“ノマド仕様”のDIYカスタマイズはVer.1〜4へと進化
車中泊するために最も重要なことは、フルフラットにすることです。
軽バンであれば、基本的にどんな車種でも、標準装備のシートアレンジでフルフラットにすることができます。
しかし、シートアレンジによるフルフラットだけでは、なんとも味気ないものです。また、荷物の置き場所にも困ります。
サンバーを買って車中泊を繰り返すうちに、DIYによるベッドキットもモデルチェンジを繰り返していくことになったのでした。
Ver.1 「天井収納のみ」
サンバー購入直後は、就寝時の必須アイテムであるサンシェードは専用品を購入し、荷物置き場は、突っ張り棒2本と網を結束バンドで繋げる簡易的な天井収納としました。

しかし、突っ張り棒2本では支える力に限界があり、悪路を走行するたびに見事に落下したものでした。

そこで、純正オプションの「マルチレール」をネットで購入(現在は流通在庫なし)、穴あけ加工をDIYで施して取り付けました。
Ver.2「フロアに“すのこ”を敷き詰める」
後席シートを畳んで床下に格納してフルフラットにし、純正のいかにも業務用のビニールカーペットに直接、敷き布団(ニトリの「じんわりフィットする低反発敷布団」)を敷いていました。
冬場は、エンジンが荷室後部下にあって、停車後もしばらくは暖かいのですが、朝方になると冷えた鉄の塊の上で寝ることになり、冷え込みます。
また、室内は鉄板がむき出しのところが多く(ほとんどの安価な商用車はそうです)、外気温と変わらない寒さになります。
逆に暖かくなると、エンジンの熱で室内が暑くなってしまいます。

そこで、フロアに“すのこ”を敷き詰めることにしました。
1×4材を床面にし、ホームセンターで購入、カットしてもらい、ネジ止めするだけの簡単DIYで制作しました。
これで、床面との空間ができたため、寒さ・暑さがダイレクトに敷き布団に伝わることがなくなり、快適性が向上しました。
また、布団を畳んだ状態でも、すのこがあることで通気性がよくなり、布団の状態も改善されました。
人は寝ているときにコップ1杯分の汗をかくと言われています。これにより、衛生環境も向上しました。
Ver.3「床下収納」+「折りたたみハイテーブル」
それまで、クルマの中で仕事をするときは、折りたたみローテーブルをフロアに置き、あぐらをかいて作業していました。
しかし、長時間の作業では腰に負担がかかりすぎて、脚を伸ばして仕事したいなと思うようになりました。

そこで、後席を撤去。
(注釈:後席を撤去した状態での公道走行は法律上問題ありません。しかし車検時には後席を設置するか、「構造変更」手続きをする必要があります。)

フロアは、断熱・遮音も兼ねてOSBボードで板張り化を実施しました。

無印良品の折りたたみ式ハイテーブル(商品名「パイン材テーブル・折りたたみ式」)を導入しました。

折りたたんだ状態のハイテーブルの天板をフロアの一部とし、ほかの部分は後席部分左側に、長い脚を付けた“すのこ”を2セット組み合わせました。
荷室部分の“すのこ”の高さが十分にあるため、そこに座れば椅子は不要です。
これで、快適に作業ができるようになりました。
しかし、車室内でテーブルを展開するには、すのこを荷室後部などにどかす必要があり、移動の際はテーブルを畳む必要があるため、けっこう面倒な仕様でした。

後席部分では高さ30cm強のクリアランスを確保(テーブル格納部は約17cm)、そこも収納となりました。

また、荷室部分の“すのこ”の脚を、2×4材をカットしたものに変更して高さを約12cmに上げて、”すのこ”の下の収納力アップを達成。

このベッドキットVer.3は、後部座席部分の脚を何度か交換するマイナーチェンジを実施。

最初は、Amazonで購入した中国製の長さ可変式の脚から、長さ固定式の脚、角材を加工した脚へと変更を重ね、最終的にはホームセンターで購入した建築資材用の長さ可変式鋼材の脚(鋼製束T型2536)に辿り着き、現在に至っています。
Ver.4 “最終形態” 取り外し可“すのこ”と備え付けテーブル
収納付きベッドキットのDIYは、試行錯誤を重ねながら一部改良を繰り返しました。

準備と片付けが面倒だった折りたたみハイテーブルを廃止し、1×8材を組み合わせて型枠を作り、その上にすのこを乗せる構造に変更しました。

この構造にしたことで、ベッドキット下部収納へのアクセスが車外からだけでなく、室内からもできるようになり、利便性が向上しました。

また、テーブルは型枠に2×4材をL字金具で固定する形式に変更。天板にはアカシア集成材に耐水ニスを手塗りして仕上げたものを採用しました。

テーブル下のすのこを取り外して掘りごたつ式にしたことで、椅子がなくてもデスクワークができるようになりました。

長時間の作業が多いので、姿勢矯正・骨盤サポートをするアンドメディカル「KURA SEAT」の座椅子を使っています。
アンドメディカル クラシート
| サイズ | 40.3 x 37.9 x 17.7 cm |
|---|---|
| 重量 | 1.12㎏ |
なお、テーブルの大きさは一度変更し、一回り大きくしています。

当初、後部座席部分のすのこの向きは車両の進行方向と並行でしたが、室内からすのこを開けるのが少し難しかったため、左右方向に並行になるよう90°回転させました。
この変更は実質的にフルモデルチェンジに近く、型枠は再制作し、荷室部分の“すのこ”も取り外し可能に変更して、丸ごと作り替えています。
しかし、ここまでくると作業にも慣れたため、制作時間は2時間ほどで実質的なフルモデルチェンジが完了しました。
ちなみに、この最終形態へのDIYは、この原稿を書く1カ月ほど前に実施したものです。
“ノマド仕様”へのカスタムにいくらかかった?

最終形態Ver.4だけのDIY費用であれば、材料費の約1万3000円でした。
内訳は……
後部座席部分のベッドキットとテーブル
・1×4材(12F)×4本・1×2材(6F)×1本=3,201円
・カット代+小物=2,013円
・アカシア集成材=3,058円
荷室部分のベッドキット
・1×4材(6F)×6本・1×2材(6F)×1本=3,388円
・カット代+ゴムクッション=1,339
合計、12,999円となっています。
これだけ見ると安いですが、Ver.1からの紆余曲折の時代にかかった総費用は、5万円以上。
ただ、ノマド仕様には直接関係ないですが、より自分好みのスタイルと、乗り味、快適性を求めたため、カスタム費用は合計250万円以上となりました(塗装・リフトアップ・電装系など)。
“ノマド仕様”の完成形とこれから
サンバーを買ってから約2年半でようやく、車中泊しながらワーケーションができる“ノマド仕様”の完成形に辿り着きました。
ノマド仕様で、かつキャンプも存分に楽しむためのカスタムは、振り返ってみると至極シンプル、ミニマルなものになりました。
車中泊・ワーケーションで活躍する装備

車中泊&ワーケーションを目的とした“ノマド仕様”へのカスタムのポイントは、
・フルフラットにできる収納兼ベッドキット
・備え付けのテーブル
の2点だけです。
そして必要なグッズ、ツールは、
・就寝時のサンシェード
・ポータブル電源
の2点だけ。
このうち、サンシェードは必須です。

夜間、室内で電気を点けていると、外から中が丸見えになってしまいます。
また、春から秋口くらいまでは、早いうちから日が昇るため、サンシェードがないと“太陽とともに強制的に目覚める”原始的な生活を強いられます。
ウレタンを挟み込んだサンシェードなら、保温、遮熱、遮音の効果があります。
冬場は窓ガラスからの冷気が相当に入り込みますが、サンシェードがあることで寒さを大きく防げます。
また春から秋にかけては、太陽光による熱が室内を急激に暖めるのを抑えてくれます。
快適な車中泊をするには、車種専用設計のウレタンを挟み込んだサンシェードがおすすめです。

ポータブル電源は、最悪なくてもなんとかなりますが、車中泊中はアイドリングストップが原則ですので、ワーケーションでPCを使うなら、電源がないと厳しいでしょう。
大容量のポータブル電源を備えれば、ポータブルエアコンや暖房器具が使え、ある程度の厳しい気候でも快適に過ごすことができます。
これらのほかに、必要なグッズやツールは最終的にありませんでした。
好みのアイテムでQOLアップを
個人的に、いつも淹れたてのコーヒーを飲みたいので、T-Falの湯沸かしポットを積んでいます。
SSYFEI 電気ケトル 1.0L
| サイズ | 16 x 16 x 20cm |
|---|
また、車中泊やキャンプ地で味わう地元の地酒は格別で、冷酒をこよなく愛しているため、小型の冷蔵庫、ALPICOOL「NL9」を積んでいます。
(注:酒類を飲んだ翌朝は、アルコールチェッカーで確認しています。これは酒飲みの必須アイテム。私はアイリスオーヤマ製を使用しています。)
アイリスオーヤマ アルコールチェッカー
| 商品サイズ (幅×奥行×高さ) | 37×20×102mm |
|---|---|
| 重量 | 50g |
このポータブル冷蔵庫の使用レポートも書いています。こちらからご覧ください。
これらのアイテムで、車中泊&ワーケーションのQOLがアップ。キャンプのときにも活躍してくれています。
“ノマド仕様”のこれから

約2年半かけて、不便を感じたところはその都度改良を繰り返し、いまのところ、次のカスタマイズの予定はありません。
もう14年前のクルマとなったサンバー。走行距離も2年半で約7万kmを走行し、走行距離計はもうすぐ15万kmに達するところです。
今後、またカスタマイズしたい部分が出てくる可能性はありますが、それよりも、今や自動車の歴史の1ページを飾る希少なクルマとなったスバル自社生産最後のサンバーを、大切に長く乗り続けるため、部品の予防交換をはじめとしたメンテナンスにお金をかけていこうと考えています。
特に、サンバーは下回りがサビやすく、フレームが腐食して廃車になるケースも少なくありません。

私のサンバーも、購入時点でサビがたくさんあり、プロに頼んでリフレッシュしてもらっています。
完成形に到達した“ノマド仕様”は、ワーケーションが目的でなくても、車中泊やキャンプにも最適な仕様となりました。

実は、この記事を執筆している現在、私が試行錯誤を重ねて作り上げた“ノマド仕様”を「商品化」するプロジェクトが始動しました。とある業者と協力し、具体化を進めています。
この先、もっとワクワクするような情報をお届けできるかもしれません。
今後も、“クルマのプロ”の目線から、最新のアウトドア関連情報をお伝えしていきますので、どうぞご期待ください!




