考えておきたい「飲み水の確保」の仕方
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傾斜が急で険しい山々、雨の多い気候、台風や地震や火山の影響など、地勢的な影響もあって、日本は比較的災害に見舞われやすいお国柄。複数の震災を経験し、まさかのときの備えをされているご家庭も多いことと思います。
食糧やライト、ラジオ、電池、衛生用品など、備蓄品目はいろいろありますが、生命と健康の維持には、なんといっても飲み水の確保が重要ではないでしょうか。
人は水さえあれば約1ヶ月程度生き延びられると言われています。水なしだと2〜3日で命を繋ぐのは難しくなるという事実……。そこまで行かずとも、水分摂取が不足すると、熱中症や脳梗塞、心筋梗塞、災害避難時のエコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)などを招く恐れも。
災害時だけでなくスポーツやアウトドアでも使える、ポータブル浄水器
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飲み水確保のため、簡単で効果的な方法はないものか? そこで目をつけたのが、アウトドアブランド発の携帯できる浄水器です。
災害時だけでなく、アウトドアで十分な飲み水を携帯できないときや、飲料水が不足したときの安全策としても有用です。
それでは、災害時やアウトドアアクティビティ時に必要な水を確保する、3種の携帯用浄水器について、使い勝手や最適シーンをレビューしていきましょう。
3種のポータブル浄水器をテストしてみる
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成人の身体の約55〜60%は水分です。活動レベルが比較的静かな場合、必要な水分量は1日2.3L、活動レベルが高いと、3.3〜3.5Lと推定されています。
備蓄水や配給された飲料水が足りなくなったとき、そして、アウトドアで飲料水が不足したときに。浄水器の備えがあれば、それだけで安心感が増しますね。
選んだのはこの3種、全て電源不要!
避難行動をとるときや、アウトドアアクティビティの最中なら、重たくて大きな浄水器を持ち運ぶのは無理。電源も取れないことがほとんどでしょう。手で持ち運べる携帯性のいいサイズ、電池も電源も不要なものが選定の基準となります。
今回は、ボトル型の「ジオプレス ピュリファイヤーボトル」、小型でストローとパウチの両方が使える「ソーヤー ミニ」、手動ポンプにホースが付いた「トレイルショット マイクロフィルター」の3種をピックアップ。いずれも高性能フィルターを搭載し、高い浄水能力を持つ浄水器です。
【検証方法】雨水を浄水してみた
試料の原水には、雨に見舞われたキャンプで、タープから落ちる雨水をバケツに溜めたものを使いました。
うーん、一応澄んでいるように見える水ですが、このまま飲むのは遠慮したいです……。この雨水がどこまでキレイになるでしょうか?
1. ジオプレス・ピュリファイヤーボトル(グレイル/モンベル)
トップバッターは、「ジオプレス ピュリファイヤー ボトル」軽量なポリプロピレン製のボトル型です。
インナープレス(左)と、アウターボトル(右)に分かれ、オレンジ色の部分が浄水カートリッジ。
浄水フィルターのろ材は、銀処理済ゼオライト、超粉末活性炭、電気吸着体の3層で、ウイルス・バクテリア・原虫の除去率はいずれも99.9%以上。直接口をつけて飲みやすいキャップが付いています。
カートリッジの交換目安は浄水回数およそ350回(約250L)。
いざ浄水開始!
まずは、アウターボトルに雨水を汲みます。
ろ過容量は上の線のレベル、約710mlですが、半分ほどの水量でやってみましょう。
浄水するときの圧を逃すため、インナープレスの飲み口キャップを少し緩めておきます。アウターボトルにインナープレスを静かに差し込んで……
インナープレスをゆっくり押し下げます。結構力が要りますね。
約8秒で浄水が終了。インナープレスの中に浄化された水が貯まりました。
透明なペットボトルに移してみましょう。
右側のミネラルウォーターと並べてみると、全く区別がつきません。曇りも不純物もない、透明度の高い水が抽出されているのがわかりますね。
元の雨水は、やや生臭く、青臭い匂いがしたのですが、浄水後の水は匂いもまったく残っていません。試しにほんの少し口に含んでみたところ、きめの細かい柔らかな味。ミネラルウォーターと遜色のない風味でした。これならお茶を淹れても大丈夫でしょう。
単独行の水筒代わりに適している
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ボトルそのものが水筒の役割を果たすので、川辺や湧水が望めるトレッキングに携行するのに適しています。容量が710mlあるので、1〜2人での使用も可能。
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上水道の設備のない、いわゆる野営ソロキャンプに。徒歩ソロの場合、何リットルもの水を携行するのは難しいですが、ジオプレス ピュリファイヤーひとつで、目の前を流れる川の水などを飲料水にできます。710mlあれば、ラーメンとコーヒー程度は作れますね。
グレイル ジオプレス ピュリファイヤー
サイズ | 26.5×8.6cm |
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重量 | 450g |
素材 | ボトル・インナープレス/ポリプロピレン、キャップ・カートリッジ/ABS樹脂 |
ろ過流量 | 710mL/ 8秒(5L/ 分) ●フィルター交換目安:350回(250L) |
有害物質除去率 | ウィルス99.99%、バクテリア99.9999%、原虫99.9% |
2. ソーヤー ミニ(ソーヤープロダクツ)
2番手は、超小型で軽量な「ソーヤー ミニ」。
中空糸膜フィルターを装備し、水を0.1ミクロンの孔でろ過する仕組み。バクテリアや微生物の除去率は99.9%以上。容量0.5Lのパウチとストロー、洗浄用の注射器が付属します。
使用ごとにきちんと洗浄すれば、約38万Lもの大量浄水能力を誇ります。
ストローとパウチ、どちらでも浄水可能
浄水しながらストローで直接飲むことができ、とても簡便。
フィルター本体には、浄水方向を間違えないよう、わかりやすい矢印が印字されています。
パウチに原水を汲んで、フィルターを取り付けてろ過することもできます。
雨水をパウチに入れてろ過してみた
シェラカップで雨水を汲み、パウチの中へ。
パウチにフィルターを取り付け、ゆっくり逆さにすると、浄水された水がタラタラと落ちてきました。
匂いはゼロ。お味の方は、ややミネラル分を感じる硬めな飲み口でした。
フィルター本体は長さ約14cmと小型で、ストローと共にパウチでくるくる丸めればとてもコンパクトになります。ストローとパウチのほか、ペットボトルの口にねじ込んでセットしたり、ハイドレーションシステムのホースにセットして飲むことも可能。使い勝手の広い、機動性に富んだモデルといえるでしょう。
軽量コンパクトだから、ひとり用の装備として
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吐水にやや時間がかかるため、個人使用に適しています。連泊も考えられるスケジュールの登山装備として。小さくまとめてバックパックのポケットに納められますし、背面のハイドレーションチューブにセットして、行動中の水分補給にも。
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ひとり暮らしの非常用持ち出し袋のアイテムとして。とりあえず自分ひとり分の飲み水確保用に◎。
ソーヤー ソーヤー ミニ
サイズ | ミニフィルター/全長13.5cm 、0.5Lパウチ/約22.5×12.5cm |
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重量 | ミニフィルター/約41g、0.5Lパウチ/約19g |
素材 | ホローファイバー |
フィルター孔サイズ | 0.1ミクロン |
ろ過能力 | 38万リットル |
使用適正温度 | 約5℃〜40℃ |
▼「ソーヤーミニ」について詳しくはこちら
3. トレイルショット・マイクロフィルター(エムエスアール)
最後にテストしたのは、「トレイルショット マイクロフィルター」。
ポンプ付きの浄水フィルターに取水用のホースが接続されています。ホース先端には大きめの不純物を除くプレフィルターが付属。ポンプ部分は柔らかい素材で、手で握って動かす仕組み。
画像右上の付属のバンドを使って……
このように小さくまとめることができます。今回3種のうち中くらいの収納サイズですね。
中空糸膜フィルターの浄水能力は1分間に約1L、フィルターカートリッジ寿命は約2,000Lとなっています。フィルターの孔の大きさは0.2ミクロン。細菌まではろ過しますが、ウイルスに対しての効力はなく、指定の殺菌剤の併用が勧められています。
バケツに取水ホースを入れて、ポンプアップ
プレフィルターを水中に沈め、ポンプをゆっくり握って水を揚げ、浄水されるのを待ちます。
内部のフィルターを通った浄水が溜まってきたら、再びポンプを静かに握って吐水。とても簡単です。
さて、お味はいかに? 匂いはなく、まろやかで優しい風味でした。透明度も高く、ミネラルウォーターと変わりません。
操作が簡単・吐水能力が高いので、ファミリーユースに◎
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水源にサッと浸してシュコシュコ握るだけと、極めて使いやすく、吐水量も多め。ボトルに注ぐのも簡単です。
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使用方法が簡単で、短時間でたくさんの浄水が必要なときに向いている機種です。家族分の災害備蓄用品として用意しておくのにいいでしょう。
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ファミリーキャンプでの調理に。お子さんと一緒に使っておけば、いざというときの予行演習にもなりますね。
MSR(エムエスアール) エムエスアール トレイルショット マイクロフィルター
サイズ | 14×6.3cm |
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重量 | 145.8g |
素材 | 中空糸膜 |
ろ過能力 | 原生動物・バクテリア・微粒子◯、ウィルス・化学薬品× |
フィルター孔サイズ | 0.2ミクロン |
フィルター寿命 | 2,000L |
浄水器の使用にあたって覚えておきたいこと
・できるだけキレイで安全な水源を選ぶ
・堆積物の混じった原水は、布やコーヒーフィルターなどで濾してから浄水器に通す
・海水・油分を含む水には使えない
・鉱山の近くや、化学物質、農薬の影響の恐れのある水源の水は使用しない
・50℃を超えるような高温の水は通水しない
・適切な時期にフィルターを交換する
・各機器に付属の取扱説明書をよく読み、使用方法を守る
もしものときに、人数や状況に適した浄水器を備えておこう
キャンプ中、3機種を試してできた浄水を集めて、パスタを茹でるのに使いました。いずれも高い浄水能力のあるモデルですが、念のため煮沸してから飲用することも念頭においてください。
ご家庭の様子やアクティビティの種類によって、最適な浄水器を選んで備えておけば、清浄な水が不足したときの安全策となります。時々キャンプやトレッキングに持ち出して、迷わず使えるようになっておくといいでしょう。