なぜ今、東京に?代表に聞くゼインアーツのこれから

── そもそもなぜ今、直営店を?
小杉:設立から7年経ち、ゼインアーツのアイテムも増えてきました。これまでキャンプ用品を中心に開発してきましたが、昨年からは登山向けのギアも始め、今年はアパレルも発売しています。
そんななかで、自分たちの製品をまとめて見れる場所が必要なのではと考えていました。
特に登山用品を発売してから、実際に手に取ってみたいという声や、アパレル製品を試着したいという声を多くもらっていました。
また、小物など、どうしても自社EC上では注目されずらいアイテムもあるので、その魅力を伝える場所として直営店をオープンさせました

ディスプレイされている小物。実際の使用シーンをイメージできる
── 1号店は愛知。2号店に神保町です
小杉:直営店を出す際に検討したのは、主要5都市。 東京、大阪、愛知、福岡、北海道、札幌ですね。
ゼインアーツの本社が長野県にあるので、そこから日帰りで通える範囲、そう考えると愛知と東京に絞られるかなと。
1号店の愛知は、アウトドアライフをサポートするという意味で、郊外ベッドタウンである長久手を選びました。
そこから数ヶ月後に、今回の東京2号店をオープンさせました。
自分たちにとって店舗運営は初めての挑戦。中型店舗を一つ構えるなら、小さな店舗を複数箇所で運営する。
そのほうがリスクを回避できるし、違った条件で色々な方の意見を取り入れることができるだろうなと

東京も、最初は立川や昭島など、アウトドアフィールドに近い場所で物件を探していましたが、なかなか条件に合ったところが見つからなくて。
それに東京の人は、都心に集まって仕事をして、色々なエリアに帰宅する。そう考えると、どこにゼインアーツの店舗を展開すべきか読めなかったんです。
だったら、郊外じゃなくて、むしろど真ん中がアリなのではないかと考え始めました。マーケティングという側面でも、愛知はベッドタウンにお店を構えられたので、逆に都心が良いのではないかと。
それで、アウトドアのイメージがあり、老舗が多く集まっているこの神保町というエリアに決めました。
私自身も、ギアを探すときはよく神保町に来ていたし、ゼインアーツというブランドもこの街にフィットすると思っています

近くには大手アウトドアショップや老舗ブランドが立ち並ぶ
── 直営店ならではの魅力は?
小杉:特徴としては、アパレル製品の試着や寝袋などを試せるという点ですね。
あとは私含め、製品に対する知識を持っているスタッフが常にいるので、気になることがあれば気軽にお答えできる環境です。
ECで完売しているアイテムも店舗在庫にある場合があります。
例えば、登山用のテント「ヤール」。EC分の在庫はもう完売してますけど、店舗にはあります(2025年4月時点)。店内にも張っているので、実際に使ってみて欲しいです

他にも、店舗だからこそ、アパレルや寝袋など、ネットではなかなか選びきれないアイテムを中心にディスプレイしています。
アパレルは全種類、試着できますし、寝袋にも入っていただけます。
特に今年発売したアパレルはワイドモデルで、ゆったりとしたシルエット。
普段、他のメーカーさんでLサイズ買っている方も、ゼインアーツの製品ではフィットしないかもしれない。そういう所も含めて、直接ご確認して欲しいです

── 設立から7年。これまでの道のりを振り返っていかがですか?
小杉:まぁ休まらない(笑)。落ち着く事は無いな。というのが正直な気持ちです。
もちろん良い意味で、落ち着くべきではないし、そうあるべきだとも思っています。
ゼインアーツというブランドを取り巻く環境がどんどん変化していく中で、自分自身も今のままで良いという感覚はありません。
できることはどんどんやって、ブランドを大きくできる余地があるなら、大きくしていきたい。
アウトドアブランドという事業をやることで、多くの人達の働く場所になったり、色んな人達が関わったり。
その結果として、喜んでもらえる人は多ければ多いほど、私は良いと思っています。そういう意味では拡大思考です。
拡大するって事は変化するって事。なので、 休まる事なんてありえないという前提ではあります

今は長野、愛知、東京の3拠点生活をしているという小杉代表
── ゼインアーツは急成長を遂げたブランドの一つです
小杉:コロナ禍のキャンプブームが追い風になって、知名度が上がったという印象は確かにあります。感覚としては10年間かけて積み重ねていくことを、2年間に凝縮して体験したような感覚です。
良いスタートダッシュが切れた一方で、本来ならゆっくり成長すべきところを、急激に大きくなりすぎたなと。
知名度はどんどん上がるけど、資金力が足りない。需要は伸びるけど、供給がどうしても追いつかない。
結果としては、「ゼインアーツは全然買えない」という状況になってしまった。それがとても心苦しかったし、私たちのプロダクトを心待ちにしてくださる方々に申し訳ない気持ちでした

新作のトードテーブル用ウッドトップボードも店頭に並ぶ
── ブランドとして一番のターニングポイントは?
小杉:今がまさにターニングポイントだと思っています。バブル的なキャンプ人気が落ち着き、自分たちには何が求められているのか? それをしっかり考えていかないと生き残ることはできない。
岐路に立たされている今、新たな挑戦として取り組んだのが昨年発売した「ヤール」という登山用テントです。
もともとゼインアーツは、構想段階から総合ブランドを目指していたので、キャンプだけではなく、登山を含むあらゆるアウトドアカテゴリーのアイテムを提案できる会社にしたいと思っていました。
去年まではゼインアーツ=キャンプブランドでしたが、今はアウトドアの総合メーカー、そういう感覚で、始めの一歩を踏み出しているところです

──全製品の値下げも行っています
小杉:アウトドア人口を増やしたい。それが私たちがミッションとして掲げている事です。
それを実現するための、一番分かりやすいアクションは「良い物を安く」だと思っています。この考えは創業当時から変わっていなくて、今でも愚直にやっています。
今年に入ってからの全製品の値下げも、直営店を出したのもこの想いに繋がっています。
今のゼインアーツのステージにおいて、ミッションを遂行するためには何が必要か、それを考えた結果です

──今後のアイテム展望は?
小杉:アパレル部門はどんどん拡充していきますし、登山用品もどんどんリリースしていきたいなと思っています。こういうものが作りたいというアイデアのストックは色々とあります。
「ゼインアーツはキャンプから山に行った」と思うかもしれませんが、全然そんなことはありません。自分たちは総合アウトドアメーカーとしてキャンプ用品も引き続き開発していきます。
アウトドアというジャンルにおいて、「これやってはダメ」というリミットは設けてはないので、ご要望があれば広く製品を作っていきたいです

自分たちはよりお客さんに近い位置にいたいと思っています。皆さんと会話しながら、皆さんのご要望をちゃんと聴いて、それに対してお答えしていきたい。
これまで以上に、いろんな方々とコミュニケーションを取りたいです。ぜひ店舗にお越しいただけれたら嬉しいです。
しばらくの間は私も店頭に立ってるので、「もっとこういうの作ってよ」と気軽に声をかけてください
神保町に名店がまた一つ

飛躍を続けるゼインアーツ。神保町に店舗ができたことで、その存在がグッと身近に感じます。
直営店には、なかなか実物を見る機会がない人気アイテムもずらりと並んでいるので、ぜひお仕事帰りに、週末のお出かけに寄ってみてはいかがでしょうか?



