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荒井裕介著『サバイバル猟師飯』から教わるイワナのレシピ

【連載Part.3】荒井裕介著『サバイバル猟師飯』から教わるイワナのレシピ

CAMP HACK×荒井裕介氏のサバイバル連載第3回! 山岳写真家の荒井裕介著『サバイバル猟師飯』に掲載されているレシピを、5回に分けて紹介します。今回は「イワナ」のレシピ。レシピを通じて、自然の恵みに触れていきましょう。※『サバイバル猟師飯』に掲載される内容を一部抜粋してご紹介します。

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目次

文/荒井裕介

イワナのレシピ紹介! イワナ刺身

狩猟ができない春から夏の間、猟師にとってイワナは貴重な山のタンパク源となる。
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材料/1人分
イワナ ……1 尾
醤油 ……適量
わさび ……お好みで

作り方

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❶ イワナを捌き、血合いをよく洗い流す。

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❷ 背中、首、尾ビレの付け根に切れ目を入れ、皮を剥ぐ。

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❸ 背骨に沿って刃を入れ、滑らせるように三枚におろす。

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❹ 腹骨と胸ビレをていねいに取り除く。

イワナ刺身 作り方5 img_6420

❺ 一口大に切り分け、盛り付ければ完成。

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たくさん釣れたら焼き干しも作りたい

骨や内臓まで捨てるところはほとんどない

イワナは傷むのが早いので、刺身としてはほとんど流通していない。しかし、釣りたての刺身こそ、渓流釣りの醍醐味である。生かしておいたイワナを食べる直前に締めて捌く。新鮮だからできる調理法だ。味はねっとりしていて甘く柔らかい。これをワサビ醤油につけ、白米の上に載せて食べる。こんな贅沢な食べものがあるのかと思うほどうまい。

良型のイワナの刺身は、醤油につけると脂が浮くことがある。イワナの甘さは、いい水と脂によってもたらされる。雪解け水が湧き出した深山の源流で釣り上げた一尾は、そこまでの道のりと環境が相まって、さらにおいしさを引き立てる。

腹抜きはどんな魚も同じ行程だが、イワナの皮を剥ぐにはコツがある。首周りと背中、尾ビレの皮目に切り込みを入れ、エラ付近から尾ビレに向って皮を引き剥がす。そうすれば、きれいに剥がすことができる。手が滑る場合は、エラ付近の皮を歯でくわえ、両手でしっかりと尾を持てば簡単に剥がせる。ワイルドな方法だが確実に皮が剥ける。この作業は三枚におろす前に行った方がいい。渓流魚は身が柔らかいため崩れやすいのだ。

皮が剥けたら、三枚におろして刺身にするだけだが、ここで残った骨と頭に軽く塩を振っておく。塩を振った骨は、焚き火の上の直接炎が当たらない高さに吊るしておくと、数時間後にはカリカリの焼き干し骨せんべいが完成する。仕上げに軽く醤油を塗り、醤油が乾くまで少し吊るしておけばさらに香ばしく仕上がる。酒の肴にしてもよし、行動食にしてもよしの焼き干しが完成だ。僕はあまりやらないが、焼き干しはそのまま食べるだけでなく、骨酒にすることもできる。

さて、刺身の話に戻ろう。刺身と言うとワサビ醤油のイメージが強いとは思う。イワナの刺身丼にするなら醤油がいいが、刺身として食べるなら塩もおすすめだ。塩で食べると、さらにイワナの甘さが引き立つ。僕は両方用意して、気分で使い分けている。塩とオリーブオイルで食べるのもおいしい。ミズと和えて、サラダ感覚で食べることもできる。イワナの刺身はアレンジが楽しい食材でもある。

ここでは紹介していないが、剥いた皮は脂で揚げ焼きにするとサクサクと美味しい。捨てる部分はほとんどない。内臓は172 頁で紹介している肝焼きに変わる。ここまで食らい尽くせば、イワナも成仏してくれるはずだ。

イワナのレシピ紹介! イワナ塩焼き

塩を打って、焚き火の遠火でじっくりくだけ。シンプルだからこそ、ていねいな仕込みがおいしさのポイント。

イワナ塩焼きを作る男性 img_6805

材料/1人分
イワナ ……一尾
塩 ……適量

作り方

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❶ イワナの内臓を抜く。

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❷ 全体に塩を振る。ヒレにもしっかり塩を打っておくと、焼け落ちず綺麗に仕上がる。

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❸ 口から串を刺しエラから出し、腹、尾の順番で通していく。

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❹ しっかり通っているか確認する。

イワナ塩焼き 作り方5 img_6765

❺ 遠火で水分を飛ばしながらじっくりと焼き上げる。

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内臓は肝焼きにすると酒のツマミにぴったり
内臓も活用しよう。エラ以外の部位をきれいに洗い、多めの油でカリカリにあげ焼きにするといい。

キツい下見作業もご褒美があれば耐えられる

川魚は貴重なタンパク源であり、調理法次第で行動食にもなり得る。しかし、実際の狩猟期間中となると河川での採取はできない。なぜなら秋口には禁漁期に入ってしまうからだ。

では、なぜこれが猟師飯なのか? 狩猟には、猟期期間中に行う本猟と下見とがある。山が色づきだしキノコの季節を迎える頃が下見の時期。僕の場合、下見はもう少し早めに始める。なぜなら、越冬した個体は夏のうちに餌場を求めて移動するのだが、その年の雨量や木の実の出来によって場所が毎年異なるからだ。

また、夏の間に植樹や伐採のために山仕事が行われるエリアがあるので、人によるプレッシャーの掛かり具合も毎年変化が起こる。そのため、沢を詰め、主要な尾根や谷の獣道を見て歩く。集中豪雨や台風の影響で沢自体が被害を受け、水場が変わってしまうことも多い。動物達にとっては大きな問題だ。水場に向かう足跡を見つけられれば、猟期に向けてその獲物のテリトリーをだいたい把握しておくことができるのである。

前置きが長くなってしまった。つまり、川魚はこのような下見の時期に手に入れやすい食料であり、保存すれば猟期にも使用することができる食材なのだ。足の早い渓流魚は、手に入れたらできるだけ早く調理しなくてはならない。塩焼きや焼き枯らしは先人達の知恵である。塩焼きを見るたびに、子どもの頃に連れていってもらった旅行のことを思い出す。山間部の集落で売られているイワナの塩焼きが大好きで、僕はいつも並んで買ってもらったものだ。今では、イワナはもっぱら山中でしか食べないが、遺伝だろうか、魚の好きな娘に山のお土産として焼き枯らしを持ち帰ると喜んでくれる。

都会では珍しいイワナだが、深山ではそれしか選択肢がないことも多い。塩焼きにするのならば、大物よりも泣き尺(30㎝弱)くらいのサイズがちょうどいい。時期にもよるが、身も柔らかく適度に脂がのっている。遠火でじっくりと水分を抜けば、凝縮された旨味と塩の利いた皮目の香ばしさを味わえる。都会の空の下で時々思い出すと、山に行きたくなる味だ。

近年は、山の中でも養殖の川魚がたくさん放流されている。しかし、深山に分け入って天然のイワナを釣り上げ、舌鼓を打つ行為は別格。これはキツい下見のご褒美の味と言っていいだろう。

獲物の生態も掲載。荒井裕介著『サバイバル猟師飯』はこちら! 

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