き合いをちゃんと築くことが大事かな。
それを心掛けていたらありがたいことに、アウトドア好きの方が遊びに来てくれるお店になっていました(笑)
そんな“真っ当な積み重ね”こそが、テンプラサイクルが長く愛され続ける理由なのかもしれません。



